コラム
» 2009年08月03日 08時00分 UPDATE

小寺信良の現象試考:「ネット」を政治の争点にしよう (1/2)

間もなく総選挙が実施される。何を重視して投票するかはそれぞれだが、情報通信政策という視点だってあっていい。若い人ほど関係の深い「ネット」についての意向を、国政へ伝えるまたとないチャンスだ。

[小寺信良,ITmedia]

 7月21日に衆議院が解散となり、真夏の総選挙が決定した。今回は民主党による政権交代の可能性を巡って、壮絶な選挙戦が予想される。筆者の経験で過去一番壮絶だったのが、1993年に連立政権で細川内閣が発足したときの選挙である。それ以前も自民党に逆風がふいた選挙は数々あるが、この時ばかりはいよいよ、という雰囲気があった。

 今回の選挙は、7月13日の都議選で民主党が初の第1党となったこともあり、久しぶりに政権交代の機運が高まっている。いったい誰に投票すればいいのか。もちろん、各個人が重視しているポイントは、税金の無駄遣い、景気回復、医療、福祉など、それぞれあるだろう。その中で、情報通信政策という視点も、あっていいはずだ。

 先日ICPF(情報通信政策フォーラム)NPO マニフェスト評価機構が共催した「自民党と民主党に情報通信政策を聞く」というセミナーで、自由民主党は世耕弘成参議院議員、民主党は内藤正光参議院議員に、各党の情報通信政策の方向性を伺う機会があった。今回はここでのお話を絡めながら、ネットと政治について考えてみたい。

 先日、自民党のマニフェストのドラフトが発表された。さらに資料としては「経済財政改革の基本方針2009について」(→リンク先PDF)と、今年6月にIT戦略本部が発表した「i-Japan 戦略2015」がある。民主党はすでにマニフェストのドラフトは発表したが、これには情報通信政策に関しては記載されていない。その代わり「民主党政策INDEX」が発表されているので、こちらが参考になるだろう。

IT推進に異論はないが……

 近年、政策がらみでネットの問題は実に多い。例えばテレビ放送の二次利用、医薬品のネット販売、児童ポルノ単純所持規制、出会い系サイト規制法による一般SNS取り締まりなど、ネットの利活用と言いつつも、実際には規制することしか決まっていないのが実情である。

 世耕議員も内藤議員も、情報通信政策に関しては推進派で、自民、民主のスタンスにはそれほど大きな違いはないだろうとする。例としてテレビ番組の二次利用に関しては、いわゆる過去に「ネット法」と呼ばれた類の方法論、すなわち何らかの第三者機関を設けて利用を推進していくことは、すでに超党派で取り組んでいくということになっているので、おそらくこの方向で進むだろう。

 その上で世耕議員(自民)は、最近の情報通信政策は、安全安心を理由に後ろ向きになってきていると懸念する。例えばネットの医薬品販売にしても、現状どおり維持するべきという考えだ。また医療制度改革として、レセプト(診療報酬明細書)請求のオンライン化が先送りされた点も指摘した。この点に関しては、今後も戦っていくという。

 医療分野のIT化は、両党とも積極的に推進する構えだ。自民党は、支持基盤である農村地域へのIT遠隔医療を以前から訴えているし、民主党は電子カルテと検査システムの連携で、病院の受け入れ患者数の増加を検証データとして上げている。

 内藤議員(民主)は、自民党政権におけるIT戦略本部のあり方に問題があるとする。IT担当大臣が他の大臣を兼務するのではなく、先端的に担う大臣が必要として、行政改革と一緒に推進すべきとした。

 さらに行政改革としては、誰もが情報発信できる時代においては、放送と通信は権力からの独立性が大事だとする。国を監視するメディアそのものを、国が管轄しているのは矛盾であるとし、総務省から放送通信行政を切り離して、第三者機関を作るとしている。すなわち「日本版FCC」(FCC:連邦通信委員会)を作るというプランが、民主党政策INDEXに記載されている。

 これに対し世耕議員は、米国のFCCは行政府の意向が強く反映されており、理想だとは思っていないと反論する。それよりも情報通信と産業を担う、情報産業省を作るべきとしている。現時点では、総務省と経産省で通信行政が割れており、これが政策を進める上でのネックになっているということのようだ。

 過去にダウンロード違法化や医薬品ネット販売など、規制に反対するパブリックコメントが大半を占めたにもかかわらず規制が強行された点について、IT時代へ向けてなにか新しい民意を組み上げる仕組みが必要ではないかと、質問してみた。これに対して世耕議員は、寄せられたパブリックコメントなどはオープンに公表し、透明な中でやっていくことに尽きると述べた。

 ご存じの方もあるかもしれないが、現在情報公開請求は、ITベースで行なうことができるようになっている。しかし公開される情報は、請求者本人に「紙」で渡される。そもそもこういうところから改善していかなければ、情報のオープン化は難しい。

 一方で内藤議員は、審議会のあり方そのものに問題があるとする。役人が下案を作って、1人はうるさい委員を入れて残りは役人に従う委員を選ぶというあり方を、根本的に作り直していかなければならないと述べた。

 ただ、あまりいっぺんになんでもぶち壊してしまうと政府が機能しなくなってしまうので、もっと具体性のある実現可能な計画が欲しいところだ。

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