インタビュー
» 2007年02月28日 21時16分 UPDATE

「N703iμ」開発陣インタビュー 中編:薄いけど、驚くほど丈夫――「N703iμ」のデザインとメカニズムに迫る (1/2)

スリムさに目がいくN703iμだが、厚さ11.4ミリのボディ強度とはどれくらいだろうか。また、そのデザインにはどんな思いが込められたのか? “サバ折り”にも耐えらるタフネスボディの秘密に迫った。

[房野麻子(聞き手:平賀洋一),ITmedia]

薄型端末を形作る「ハイブリッド筐体」

photo 「N703i」

 「N703iμ」と「P703iμ」は同じ薄さだが、薄くするためのアプローチは全く異なっている。P703iμは基板を液晶画面側のボディに実装して薄型化を実現した。一方N703iμでは、基板がダイヤルキー側に実装されている。

 「なぜダイヤルキー側に集中させたかというと、重量バランスを重視したからです。キーの押しやすさを考えたとき、キーストロークだけじゃなくて、キー側に重心があることが重要です。基本的にダイヤルキー側ボディに全部実装し、液晶側ボディはできるだけ薄く、軽くする。というのがそもそもの設計思想なのです。

 またP703iμでは、基板を樹脂で固めて剛性を出していると思いますが、弊社の場合は金属筐体を積極的に採用して、剛性を出していく考え方です」(有田氏)

 N703iμは「ハイブリッド筐体」と呼ばれている筐体を採用している。液晶側ボディを例にとって説明すると、マグネシウム合金でできた枠に、液晶をのせるステンレス板、そして樹脂という3つの素材が組み合わされた筐体だ。素材をただ重ねただけでは力が加わると隙間ができ、強度が十分保てない。しかし、うまく接着しておくことで異なる素材が一緒に曲がり、剛性が確保できる。「このノウハウを携帯に生かしたのは、おそらく弊社が初めてだと思います」(有田氏)

 マグネシウム合金の枠とステンレスの板は、非常に薄い接着テープで、熱をかけて貼り合わされているという。

photophoto N703iμ先行開発チームのNEC モバイルターミナル技術本部 近藤氏(左)。N703iμ商用化チームのNEC埼玉 技術部 白石氏(右)

 「良く使われるスポンジ素材の両面テープだと、異素材を貼り合わせても簡単にズレてしまいます。そこで、非常に薄く、完全にくっつくような両面テープを探しました。2つの接着面を平らにして、薄くて強い両面テープを貼り、熱をかけて一体化する――開発を通じて、このプロセスのノウハウを得ることができました」(白石氏)

 こうした部品の製造は、本来マグネシウム合金を使ってダイキャストで作るのが一般的だ。しかし、鋳造の一種であるダイキャスト製法では、薄い部品が作りにくい。そこで、フレームのみをダイキャストで作り、ステンレス版を貼ることにした。

photo N703iμの構造図。右側がダイヤルキー側ボディの構造で、「モールド(樹脂)」が強化プラスチック。電話機としての機能を担う基板はダイヤルキー側に集約され、左側の液晶画面側ボディは背面のLEDを光らせるための基板とLCDユニットのみだ

 「ダイキャスト自体は外注先にお願いすれば何なくできます。我々も10年くらい前からダイキャストを採用していて、経験がある。しかし、そこへステンレスを貼り合わせるのは初めてだった。マグネシウムを扱うメーカーも、(ステンレスの)板金を扱ったことがなく、それを貼るということに抵抗がありました。貼ったときの接着力を保証しないと、ひねったときに追従してくれず、剥がれてしまう。そうすると“ハイブリッド”ではなくなります。その点で苦労しました」(白石氏)

 ダイヤルキー側のボディは、他モデルでもよく採用されている「インサート成形」(ある素材の回りに異なる樹脂を流して一体にする製法)で作られている。特にN703iμでは、非常に硬い強化プラスチックを採用した。

 「薄くても弱くなっては携帯電話として成り立たない。液晶画面側ボディはマグネシウムとステンレス、ダイヤルキー側のボディは強化プラスチックとステンレスのハイブリッド筐体を採用し、硬い素材を組み込んで形が変形しないようにしています」(近藤氏)

 コンマ1ミリが出来上がりを左右するものづくりの中では、プラスチックの厚みも非常に薄く、成形上で難しい部分がある。「これではできない」と部品メーカーからクレームが上がってくることもあったという。

 ちなみにハイブリッド筐体は、μシリーズだけではなく他の端末にも応用できる技術だが、コストがかかるため現時点では特別な端末でのみ採用されるとのことだ。さらに驚くべきことに、バイブレーションのモーターは、なんとヒンジの中に入っている。「筐体の厚みでは、バイブがどこにも入らなかったのです。厚みが一番あるのがどこかといえばヒンジのところ。11.4ミリをフルに使える空間が、ヒンジしかなかったのです」(白石氏)

 「F1マシンのような、公道を走らないスペシャルなクルマ――ああいうものを作っているような感覚ですね」(有田氏)

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