多機能な中に“普段着”の使いやすさを──開発陣に聞く「W43CA」(前編)「W43CA」開発者インタビュー

» 2006年09月20日 12時47分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 9月21日から店頭に並ぶカシオ計算機製の「W43CA」(8月28日の記事参照)は、2.6インチワイド液晶やAF付き207万画素CMOSカメラ、FeliCa、PCサイトビューアー、LISMOといった「W41CA」(記事一覧参照)のスペックに、Wシーンやモバイル辞書など「G'zOne W42CA」(記事一覧参照)の新機能を盛り込み、さらにauの新サービス「EZチャンネルプラス」「EZニュースフラッシュ」「デコレーションメール」(8月29日の記事参照)などに対応した端末だ。

Photo 「W43CA」

 さまざまな機能を備えた多機能携帯ながら、そのデザインは丸みを帯びた、アナログ風な暖かみを感じさせるものに仕上がっている。

 「Heart Craft」をコンセプトとするW43CAに込められた開発陣の思いやこだわりについて、カシオ計算機 第四デザイン室長の井戸透記氏、商品企画チームの本間敦氏、マーケティング課の高木健介氏に聞いた。

Heart Craftは、ユーザー視点に立った作り手のこだわりや工夫

Photo 左からカシオ計算機 商品企画チームの本間敦氏、マーケティング課の高木健介氏、第四デザイン室長の井戸透記氏

 「W43CAは、トレンドの機能を搭載しつつ新機能にも対応したWINの普及モデルという位置付け。これに、ユーザーの方々から評価されている使いやすさを追求して搭載しようというのがHeart Craftです」──。こう話すのは高木氏だ。ユーザーの視点に立った作り手側のこだわりや工夫をHeart Craftという言葉で表し、それをコンセプトに据えた。

 もともと使いやすさでは定評のあるカシオ端末だが(4月18日の記事参照)、「さらにそれを突き詰めた」と説明するのは井戸氏だ。「手にした時の持ちやすさ、端末の開きやすさ、メールを打つときのホールド感やキータッチ、重さのバランス、使うのに最適なスピーカーやマイクの位置、美しく見えるデザイン──。こうした点を地道に詰めてできたのがW43CA。“すべてにおいて使いやすく”というつもりで作っています」

 W43CAを開発する上で意識したのは「携帯が、道具として本来あるべき形はどのようなものなのか」という点だったと井戸氏は振り返る。例えば、ここ1年で増えてきた四角い板を2枚重ねたようなデザイン携帯は、ファッションとして見れば確かに格好がいい。しかし一方で、持つと角が当たったり、片手では開きにくいなど、ある部分でユーザーに多少の慣れを強いる部分もある。

 端末が多様化する中にあってカシオ計算機の開発陣は、W43CAを普及機と位置付け“手にとって分かる使いやすさや、使うほどに深まる愛着を追求しよう”と考えた。「W43CAは、文房具や雑貨のように、“これといって派手ではないけれど、長く使い込むほどに馴染む道具”のようなものを志向しています。こういう突き詰め方をしたデザインが、1個くらい市場にあっていいのではないかと思ったのです」(井戸氏)

ハードウェア面から見るHeart Craft

 Heart Craftは、具体的に“ここです”というものではなく、ハードウェア面とソフトウェア面の細かい工夫の集大成だが、それが分かりやすい形で現れている部分もある。

 その1つが折りたたみボディの採用と背面の有機ELディスプレイだ。これまでカシオ計算機の多機能モデルは回転2軸スタイルが主流だったが、W43CAでは折りたたみ型を採用している。これは多くの人が慣れ親しんだ形ということに加え、EZニュースチャンネルの内容を背面のディスプレイにティッカー表示させ、より便利に使ってもらおうという意図からだという。

 端末を一定の薄さに収めながら、低消費電力で済み、左から右へと流れる文字がきれいに表示される、という条件を満たすのが有機ELだった。「時計として使うならモノクロ液晶のほうが便利ですが、ティッカーを流すと残像が出て文字が読みづらい。端末のバランスと新サービスの使いやすさを考慮して有機ELを採用しました」(本間氏)

 4種類からデザインを選べる背面の時計機能にも、一工夫している。「毎時の00分00秒になると、有機ELが発光してアニメーションが表示される『正時時計』を搭載しています。ベル人間が出てきてベルを叩いたり、絵合わせがあったり、ニュースキャスターがニュースを読んだり……」(井戸氏)。このあたりは「A5512CA」(記事一覧参照)の丸窓液晶のユニークさを引き継いだ部分だ。

Photo 正時時計の「絵合わせ」。朝にしか出ないアニメや夜にしか出ないアニメもあるという

 ダイヤルキーやソフトキーには、PCやタイプライターのキーを思わせる「Type Key」を採用した。「もともと道具の本質を追究して作った端末なので、ややアナログな感じを出したいと思ってこの形を選びました。最初のコンセプトモデルから、このキーでした」(井戸氏)

Photo キーのトップが上に寄っているのは、文字を見やすくするためだ。「天面に全部の文字を載せられないので、少しずらしています。携帯は真上からキーを見るわけではないので、多少、手前がスラントしていてもいいのではないかと」(井戸氏)

 W41CAではフラットキーを採用し、縦方向の押し間違いを防ぐために波形の加工を施していたが、W43CAは横方向にフレームのあるキーを採用したため、別のアプローチで押しやすくした。「見た目の安心感と使いやすさを両立させようというところから、カップ形状のキーにしています」(同)

Photo クレードルはUSB機能を備えており、PCとつないで端末を置くと、端末内データや着うたフルを自動バックアップするようにも設定できる

Photo ほかにも、カシオ端末としては初めてカメラを背面の先端部にレイアウトした。「折りたたみ型では、先端部にカメラがあった方が撮影もQRコード利用時も使いやすい。今回の秋冬モデルの中で、背面の先端部にカメラがあるのはW43CAだけ」(井戸氏)

 Heart Craftの真骨頂ともいえる、ソフトウェア面でのこだわりについては、後編でご紹介しよう。

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