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スマートデバイス中心のデジタル市場再編、テレビやPCの出番は?本田雅一のIFA GPCリポート(2/2 ページ)

» 2014年04月30日 19時35分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 GfKの根拠は、薄型テレビは初期のブームで購入していた世代が買い替え期に入り始め、PCはNetbookが一世を風靡してモバイルPCの出荷が増えた2008年から2009年あたりに購入したユーザーが買い替え時期に入ると考えられること(ただしWindows XPからのアップグレード需要でPC需要の先食いがあったため、本当に買い替え需要期に入るかどうかは疑問もある)。この見立てが正しいかどうかは別にしても、データそのものには解釈のしようもある。例えば、今回のGPCにおいて、GfKのアナリストは「インターネットアクセス機能を持つ家庭向け製品の売上げ構成比」という視点でデータを示した。

スマホの存在感は別格だ

 スマートテレビは伸びているものの、インターネット端末全体の中での影響力は小さい。PCはかつてインターネット端末の王者だったが、縮小が続く。やはりこうしてみるとスマートフォンは別格で、伸び盛りという意味でタブレットがPCを超える存在感を持つようになってきたことが分かるだろう。

 すでに常識となっているとは思うが、改めてWebを用いたアプリケーション、サービスの設計や、クラウドと接続するアプライアンス、ウェアラブル機器におけるスマートフォン、タブレットの重要度の高さが再確認された形だ。

 個々の機器でいえば、コンパクトデジタルカメラ、ポータブル音楽プレイヤー、ポータブルカーナビの落ち込みは凄まじい勢いとなっている。前者2つの分野は”高級化・高品位化”でスマートフォンとは異なる市場を生み出そうとメーカーが奮闘しているが、ポータブルカーナビの分野は回復の目処が立たないのではないだろうか。

コンパクトデジタルカメラ、ポータブル音楽プレイヤー、ポータブルカーナビの落ち込み

 ”スマートデバイス中心のデジタル市場再編”は、他にもある。

 例えばGo Proがトップシェアを誇るアクションカムの分野は、スマートフォンではカバーできない領域として(母数が少ないとはいえ)激増しており、カムコーダー市場を追い抜く勢いだ。また、前述したようにPCと液晶テレビも、スマートフォンの影響は受けているものの、市場全体で見れば売上げ構成比は大きく変化していない。

 また面白いことに”クラウド時代に伸びてきた機器”であった電子ブックリーダーは、タブレット端末の進化によって専用ハードウェア市場が急速に縮んでいるというデータも出ている。もともと電子書籍は電子流通革命であって、端末サイドの変化ではないため当然の帰結とはいえ、タブレット端末の小型・軽量化や高精細表示、バッテリー性能などの改善が進んだことで、専用端末の市場性が急速に失われたのだろう。

アクションカムはスマホ普及の影響は受けていない(左)。電子書籍リーダーは失速気味(右)

 もっとも「デジタル製品市場におけるテレビの金額構成比が変化していない」ことに関しては異論もあると思う。このあたりは、欧州の小規模なテレビメーカーの話が参考になる。簡単にいえば、デジタル化したテレビが先端製品ではなくなった結果、ODM調達中心の地元ブランドのに大きなビジネスチャンスを与えているのだ。テレビについては別途、連載のTV Styleで詳しくまとめることにしたい。

 さて、最後に今後の予測についてもGPCでは議論が交わされた。中でも興味深かったのが「独身世帯の増加」である。先進国ほど独身世帯が多くなりがちな傾向は想像できるが、世界でもっとも独身世帯率の高いスウェーデンは46%、2番目のドイツも40%という高率だそうだ。ちなみに日本は29%で米国の30%とほぼ同じ。中国は7%である(いずれも2010年の統計)。

国別の独身世帯の割合(左)。パーソナル志向の強い製品が増えるという(右)

 独身世帯率は今後も上昇傾向にあり、ドイツでは2030年には43%が独身世帯になると予測されている。この事をふまえた上でデジタル製品のパーソナル化が進むと予想されているわけだ。すなわちファミリー志向の製品企画よりも、パーソナル志向の強い製品が増え、Facebookに代表されるような個人同士を結びつけるSNSとの連動が、これまで以上に重要になる。

 その傾向は「WhatsUp」(日本ではLINEの方が一般的だろう)のような、テキストチャット中心に音声通話もキャッチアップしたアプリ/サービスの急拡大などにも現れているとGfKは指摘した。

 業界はこうしたムーブメントをキャッチアップするため、あらゆる家電製品をインターネットサービスと接続し、スマートフォン向けのアプリを通じて結びつける必要があるだろう。GPCでは家電同士を結びつけるアプライアンス向けの共通クラウドプラットフォームの提案も行われた。例えばドイツのB/S/Hが提案した「Home Connect」も、業界全体に呼びかけた家電製品のクラウド連携基盤だ。

どこでも常時ネットにつながり、さまざまなクラウドサービスを利用できる

 B/S/Hの担当者は「今、世界中で1分間に2000台のスマホが売れ、さらに1台のスマホあたり7つのアプリがダウンロードされている。彼らはこれを使って家電をより便利に使いこなし、連携させ、高い利便性を得たいと思っているが、異なるメーカー同士がつながらなければ利便性など得られない」と共通基盤の必要性を訴えた。

 パートナー募集を始めたばかりというHome Connectの行く末は分からないが、しかしそろそろ業界全体として、顧客視点に立ったアイデア、国際規格策定などの動きが必要なタイミングに差し掛かっているのかもしれない。

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