プロジェクトの中では、ステークホルダーやメンバーとのさまざまな調整ごとなど、話し合って状況整理や説得をする場面はとても多いです。ここで使う代表的なスキルは「ネゴシエーション(交渉)」。本連載では、Win-Winを目指した交渉の手順を具体的にみてきました。
プロマネが決めたことをメンバーが守らないのは、納得していないから。「納得感」を生み出すために、2つのスキルを活用していくことをお伝えしました。「ファシリテーション(促進、引き出し)」「プレゼンテーション(説得)」です。それぞれ状況に応じて使い分けられるようになりましょう。
プロマネ自身の「キャリア・デザイン」を行い、自分の軸を作ることがパフォーマンスの向上につながります。自身の価値観や進むべき方向性を定めると、自信が生まれ、メンバーも「ついていきたい」と思うもの。価値観以外にも、自分の人生について振り返りを行うことで、「こんなはずじゃなかった」と後悔することもなくなるでしょう。
いかがでしょうか。振り返ってみて、あらためて「そんなことを全てできるスーパーマン、いるわけない」という思いを強めた人もいるかもしれません。誤解を恐れずに言えばその通り。これらのスキルが高いレベルで満遍なく使えるのが望ましいですが、プロマネになりたてという状況では、正直難しいことばかりです(経験があってもできてない人も大勢います)。
だからこそ、1人で頑張るのではなく、チームメンバーの力を借りることが必要になります。チーム全体で、P機能とM機能の両方を、高い位置で発揮できれば強いチームができ上がるのです。プロマネがスーパーマンである必要はないのです。
そして、今後プロマネとして成長するにあたって、何かを経験するたびに「できたこと」「足りていないこと」「これからどうするか」を1つずつ振り返り(リフレクション)、次に生かすことが非常に大切になってきます。
その際には、各メンバーの動きやすさや充実感などにも目を向けてみましょう。プロマネを含む、チームメンバ全員がお互いに安心してタスクに集中できるとき、人の集まりに力が生まれ、チームとしてよりよい成果を発揮できるようになるからです。チーム全体で動いて生まれた達成感や充実感、反省や人と活動する喜びなどを、皆できちんと共有する機会を持つこともモチベーションの向上につながるでしょう。
あなたが考える“理想のプロマネ”とは、どのようなものでしょうか。もちろん、それは人によっても、プロジェクトによっても異なり「正解」はありません。しかし、プロマネが1人でできるなどたかが知れている以上、メンバーがイキイキと働き、成果につなげられるプロマネは理想の姿の1つだと言えます。ぜひ、この連載で紹介した「7つ道具」を効果的に活用してみてください。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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