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劇場アニメ「キンプリ」は何がすごいのか? “異例の大ヒット”を生んだ「応援上映」の正体宣伝担当が語る(3/3 ページ)

» 2016年05月01日 06時00分 公開
[村上万純ITmedia]
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なぜキンプリファンは熱心なのか

 オールナイト上映終了と共に、「キンプリサイコー」「応援上映ほんとにやばい」などの声がTwitterで散見され、キンプリ関連のワードがいくつもトレンド入りした。

 意外なことに、シアター9に比べて盛り上がりに欠けていた「シアター6」もトレンド入りしたという。柴田さんは「公式アカウントから、シアター6の皆さんもっと心を開いても大丈夫ですよ、というようなツイートをしたら、それが拡散されたようです(笑)」と振り返る。

 このイベントがきっかけで口コミに火がつく。菱田監督がTwitterで、そろそろ上映が終了する旨をツイートしたこともあり、駆け込み需要で劇場に連日ファンが押し寄せた。

 1月末には、劇場上映回数が減っていく一方で、チケットは完売が続くという逆転現象が起きた。応援上映という新しい鑑賞スタイルと、ネットの口コミによって、キンプリは無名状態から大ヒット作品に変貌。上映館数も全国で徐々に増加していった。

 多い人では145回(!)も鑑賞しており、公式アカウントのフォロワー3万4000人以上(4月25日時点)も「非常にアクティブ率が高く」(柴田さん)、とにかくファンが熱心という印象が強い。

 無名時代のことを考えると、売れないインディーズバンドを支えるようなイメージなのかもしれない。柴田さんも「菱田監督が、Twitterやニコニコ生放送、舞台あいさつなど、規模の大小に関わらずたくさん登壇してくださいました。作品のお話だけでなく、舞台裏や苦労を語っていたので、それも大きいと思います」とうなずく。

“バズり”重視のキンプリTwitter

 柴田さんが特に注力したことの1つが、Twitterアカウント(@kinpri_PR)の運用。口コミの土台となるTwitterは、ファンとの交流ツールとして最も重要な役割を果たした。

キンプリ キンプリ公式Twitter

 柴田さんは「とにかく丁寧に分かりやすくを心がけました」と話す。特に意識したのは以下の点だ。

キンプリTwitter中の人が心がけたこと

  • フランクになりすぎず、言葉遣いを丁寧に
  • 「公式」らしい距離感を大切にし、フォロワーに直接リプライしない(必要に応じて別の形できちんとお知らせする)
  • 画像や動画などアイキャッチを重視、URLを貼ってサイトに誘導する
  • 通勤や通学、帰宅時、就寝前など時間帯を狙ってツイート
  • 文字数に余裕があればハッシュタグを入れる
  • 雑誌のイラストは「もっと見たい!」と思う部分をちら見せ
  • 劇場の施策や監督のツイートなど、ファンにとって有用な情報は取捨選択してリツイート
  • \「キンプリらしさ」も忘れずに/

 「販促や集客よりも拡散を意識しましたね」と語る柴田さんは、Twitter以外にも“バズる施策”を次々と実施。エイプリルフール、キャラクターの生誕祭記念上映(&お礼映像)、TRF・DJ.KOOさんのコメントを上映するなど、節目で突っ込みどころを重視した試みを続け、ファンのハートをがっちりつかんだ。

ミスコン エイプリルフールでは、公式サイトで男性キャラクターたちによる「ミスコン」を開催

低予算、少人数を味方に付けた逆転力(一部ネタバレあり)

 「当初1カ月で終わるはずだったものが3カ月目に突入し、本当に毎日状況がめまぐるしく変わりました。

 社内のキンプリチームはもちろん、こんなにたくさんの映像作りに付き合ってくれた制作会社の方、キンプリの立ち上げから掲載してくれた雑誌媒体の皆様、素敵なHPを作ってくれたWEB担当&制作会社さんなど、たくさんの方の力をお借りして、その場その場で臨機応変に全力で駆け抜けていった感じです」と、柴田さんは怒涛(どとう)の数カ月を振り返る。

 「コンテンツ、プロモーション、ファンの方々の熱気がらせん階段のように絡み合い、キンプリは現在のような輝きを手に入れました。予算がないながらもチームみんなで知恵を絞りましたし、総じて私の宣伝はあまり派手ではありませんが、HPやTwitter、取材、ニュース配信など、“基本的な部分をきちんとする”を目標にすると自然と結果がついてくることが多かったので、できる範囲ではありましたが努力しました。

 製作委員会が弊社とタツノコプロさんと少ないことがスピーディーに対応できた要因かなとも思います」。

 「共通の話題があれば、初対面同士でも盛り上がれる」という音楽の力に引かれてエイベックスに入社した柴田さん。キンプリファンの輪が広がる様子を見ながら、「まさかキンプリでその夢を実現できるとは思いませんでした」と笑顔を見せる。

 破竹の勢いを見せるキンプリだが、実は4月からの異動で柴田さんはキンプリ担当を離れることに。まさに作中で仲間と別れ、ハリウッドに旅立つメインキャラクター・神浜コウジをほうふつとさせる“リアルキンプリ状態”だ。

 ぜひ熱心なファンの皆さん(プリズムエリート)は、速水ヒロの気持ちになって虹の電車に乗る柴田さんを笑顔で送り出してほしい。

劇場版「KING OF PRISM by PrettyRhythm」

原作:タカラトミーアーツ/シンソフィア

監督:菱田正和

脚本:青葉 譲

CGディレクター:乙部善弘

キャラクター原案&デザイン:松浦麻衣

プリズムショー演出:京極尚彦

制作:タツノコプロ

配給・宣伝:エイベックス・ピクチャーズ株式会社

協賛:株式会社タカラトミーアーツ

製作:キングオブプリズム製作委員会

神浜コウジ:柿原徹也 速水ヒロ:前野智昭 仁科カヅキ:増田俊樹 

一条シン:寺島惇太 太刀花ユキノジョウ:斉藤壮馬 香賀美タイガ:畠中 祐 十王院カケル:八代 拓 鷹梁ミナト:五十嵐雅 西園寺レオ:永塚拓馬 涼野ユウ:内田雄馬 /管理人:浪川大輔

如月ルヰ:蒼井翔太 大和アレクサンダー:武内駿輔

法月 仁:三木眞一郎 氷室聖:関俊彦 黒川冷:森久保祥太郎

and YOU!


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