Selfie、Tweep、Shelfie――モバイル分野の新しい英語をチェック日本から輸出されたコトバも(1/2 ページ)

» 2014年08月22日 17時00分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 新技術が生まれ、今までできなかったことが可能になるたびに、我々は新しい言葉や言葉の使い方を生み出してきた。中でも技術の移り変わりが激しいモバイル業界は、トレンドの宝庫。それだけに新しい言葉がよく生まれている分野だ。今回は、モバイルとソーシャルが生み出した新しい英語から、世界のトレンドをチェックしてみたい。

Selfie=自分撮りとSNSへの共有

 最初に紹介したいのは、日本でも耳にすることが多くなった「Selfie(セルフィー)」だ。スマ−トフォンのインカメラで自分自身を撮影する、いわゆる自分撮りや自撮りを意味しているが、単に自分たちの写真を撮ってアルバムに収めるのではなく、TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワークサービスにアップロードして仲間に見せる。つまり、「写真を撮る」+「友人と共有」という2つの要素がある。

 この写真は5月、中国・北京の観光スポット故宮博物院(紫禁城)での光景だ。観光客がスマートフォンのフロントカメラを使って、精一杯腕を伸ばして自分たちを撮影している。これまでならデジタルカメラでモニュメントをバックに、他人に頼んで写真を撮ってもらっていたところだろう。このような自分撮りは、スマートフォンとSNSの交差により生まれたトレンドだ。

photophoto 中国・北京の故宮博物院(紫禁城)で見かけた“Selfie”

 背景として、スマートフォン側のカメラの高スペック化、撮影後すぐに写真をチェックできる大画面、加工ソフトウェア(アプリ)の充実と高機能化、さらにはTwitterやFacebookなどのSNSがシェアをスムーズにしていることがある。もちろん、高速なネットワークがあちこちに張り巡らされたインフラ側の進化も忘れてはならない。

 Selfieカルチャーはこれまでデジカメに手の届かなかった途上国だけでなく、世界的な現象となっている。その良い例が3月2日(現地時間)に行われた第86回アカデミー賞での一コマだ。

 司会を務めたエレン・デジェネレスが授賞式中に出演者と撮ってTwitterにアップした写真は、その直後に200万件のリツイートを記録した。写真はエレンのほか、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ケヴィン・スペイシー、ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリーなどのセレブが1枚に収まった豪華なSelfieで、エレンは「ブラッドレイ(写真を撮ったブラッドレイ・クーパー)の腕がもうちょっと長かったら」とコメントしている

 このSelfieに使われたのはSamsung Electronicsの「GALAXY Note 3 」。エレン本人のキャラクターからも意図のない自然な行為と思われるが、Samsungはアカデミー賞のスポンサーでもあり、その影響もあったといわれている。

 このほか、パリス・ヒルトン、ニコール・リッチー、キム・カーダシアン、ジャスティン・ビーバーなど、日本でも名を知られたセレブがよくSelfieを披露しているし、バラク・オバマ大統領夫妻など政治家のSelfieも珍しくない。そしてローマ法王までSelfieを行っているというから、社会現象といってよいだろう。

 このようにSelfieは途上国、発展国を問わず、有名人、一般人を問わずの大流行で、毎日100万件のSelfieが撮影されているというデータもある。その3割を占めるのが18〜24歳の若者で、男女が半々というのも興味深い。

 Selfieが共有されるSNSはFacebookが最多で48%、次いでWhats Appなどのモバイルメッセージサービスが27%、Twitterが9%などとなっている。5%と比率こそ少ないものの、SnapchatなどはSelfieカルチャーあってこそのサービスではないかと思う。

 またこのブームに乗ろうと、端末メーカーはSelfieを意識した新モデルを投入している。フロントに5メガピクセルカメラを搭載した「HTC One M8」や、“ベストSelfieスマートフォン”をうたう「Xperia C3」などだ。4月22日の「地球の日」(アースデイ)に合わせてハッシュタグ付きのSelfieを募った米航空宇宙局(NASA)など、マーケティングの取り組み例も増えている。

 ちなみに、Selfieが使われ出したのは、いまではすっかりニッチになったMySpaceだ。2005年頃からじわじわと使われ始まったといわれている。その後Selfieは、Facebookとスマホの普及により一気に広まり、2012年にはTIMEが選ぶ今年の流行語に選ばれた。

 自分を撮るだけでなくその後SNSにシェアするところまでを指すため、“自分中心”や“自己顕示”という意味合いが強調された、時代を表わす言葉と言っていいだろう。そのためか、Oxford、Merriam-Websterの「Collegiate Dictionary」などの辞書にも新語としてデビューしている。

Shelfie=棚に自分のセンスを陳列

 自分の顔を撮るのがSelfieなら、自分のテイストやセンスを誇示するのが「Shelfie(シェルフィー)」になる。Shelfはご存知のように“棚”を意味し、自分の棚に並んでいるものを撮って共有することだ。

 良く目にするのは本棚だが、ほかにも食器棚やリビング・寝室にあるラックやキャビネットにある自分の持っている物、コレクションしている物の写真を共有する行為で、現在はInstagramがShelfieの場となっている。

 Twitterや自分のブログの背景に、Shelfieチックに写真を並べている人もいる。Selfieがストレートな自己顕示なら、Shelfieはシャイな人の、あるいは自分を抑えた間接的な自己顕示に見えるのだが、いかがだろうか?

Tweep=Twitterする人

 SelfieとともにWebsterの辞書に新語として入ったのが「Tweep(トィープ)」だ。

TwitterにPeep(“みんな”人々”を指すスラング)を組み合わせたのが語源で、Twitterでメッセージのやりとりをする人を意味する。

 同じくTwitter+Peopleで「Tweeple(トィープル)」ということもある(TweepleはWebsterには入っていない)。個人的には、“小声で話す”の意味もあるPeepが入ったTweepのほうが、小鳥のさえずり“twit”に由来するTwitterにはぴったりくる感じがする。

 Twitterはその語感や響きから関連の造語が生まれやすいようで、ツイートに忙しいティーンエイジャーを称した「Tweenager(トィーンネージャー)」(Tweet+Teennager)という新語も出てきている。

Sext=ちょっと○○なやりとりを……

 Twitterやメッセンジャーがブームになる前、欧米のモバイルシーンではSMS(Short Messaging Service)が主流だった。SMSは文字だけを送受信することから単に「Text(テキスト)」と言う場合も多く、これもいくつかの言葉を生んだ。

 例えば「Sext(セックスト)」「Sexting(セックスティング)」は、Sex+Textを縮めたもので、文字通り性的な会話をSMSやチャットで行うことを指す。具体的な用法は……ここでは控えよう。

 単なるテキストの交換から写真の交換に発展する例もあるようで、これが、相手からみられたくない自分の写真をネット上で公開される「Revenge Porn(リベンジ・ポルノ)」に発展することも。軽い気持ちのSextから始まり、大事件になってしまうケースも少なくないことも付け加えておこう。

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