ECSの915P-AはIntel 915Pを搭載したLGA775&PCI Express対応のATXマザー。Intel 915P(だけでなく、インテルから登場したPCI Express対応チップセットすべてに当てはまることだが)では、メモリはDDR2-533対応、グラフィックスカード用バスもPCI-Express x16のみ正式サポートと、従来使われてきた規格からすべて新しいものに移行しなければならない。
そのため、Intel 915P搭載マザーの実売価格は従来マザーとほとんど同じなのに、高価なDDR2-533モジュールや、PCI Expressに対応したグラフィックスカードを新たに購入する必要が出てくる。
新しいプラットフォームを導入するときに、従来のリソースが流用できるとコストが低く抑えられ、新規格への移行がスムーズに行えることは、AMDが「AMD64」のプロモーションで繰り返し述べているとおりだが、その理屈はライバルであるインテルのユーザーでも同じこと。
現在、とくに高値が目立つDDR2-533については、マザーボードベンダーからDDR2対応スロットとPC3200対応スロットを混載した製品が多数登場している。また、コストパフォーマンスを重視したmicroATXマザーでは、最初からPC3200対応スロットだけを搭載しているケースもある。
ただし、グラフィックスカード用のバスだけはほとんどのIntel 925X/Intel 915G/P搭載マザーがPCI Express X16だけをサポートしている。今のところ、ハイエンドレンジのPCI Express対応カードが登場していないため、PCI Expressへの移行を躊躇しているパフォーマンス重視ユーザーも多い。
ところが、915P-AだけはECSが開発した独自の「AGP Express」というスロットを搭載してAGP対応グラフィックスカードが利用可能になっているのだ。
COMPUTEX TAIPEI 2004で発表されてから、多くのユーザーの注目を集めているこのマザー。すでに、パーツショップでの販売が開始されているが、AGP Expressの具体的な内容について、いまだ明らかになっていない部分が多い。
先日、秋葉原で行われたECSのプライベートイベントでも、AGP Expressに差したグラフィックスカードのパフォーマンスや、AGP Expressで動作するグラフィックスカードに関する情報などが明らかにされたものの、その仕組みについては断片的なものしか流れてこない。
メモリとグラフィックスカードが流用できる唯一のマザーボードとして注目されながら、依然として謎の多い915P-A。DDR2とDDR、PCI Express x16とAGP Expressと「充実した」混在環境ゆえに、その挙動と設定、そして安定性も気になるところだ。
全体的なボードレイアウトはメモリスロット4本に、PCI ExpressスロットがX16一つとX1二つ。PCIカード用スロットは二つ用意されている。Serial ATAが4ポートにUltra ATA/100ポート1基、FDDポート1基。
そして、最大の特徴でもあるAGP Expressスロットが一つ、明るいオレンジ色で目立つように実装されている。
四つあるメモリスロットは、DDR2対応、DDR対応にそれぞれ二つずつ用意されている。DDR2とDDRは排他利用で、混在環境では動作しない。それぞれのメモリで2スロットのみが利用できるわけで、最大メモリ容量もチップセットがサポートする4Gバイトよりも少ない、2Gバイトとなっている。
PCI Express x16に差したグラフィックスカードとAGP Expressに差したグラフィックスカード。プライベートイベントのメインブースで行っていた「2枚差しによるデュアルディスプレイ」のデモが印象的だったが、ECSの公式見解では「それぞれ排他利用」であって、PCI ExpressとAGP Expressによるデュアルディスプレイは正式サポートではないとしている。
また、AGP Expressで使えるビデオカードにも制約があるようで、マニュアルに動作が確認されたビデオカードのリストが記載されているほか、ECS自身もさらなる動作検証を続けている段階だ。現在までにECSのスタッフから確認できた情報によると、「RADEON 9600」「RADEON 950」「GeForce FX 5700」搭載のビデオカードで動作できないことが確認されているらしい。
ただし、GPUは同じでもベンダーによって動作する製品と動作しない製品があるようなので、一概に「自分の持っているグラフィックスカードはGeForce FX 5700を搭載しているから使えない」ということでもないようだ。
さて、いろいろとギミックが盛りだくさんの915P-Aであるが、まずはマザーボードとしての実力を見ていくことにしよう。AGP Expressを含めたビデオカード関連のパフォーマンスと挙動に関しては回を改めて紹介する予定にしている。
915P-Aを基幹として構成した評価用PCの構成は以下のようになっている。ベンチマークのデータはメモリをDDR2-533、PC3200のそれぞれで測定している。
テスト環境 | ECS 915P-A | ECS 915P-A | MSI 865PE Neo-2 | MSI 915G Neo2 Platinum |
CPU | Pentium 4/540(3.20GHz) | Pentium 4/3.20E GHz | Pentium 4/540(3.20GHz) | |
メモリ | DDR2-533 512Mバイト×2 | PC3200 512Mバイト×2 | PC3200 512Mバイト×2 | DDR2-533 512Mバイト×2 |
ビデオ | RADEON X600XT(ビデオメモリ128Mバイト) | RADEON 9600(ビデオメモリ128Mバイト | RADEON X600XT(ビデオメモリ128Mバイト) | |
HDD | ST3160023AS | |||
OS | Windows XP Professional(英語版) | |||
ServicePack1、Directx9a |
今回比較対照として、従来のミドルレンジチップセット「Intel 865PE」搭載マザーと、同じミドルレンジながら「Intel 915G」を搭載したマザーを用意した。グラフィックスカードやHDDなどの条件はできるだけそろえるようにしている。
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