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» 2004年05月19日 12時11分 UPDATE

ケータイ漫画の新潮流(後編)「やぎの目」作者らが書き下ろし〜携帯4コマ.com

紙の漫画を携帯向けに移植するのではなく、携帯ならではのマンガコンテンツを提供したい――。そんな思いが、「通勤のお供に」とうたう携帯4コマ.comには込められている。

[杉浦正武,ITmedia]

 携帯電話向けの新しいマンガコンテンツのかたちを探る「ケータイ漫画の新潮流」。後編は日本ユニシス情報システムとクリアキューブが取り組む「携帯4コマ.com」を紹介する。

 同コンテンツはau公式メニューとして、月額315円で“移動時間に気軽に読める”4コマ漫画を月間100本以上配信するもの。最新のWIN端末でなくとも、XHTMLに対応した端末ならWeb経由でアクセスできる。サイトのコンセプトを、クリアキューブの有馬あきこ代表取締役など立ち上げに関わったメンバーに聞いた。

Photo 左から、日本ユニシス情報システム事業推進室のWebプロモーショングループ、西川真理グループマネジャー、コンテンツサイト運営グループ古端誠マネジャー、クリアキューブの有馬あきこ代表取締役、BPO/CSP営業グループの福本順グループマネジャー

 有馬氏は、従来の携帯マンガコンテンツに不満を感じていたという。「紙のマンガをそのまま携帯で見ようとしても、読みづらい。携帯では、移動中にサクッと読めるものがいい」。

 こう考えた有馬氏は、サイト制作に取りかかる。想定したのは20〜30代が対象の、通勤・通学時に電車内で時間つぶしに読むコンテンツ。思うような作品を描いてくれる作家の確保に向け、動き出したという。

描いているのは、プロの漫画家ではない

 携帯4コマ.comのコンテンツの特徴は、“書き下ろし”であることだ。ただし現在の作家陣は全員、プロの漫画家ではない。たとえば、シュールな作風が魅力の「ポケットやぎの目」を執筆しているのは、有名サイト「Webやぎの目」制作で知られる林雄司氏(3月29日の記事参照)だ。

 「私はネットの世界が長いので、林さんは、知り合いの知り合いぐらいだった」(有馬氏)

Photo 「ポケットやぎの目」より。クリックで拡大

 フェレットが登場するマンガ「いたちだから」を執筆するおかみや氏は、有馬氏が発掘してきた作家。

 「実は私がいたち好きで、いたちが出てくるマンガがないか探していた。ありったけの同人誌・商業誌を購入して検討し、その中で一番面白かったのがおかみやさんだったので、声をかけた」

 有馬氏はまた、コミケ(コミックマーケット)に出品する素人の中に有望株がいないか探し回ったという。こうした活動の結果、携帯4コマ.comは独特の世界観を持った作品群が集まるサイトとなった。

 こう聞くと、「特定のユーザーにしかウケないような、マニアックなサイトなのか?」との印象も受ける。しかし、有馬氏は「コミケ色、インディーズ色は出したくない」と話す。「個人的には、『鋼の錬金術師』ぐらい王道を狙ったつもりだ」(笑)とした。

「スクロール方式」を採用

 サイトインタフェースにも工夫が見られる。携帯4コマ.comでは前編で取り上げた「モバイルコミック」同様、フキダシ方式でセリフを表示している。

 「セリフが画像と別にテキストになっていると、セリフだけ先に表示されてオチが分かってしまう」

 モバイルコミックとは違うのは、Web画面上で4コマを一度に取得する点だ。QVGA対応機では3コマが、それ以外では1コマ半程度が表示され、下方にスクロールさせるとオチが読めるようになっている。

 「次のコマを読むために、いちいち別のページを取得する必要はない。ちょっと上のコマに戻りたいと思った場合も、すぐにスクロールで戻れる」

Photo

 もっとも、この方式を採用するにはそれなりの苦労もあったと有馬氏。携帯サイトを制作するにあたっては、容量バイト制限がある。具体的には、XHTML対応端末を想定してページを作っても、10Kバイト未満に押さえなければならない。

 「普通に描いていると、すぐ20Kバイトとかになる。携帯向けに軽い画像を描いてください、と作家にお願いしているが、かなり苦労しているようだ」

 バイト制限をクリアするために、色数を少なくするなどの工夫も必要になる。「パレット16色で、それこそドット打ちの世界。アイコンを作っているようだ」。アンチエイリアスをかけない、直線を多く使うなど、さまざまな工夫をこらして4コマ漫画を仕上げるという。


 近年、松下電器産業の「ΣBook」やソニーのリブリエといった読書専用端末が登場して、“電子書籍時代の到来”がささやかれている。モバイル端末で電子書籍を閲覧するために、セルシスが開発したコミックビューワ「ComicSurfing」などもある。

 ただし、これらに共通するのは「まず紙の漫画ありき」の発想であること。コンテンツを用意するには、は、著作権者の了解を得た上で作品をデジタルデータに変換するというプロセスが必要になる。

 一方、今回「ケータイ漫画の新潮流」前後編で紹介したのは、携帯ならではのコンテンツを“書き下ろし”で用意し、それを携帯で見る――というアプローチだ。配信方式の面でも、新しいスタイルを模索している。ユーザーがどちらを選ぶかは、TPOによるだろうが、この流れもまた1つの“電子書籍”として覚えておきたい。

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