もう1つHuaweiにとって有利に働く要素になりそうなのがスマートフォンの周辺機器に、エコシステムが広がっていることだ。呉氏によると、Huaweiは「1+8+N」の戦略に基づき、製品を投入しているという。1のスマートフォンをハブにしつつ、8つのジャンルの製品が連携していくというのが、その中身だ。5G時代には、「1+8」以上に「N」が増えていくという意味も込められている。
この戦略を進めるために開発されたのが、「『1+8+N』の全てのシーンをカバーできる」(同)という、Huawei独自の「Harmony OS」だ。呉氏によると、同OSはまずスマートスクリーンに採用されたが、今後はスマートウォッチやスマートスピーカーなどにも搭載が進められていくという。Androidは高いシェアを誇る一方で、スマートフォン以外のジャンルでは、数あるOSのうちの1つでしかない。スマートフォンとこれらの周辺機器がHMSで連携するとなれば、開発者にとって、魅力的なエコシステムになる可能性もある。
HMSのエコシステムを強化することで、米国をけん制しているという見方もできる。実際、Googleは、Huaweiが独自のエコシステムを作ることで、Androidの分断化がさらに進んでしまうと考えているようだ。一部海外メディアでは、Googleが米国に対し、「制裁は逆に安全保障上の脅威を高める結果になる」と警告したことが報じられている。2億台を超えるスマートフォンを販売するメーカーが、Googleのエコシステムから抜けることは、Androidにとっても痛手といえる。
もっとも、HMSのエコシステムにアプリの開発者が十分集まらなければ、Huaweiのもくろみは絵に描いた餅になってしまう。各国でGoogleと互角に渡り合えるだけのサポート体制を築けるのかは未知数だ。また、Googleはプラットフォームの運営元であるのと同時に、アプリやサービスの開発者でもある。いくらサードパーティーのアプリがそろっていても、シェアの高いGoogle マップやGmail、Google フォトなどのアプリが利用できなければ、スマートフォンとしての魅力が薄れてしまいかねない。こうした問題をどう解決していくのかも、今後の課題になりそうだ。
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