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写真を楽しみ、腕を磨けるカメラ――ニコン「D5000」開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(1/2 ページ)

» 2009年07月01日 11時00分 公開
[永山昌克,ITmedia]
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 「本物のよさを軽快に楽しもう、というのがD5000のコンセプトです。中級機 D90と同じセンサーやAE、AF機構を採用し、初級から中級ユーザーの方に高画素&高性能をいかに楽しく、かつ簡単に使ってもらえるかを考えながら、企画・開発を進めました」と語るのは、商品企画とプロダクトマネージャーを担当した田澤昌氏だ。

photo 前列左から、ニコン 映像カンパニー 開発本部 第一開発部 第四開発課の富田博之氏、同社マーケティング本部 第一マーケティング部 第一マーケティング課 主幹の田澤昌氏。後列左から、同社開発本部 第一設計部 第一設計課の大貫正夫氏、同社開発本部 第一開発部 第二開発課の鮫島冴映子氏、同社開発本部 第一設計部 第三設計課 副主幹の渡部剛氏、同社開発本部 第一設計部 第一設計課の藤田昌之氏

 D5000のスペックは、確かにエントリー機にしては少々ぜいたくに感じる。撮像素子は有効1230万画素 CMOSで、感度は最大でISO6400に、連写は秒間4コマに、AF測距点は11点に対応する。液晶はバリアングル式を採用し、液晶を見ながらライブビュー撮影や動画撮影ができる。新機能としてはターゲット追尾や自動ゆがみ補正、静音撮影モードを備え、カメラ内編集機能やシーンモードはいっそう充実。さらに3-DトラッキングAFや顔認識AF、インターバル撮影、ボタンのカスタマイズなどもできる。

photo 「AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6G VR」を組み合わせた、ニコン「D5000」レンズキット
photophoto 撮像素子は有効1230万画素のCMOSセンサー(写真=左)、処理エンジンには「EXPEED」を搭載する(写真=右)

 中級者以上にはうれしい多機能だが、詰め込みすぎて初級者にはかえって取っ付きにくくなることはないのか、という印象も受ける。田澤氏は「エントリー機といっても、いちばん下のクラスではなく、D40の後継でもありません。これから写真をいろいろと勉強し、一歩上を目指したい人に特に使っていただきたい。そんな人には、さまざまな機能が発見や上達につながるのではないでしょうか」と答える。

photo シーンモードの選択メニュー

 エントリー層に向けた機能のポイントとしては、シーンモードが19種類と豊富なことが挙げられる。従来からある「風景」や「ポートレート」などの被写体ごとのシーンに加え、D5000では「ハイキー」や「ローキー」「シルエット」などを追加。これらを選ぶだけで、写真の“作風”を切り替えられる狙いがある。

 画像処理やシーンモードの開発を担当した鮫島冴映子氏は、「露出やピクチャーコントロールを調整することで、シーンモードと同等の効果で撮ることはできますが、初級者がそれをいじって最適化するのは難しいと思います。まずはシーンモードを使って、こういう写真の撮り方があることを知ってもらいたい。そしてステップアップにつなげて欲しいと思います」と語る。

バリアングル液晶による新しい撮り方の提案

 バリアングル液晶の採用は、同社一眼レフでは初の試みとなる。ファインダーをのぞいて撮ることを基本とした上で、さらにアングルの自由度を広げるための撮り方の提案だ。

photo 上下に最大180度、左右に最大270度回転するバリアングル液晶

 「今まではなかなか撮れなかったアングルでも楽に構えられ、こういう視点で撮ると、こういう写真が撮れるんだ、といったことに目覚めてもらいたい、という思いがあります」(田澤氏)。

 メカ全般の統括を担当した渡部剛氏は「従来機 D90でもライブビューを採用しましたが、固定式の液晶ではローアングルやハイアングルに構えた際に液晶が見えにくく、カメラの持ち方も不自然になりがちです。バリアングル式にすることで、さまざまなアングルから撮る際にも液晶が見やすくなります。本来のファインダー撮影に加えて、ライブビューという新たな撮り方をする場合には、バリアングルは有効だと思っています」と語る。

photophoto

 他社のような横に開く方式ではなく、下に開く方式を採用したのは「レンズの光軸と液晶の中心軸をできるだけそろえたほうが撮りやすく、フレーミングがしやすい」という理由が大きい。また、ボディの左端にボタンを配置した、同社製品の操作系を踏襲するためや、ボディの左側にあるインタフェースのケーブルに干渉しないようにする、という理由もある。「バリアングル液晶に強度的な不安を感じる方もいますが、バリアングル部分の強度は他の部分と同等の品質基準を確保しています」(渡部氏)。

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