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» 2007年01月29日 13時56分 UPDATE

「N703iD」開発陣インタビュー“変えるため”にあえて変えなかったあのカタチ――「N703iD」 (1/2)

アートディレクター佐藤可士和氏とドコモ、NECのコラボケータイ第2弾となるのが「N703iD」だ。前モデルからどこを変え、どこを変えなかったのか? 開発担当者に話を聞いた。

[平賀洋一,ITmedia]

 NTTドコモが1月16日に発表した「N703iD」は「N702iD」に続く、アートディレクター佐藤可士和氏とドコモ、NECのコラボレーション第2弾となるデザイン端末だ。現在発表されている703iシリーズでは、唯一のデザイナーズケータイでもある。

 一見するとN702iDと変わらないが、より薄く小さくなり、すっきりとしたフォルムになった。また、FeliCaチップを搭載し「おサイフケータイ」に対応したほか、ICカード認証や画面の視野角をコントロールするプライバシーアングルも備えるなど、セキュリティ機能も向上している。

 N703iDは、どこをN702iDから変え、どこを変えなかったのか。開発を担当したNEC モバイルターミナル事業本部の有田行男氏と、藤村裕子氏に聞いた。

新しいデザインのために「変わらないこと」を選択

photo NEC モバイルターミナル事業本部の有田行男氏(右)、藤村裕子氏(左)

 N703iDはそのサイズやディティールなどの変更はあるものの、N702iDの四角いフォルムに細長い背面パネルというデザイン構成を引き継いでいる。カラーバリエーションこそ違うが、N703iDの“見た目”はN702iDとほとんど同じ印象を受ける。N702iDのデザインについて有田氏は、「変えるためのデザインはしたくなかった」と話す。

 “N”のケータイといえば、折りたたみ型でアークラインデザインのような万人受けする端末――という印象が広く浸透している。過去から続く製品イメージとは別に、次世代の携帯ユーザーに対してアピールするべく、特にデザインに力を入れたのが、佐藤可士和氏とのコラボモデルであるN702iDでありN703iDだという。

 「自動車がそうですが、モデルチェンジで形が変わってしまいますよね。前モデルと違う外観を用意することで、新しくなった印象を持たせる“モデルチェンジのためのデザイン”が多い。良いように変わればいいのですが、製品デザインの良さを打ち消してしまったり、前モデルからの継続性を断ち切ってしまうことがある。N702iDに続くN703iDでは、そういった携帯作りは避けたかったんです」(有田氏)

 「潔い端末」(2006年1月の記事参照)を目指したN702iDから1年。N702iDはフラットでスクエアなデザインと、縦に長い背面パネルが人気となり、大ヒットを記録した。しかし、これまでと違う“N”端末のデザインを印象付けるには、これ1機種の成功で済むわけではない。N703iDでもデザイン要素を変更することなく、新しいNECのデザインをアピールすることになった。

photophoto

 「こうした、大まかなN703iDの開発方針が決まったのはちょうど1年くらい前です。引き続き佐藤可士和さんと一緒に企画し、N702iDからどこを引き継いで、どこを見直すのかを決めました。少し後くらいにN702iDが発売になって(2006年2月の記事参照)、発売直後の売り上げは好調という報告がありました。デザインがかなり好評ということで、どういった点が受け入れられているのか参考にしました」(藤村氏)

 長期的なデザイン戦略の視点から、あえて「変えない」ことを選んだN703iDの開発。しかしそこには、現実的な問題が、山積していた。

 「デザイン要素を変えずに、どのように新しさをアピールするのか。これは非常に重大な問題で、開発に携わる者全員のテーマとしました。デザイン面については、佐藤さんが理想とする端末デザインへの追求ですね。N702iDの要素のまま、いかに再構築していくか。技術的には、より薄く軽くし、ニーズに合わせた機能をどう追加するかでした」(藤村氏)

ならば、どこが変わったのか?

 N702iDとN703iDを並べてみると分かるが、N702iDとN703iDでこの2機種は、似たデザインやフォルムではあるものの、かなりの部分で違いがある。すぐに分かるのが、N703iDのコンパクトさだ。FeliCaチップを搭載するなど機能が増えているにも関わらず、高さで2ミリ、厚さで2.8ミリ小さくなった。体積ではN702iDの約80%に小型化している。

 外部メモリがminiSDからmicroSDになるなど、ハードウェアを構成する部材が小さくなったこともあるが、関連会社であるNECエレクトロニクスが開発した3G用チップセット「M1」(2006年9月の記事参照)の存在が大きいという。

 「M1を使えば、これまで別々に配置していた半導体をまとめることができる。集積率が上がったことで、省スペース性と省電力性を同時に実現できた」(有田氏)

 また、ソフトはN903iをベースに開発されたが、ハードウェアはまったくのオリジナルとなっている。N703iDの最大待受時間は700時間で、FOMAの中では最長となるバッテリーライフを実現する。

photophotophoto 「N702iD」に比べよりコンパクトになったN703iD。背面パネルやヒンジ部がすっきりしたほか、赤外線ポートがサブディスプレイと連続するデザインに配置された。ボディとは逆に、ダイヤルキーは大型化している

 次に分かるのがヒンジ構造の違いだ。前モデルではいわいる「逆ヒンジ」だったが、N703iDでは通常のヒンジに戻っている。「逆ヒンジ構造は、ディスプレイ側の端をすっきりさせるために採用しましたが、どうしても可動部分が大きくなってしまいました。そこで、ヒンジの位置や形状を工夫し、従来型でありながら、よりスッキリと見えるヒンジに設計しました」(藤村氏)

 N702iDの背面パネルにあった撮影補助用ライトを廃し、同じ場所にあった着信通知用のLEDは、サブディスプレイの中に隠された。N702iDの開発時、佐藤氏は撮影補助用ライトをどうしても取りたかったが、技術的に残さざるを得なかったという。

 「佐藤さんがイメージするケータイの背面パネルは、“縦に伸びるサブディスプレイだけがある”というものでした。しかし、N702iDのカメラは暗さに弱く、補助灯を付ける必要がありました。カメラの位置や補助灯の位置を変えることも難しく、あのような形となったのです。N703iDでは高感度のカメラを採用することで、補助灯がなくてもかなり暗い場所での撮影が可能になっています」(藤村氏)

 さすがに真っ暗な状態では撮影できないが、「薄暗い居酒屋」といった環境では十分に写せるという。

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