Googleの「Caffeine」が開発者に公開されてまだ1カ月にもならないが、検索エンジンマーケティング(SEM)活用企業の中には、この次世代の検索インフラがキーワード錬金術にどんな影響をもたらすかについて既に検討を始めているところもあるようだ。
「Caffeineは、検索インデックスの拡大、ロングテールの延長、ソーシャルメディアの比重増大により、検索結果ランキングにかなり大きな変化をもたらす」――デジタル広告代理店360iのSEO(検索エンジン最適化)専門家がCaffeineと現行のGoogle検索と比較した調査では、このような見解が示された。360iのSEOディレクター、マイク・ドブズ氏とSEOアナリスト、マーサ・ムカンガラ氏は、40項目の小売り関連キーワードについて、両方の検索エンジンでのランキングを調べた。
両アナリストは10項目の有名小売りブランド名、10項目の“ヘッドターム”(1語の検索ターム)、10項目の“トルソターム”(2語の検索ターム)、10項目の“ロングテールフレーズ”(4語の検索ターム)をキーワードとして使用し、両エンジンの検索結果の最初の3ページを比較した。(訳注:ロングテールモデルの「ヘッド」(先端)部分とロングテール部分の中間の部分を「トルソ」(胴体)という。)
この調査の検索キーワードは、本稿筆者による別コラムGoogle Watchに掲載されている。Googleの検索エンジニア、マット・カッツ氏によるCaffeineの解説はこちらのコラムにまとめた。
Caffeineと現行のGoogle検索インフラの比較テストを行ったドブズ氏とムカンガラ氏は8月24日付のリポートに、「Caffeineでは検索結果の1ページ目のランキングが約15%変化した。1語の検索語と2語のフレーズだけに注目すれば、検索結果で上位1〜10番目に入ったサイトで最大50%の違いがあった」と記している。
この調査は、Caffeineでは1語のキーワードに関連した検索インデックスが拡大することを示している。これは、1語のブランド名あるいはヘッドタームを索引化したWebカタログページがさらに増加し、SEM活用企業のWebサイトはその中で競争をしなければならないことを意味する。つまり、Caffeineではより多くのWebページが索引化され、検索結果候補の数が増えるため、検索結果ページの上位を狙う企業の間の競争がさらに激しくなるということだ。「検索する側にとってはメリットになる。結果の精度が高まるからだ」と両アナリストは指摘する。
Caffeineでは1語のブランド名およびヘッドタームについて索引化されるページが増加する一方で、複数のキーワードによるフレーズ検索に対するインデックスは縮小するようだ。言い換えれば、精度の高い検索については、SEM活用企業のWebページの競合が少なくなるということだ。両アナリストによると、これは製品の説明が詳細な有名ブランドに有利に作用し、ロングテール検索の重要性が高まる可能性があるという。
2006年にGoogleの検索インフラ「Big Daddy」が大幅に更新された後、ソーシャルメディアが爆発的に普及したが、Caffeineの検索結果にもそれが反映されている。YouTubeの人気が拡大したこともあり、Googleの現行検索エンジンと比べ、検索結果リストに入るソーシャルメディアのページが増えている。Caffeineではブログ、評価サイト、Wikiよりも、YouTubeやFacebookなどのマルチメディア共有サイトが数多く索引化されている。
また、Googleはユニバーサル検索(10件の青色のリンク以外に追加されるブログ、動画、書籍などのカテゴリの検索結果)を重視しており、Caffeineでは検索結果の最初の3ページに含まれる「ユニバーサルリスト」の数が増えている。
調査を実施したドブズ氏とムカンガラ氏によると、Caffeineでは検索結果ページ(SERP)を表示するのにかかる時間が半分になったという。Google検索のスピードアップによる使い勝手とユーザーエクスペリエンスの改善は、Google共同創業者のラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏の重要な関心事であり、両氏はGoogleのエンジニアに対し検索エンジンを高速化するよう叱咤(しった)激励している。
両アナリストは、「Googleはより広範なWebコンテンツに基づく高速で精度の高い検索をCaffeineで実現することによって、検索エクスペリエンスを改善しようとしている。これはGoogle、ユーザー、広告主のすべてにとって良いことだ」と調査リポートを締めくくっている。
このため両氏はSEM活用企業に対し、自社の検索キーワードを詳細に検討し、GoogleがCaffeineに移行すれば検索結果がどう変化するのか判断する必要があるとアドバイスしている。
「これはアルゴリズムの更新ではないため、自社のベストプラクティスや自然検索戦術を大幅に変更することは勧められない。しかし自社のキーワードのランクが変化する場合は、戦略を刷新してランキングの低下に対処するか、もしくはランキングの上昇のメリットを生かす必要がある」と両アナリストは記している。
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