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» 2006年04月04日 02時04分 UPDATE

韓国携帯事情:クローン携帯で盗聴──韓国で発生した事件の全貌と当局の対策

韓国でクローン携帯を使った盗聴事件が発生し、ユーザーを不安に陥れた。本物の携帯と同じ基地局内にいれば、双方向の通話内容をそのまま聞くことが可能だったという。

[佐々木朋美,ITmedia]

 最近、韓国では複製された携帯電話(クローン携帯)の問題が表面化し、ユーザーの間でも大きな話題を呼んでいる。中でも先日話題になった事件では、営利目的で大量に作ったのではなく、特定の携帯電話を複製することで通話内容を盗聴していたことが衝撃を与えた。携帯電話の複製を防ぐために韓国政府が取った政策とはどんなものなのだろうか。

複製携帯電話を利用した盗聴事件

 3月16日、韓国第2の都市、釜山市で複製携帯電話を使い盗聴を行っていた23人からなるグループが摘発された。携帯電話不法複製申告センターによると、このグループは、特定の携帯端末を不法に複製し、それを市場に流通させていたうえ、これを利用して他人の通話内容を盗聴していたという。

 グループは依頼を受けてあらゆる調査を行う事務所を運営していた。調査依頼を受けると、対象となった人が所持している携帯と見た目も中身も同じクローン携帯を作り上げ、これを利用して通話内容などを盗聴していた。韓国政府の情報通信部の資料によると、盗聴対象の端末機(A)と、その通話相手の端末機(B)が近距離に位置していれば、Aの音声がBのマイクを通じてAの複製端末機(A’)に伝わるといった仕組みとなっていたという。つまり、 A’がAと同じ動きをするということだ。

 これに対し釜山のサハ警察署はこの事務所の運営者2人と携帯電話複製の技術者2名を、通信秘密番号法違反で拘束。同警察はまた同様の疑いで複製プログラムを提供していた人物や、複製用の中古携帯電話を調達していた携帯電話販売業者など17人を立件、残り2人を手配中だ。

意外と簡単な複製

 携帯電話複製の鍵を握るのが、携帯電話の固有番号(ESN:Electronic Serial Number)だ。今回はこれを調べあげるため複製プログラムが利用された。これにモデル名などの必要情報を入力すればESN情報を得られ、元の携帯電話のクローン携帯ができあがる。

 モデル名などの情報は、事件に共謀していた携帯電話の代理店主に、調査対象者の携帯電話番号を伝えるなどして情報を引き出していた。警察の調べによると、クローン携帯が本物の携帯電話と同じ基地局内にいれば、現位置の追跡機能の利用や、双方向の通話内容をそのまま聞くことなどが可能だったという。

 CDMA携帯電話といえば複製できないというイメージが強いが、今回の事件により決してそうではないことが明らかとなった。結局、代理店の協力や複製プログラムなどが揃っていれば、複製携帯電話は比較的、簡単に作れるということが一般に知れ渡ることとなり、携帯電話ユーザーの間に不安が広まった。

報奨金支給で複製携帯撲滅を目指す

 情報通信部では、携帯電話の複製を防ぐため2つの対策を発表した。1つは「携帯電話 不法複製 申告センター」(以下、申告センター)の開設。もう1つが、複製携帯電話を通報した人に対し報奨金を支給する賞金制度だ。

 通報対象は複製携帯電話の製作および製作依頼だけでなく、これを使用したりESNを取引する行為までが含まれている。申告センターにこうした行為を通報すると事実を確認後、通報者に報奨金が支払われる。

 報奨金は、複製携帯電話1台あたり10万ウォン(約1万2000円)で、上限200万ウォン(約24万円)までが支給される。ただし大規模な組織の摘発など、通報による効果が大きければ最大1000万ウォン(約120万円)という大金が支払われる場合もある。

 報奨金制度を導入した理由として情報通信部担当者は「韓国では携帯電話の不法複製以外でも報奨金制度が利用されている。複製携帯電話の取り締まりを行うにも公共機関のみでは限界があるため、一般の人に報奨金を出して通報してもらう制度を導入した」と説明している。

 同制度は2年間実施される予定で、その後継続されるかどうかは「状況などを見て判断する」(情報通信部担当者)。現時点で通報数は「数百件程度」(情報通信部担当者)。このうち全てが正確な情報ではないようだが、一般の人々が目を光らせ複製携帯電話を作りにくい環境になったことは間違いない。韓国で複製携帯電話問題の表面化は今回が初めてではなく、盗聴以外にも電話のタダがけなど、さまざまな犯罪の可能性があるという点でもこの制度に対する期待は大きい。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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