ビジネスマンの視点からスマートウォッチの価値を考えるスマホは“スマート”ではない!?

「Apple Watch」の登場によって、いっそう過熱するウェアラブルデバイス/スマートウォッチ市場。さまざまな情報が腕時計に集約されるのは魅力的である一方、あえて受け取る情報を最小限にとどめて、これまで浪費していた時間をビジネスに有効活用するべきだという考えもある。

» 2014年09月19日 12時10分 公開
[伏見学,ITmedia]

 米Googleのメガネ型デバイス「Google Glass」や米Nikeのリストバンド型デバイス「FuelBand」などが火付け役となり、急速な盛り上がりを見せるウェアラブルデバイス市場。

ウェアラブル端末の市場規模(出典:MM総研) ウェアラブル端末の市場規模(出典:MM総研)

 調査会社のMM総研によると、日本におけるウェアラブルデバイスの市場規模(販売台数)は、2013年度に40万台だったのが、2015年度には236万台、2020年度には604万台に上るという。米国では2015年度に906万台、2020年度には1517万台に達するという予測だ。

 そうした中、先ごろの米Appleによる「Apple Watch」の発表は、腕時計型ウェアラブルデバイス、いわゆる“スマートウォッチ”の本格的な普及の始まりを予感させる出来事だと言えるだろう。

 Apple Watchについての細かな機能説明や特徴については本稿で割愛するが、ジャーナリスト・松岡功氏による本誌連載「Weekly Memo」の最新記事「Apple WatchがiPhoneを呑み込む日」にもあるように、コミュニケーションをはじめとする業務利用での広がりが大いに期待できるかもしれない。

スマートウォッチがもたらす効能とは?

 「ビジネスマンは情報の洪水から抜け出し、“デジタルデトックス”すべきだ」――。こうした見解を示すのは、ウェアラブル製品を開発するベンチャー、VELDT(ヴェルト)の野々上仁CEOである。スマートウォッチはこのような“処方せん”になるというのが野々上氏の考えだ。

VELDTの野々上仁CEO VELDTの野々上仁CEO

 VELDTは2012年8月に設立。それ以前、野々上氏はサン・マイクロシステムズ、日本オラクルで役員を務めていたため、ITmedia エンタープライズの読者にはなじみ深い方もいらっしゃるだろう。

 同社が2014年末に発売を予定するスマートウォッチ「VELDT SERENDIPITY」は、あえて機能を制限し、極力シンプルなものにしている。iPhoneやiPadとBluetooth通信で連携するこのスマートウォッチでは、基本的にメール、SNS、着信履歴などの通知のほか、活動量測定機能、スケジュール、天気予報などのLED連動表示機能、タクシー配車サービス(日本交通と提携、東京地区のみ)に絞っている。もちろん、iOSの通知センターに登録しておけば、そのほかのアプリに関する情報を受け取ることも可能だ。だが、それはあくまでもユーザー自身のカスタマイズ部分であり、野々上氏としては出来るだけスマートウォッチで受け取る情報量を減らすことが好ましいと考える。

 その背景にあるのは、現状に対する、ある種の危機感である。

 「いまやスマートフォンにあらゆる情報が集約されているため、商談中や会議中などに度々端末を操作するビジネスマンは少なくない。しかし、そうした振る舞いは失礼な印象を与える。言うならば、スマートフォンを利用する行為そのものが“スマート”ではないのだ」(野々上氏)

 また、電車などではスマートフォンをのぞき込むビジネスマンで溢れているが、仕事をしているのではなく、大半は暇つぶしでいじっている場合が多い。「四六時中スマートフォンをチェックしないと気が済まない、一種の中毒状態になっている。そのためにビジネスの生産性を大きく下げてしまっていると感じている」と野々上氏は警鐘を鳴らす。

 「あえて情報を制限する、そうした時期に差し掛かっているのではないか」(野々上氏)

 ただし、スマートフォンの利用を否定する、あるいは、スマートウォッチがスマートフォンに完全に取って代わるというわけではなく、今後もスマートフォンは残っていくものだとする。要するに、情報のレベルを設定し、ある段階以上はスマートフォンを活用するといった具合だ。一方、最低限の情報は“スマート”にウォッチが知らせてくれる。それだけでもビジネスマンの仕事の生産性や効率は大いに高まるはずだという。

 そうして浮いた時間をよりクリエイティブな仕事に費やす、またはオフタイムに当てる。このようなワークライフバランスを実現するのがスマートウォッチの役割ではないだろうか。野々上氏はそう考えている。

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