展覧会ナビゲーションツールとしてのiPod〜六本木クロッシング(1/2 ページ)

» 2004年02月20日 18時52分 公開
[こばやしゆたか,ITmedia]

 東京・六本木の森美術館で、「六本木クロッシング〜日本美術の新しい展望2004」という展覧会が4月11日まで開催されている。2月19日に、このイベントのプレス向け視聴会があったので行ってきた。

 展覧会に「視聴会」っていうのは何だか変な感じなのだけど、理由は2つある。一つは、作品の多くがインスタレーションで、視覚も聴覚も使って味わうものが多いってこと。そしてもう一つの(多分本当の)理由は、来場者にナビゲーションツールとしてiPodが手渡されるということだ。

 会場には57組のアーティストによる作品が展示されている。このうち(今のところ)23組について、作者自身による解説がiPodに仕込まれていて、会場の入り口で、それを貸してもらえるのだ(借りるときには運転免許証など身分証明書の提示が必要)。

 解説って言ったけど、感じはもっとやわらかい。作者がキュレーターのインタビューに答えたものが2〜3分に編集されているのだけど、どうも展覧会の設営といっしょにやったようで、トークの後ろでトンテンカン音がしてたりする。それも何だかいい雰囲気だ。

 それでわかるように、この音声はすべて美術館のスタッフが作っている。曰く「(コンピュータに)詳しくない人たちが、FinalCutProなんかを使って、とにかく作り上げちゃった」というものなんだそうだ。たしかに、音声データが無駄にでかい(MP3 192Kbps/48MHz JOINTじゃないステレオ*1)なんてところを見ると、手探りでやったんだなって感じがする。

 ガイドの効果は大きい。例えば木下晋(すすむ)さんの「103年の闘争」という作品がある。これは、ケント紙に鉛筆で描かれたものだ。そこまでは見ればわかる(いや、本当はわかんないかもしれないけど、作品名と一緒に「ケント紙、鉛筆」とか書いてあるから、見ればわかる)。でも、音声ガイドを聞くと、さらにすごいことがわかるのだ。

 「その鉛筆には9Bから9Hまでの、だいたい20段階のグラデーションがあるんだけど。普通だったら、HBならHBの鉛筆で筆圧で強弱をあらわすのだけど、僕の場合はその20段階を使いわけて、やるわけです。油絵なんかの制作プロセスをそのまま鉛筆に持ちこんだっていうもの」

 さらに、そのモデルがどういう人であるかなんてこともわかって、思わず絵を見直しちゃったりする。

 あるいは眞田岳彦さんの「衝/動」と題された作品。台のうえに、動物の尻尾を摸したふかふかのオブジェがたくさん並んでいる。あ、かわいい、って思わず……ってところでiPodから声がする。

 「生命というのは、ふわって見たときに、無意識のうちに手が出てしまう衝動、その瞬間っていうのは、なんにも意識はしないんだけど、『あ』って言って自分が手が出したくなる気持ちがある。……これを見てもらって『ああ』って思ってくれたらそれはもう成功で、その瞬間に自分が気がつかない、それがあなたの生命なんですよ。そういう問いかけなんですね。」

 見透かされています。大成功です。スリスリしたくなりました。でも、展示台には「作品にお手を触れないでください」と書いてある。もー、それは拷問です。この衝動を何とかしてやってください……と、見事に作品世界の中に取り込まれてしまうわけだ。

 ニュージーランドの2人組ユニット「生意気」(ホントに漢字のユニット名なのだ)は、一つの部屋を作品にしている。飛行船形の風船を持ち込んで、それに映像を映して、その周りにはさまざまなゴチャゴチャとしたオブジェを並べて「散らかして」いる。なんか、散らかり方が和むんだけど。

 オブジェの中にはiMacも5台いたりするんだけど、アップルマークの上には黒いテープが*型に貼られちゃってる。この日はアップルの方も来ていたので聞いてみた。

 「ぎりぎりですね」

 *形に貼られたテープは、ユニットのお気に入り(あるいはアイデンディティ)みたいで、壁とかあちこちにそのモチーフが出てくる。だから、それをアップルマークの上に貼るっていうのは、わかりやすい自己表現らしい。そのへんはちゃんとアップルもわかっているってことだね。

 ところが、このユニットのガイドはないのだ。これは聞いてみたい。日本語しゃべらないのかなぁ。通訳付きでもいいから聞きたいよ。

 こんな感じで、展覧会はとっても面白かった。視聴会は1時間半くらいの時間があったのだけど、それでは全く足りなかったので、また出直さなきゃって思うくらい。でも、その音声ガイドについては、不満点がある。ガイドの内容ではなくてハードウェア、つまりiPodに。


*1 モノラルの音声データだから、48Kbpsでもいいくらい。でも、相手は15GバイトのiPodだから、データがいくら大きくたってびくともしないんだけど。

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