ソルダムの「ALCADIA X-1」は、「デュアルストラクチャ」と呼ばれる仕組みを採用した意欲作PCケースである。
「デュアルストラクチャ」とは、ケース側面が二重構造になっていて、その中にパーツ類を収納することで、冷却性能を保ったまま、高い静音性を保つしくみだ。
たしかに、昨今のハイエンドPCが発する騒音は「高性能だから」という言いわけが通用しないくらい凄いものがある。そうした環境に対してこの二重構造がどれほど有効なのか、実際に「うるさい」パーツを組み込んで調べてみたい。
うるさいパーツを密閉容器に閉じこめて騒音を軽減させるという発想は、ことさら目新しいものではない。HDDケースではわりとお馴染みだし、特殊な例では低消費電力の組み込み型PCを密閉ケースに組み込んだものもある。
しかし、最近のように発熱量の多いCPUやグラフィックスカードを密閉容器に閉じこめたらどうなるか、火を見るより明らか……というか、実際に火を見るかもしれないし、そうでなくとも高熱によってパーツが傷むおそれがある。
そこで、通気を確保しつつ遮音するために、ALCADIA X-1では二重構造が採用されたというわけだ。
それではALCADIA X-1の構造を見てみよう。
外観は普通のPCケースとさほど変わりはない。後部にある排出ダクトがやや目立つくらいで、特別な仕掛けが施されたケースだという雰囲気は皆無である。WiNDyのPCケースらしく仕上がりは悪くない。オールアルミのPCケースだから、電源ユニットレスの状態だと、片手で持てるほど軽いのだが、それにも関わらず雰囲気はなかなかに重々しい。
PCケース側面のパネルを外すと、内側にもう一枚アルミのパネルがある。マザーボードをこちらから入れるために、このパネルは簡単に取り外せる。取り外し可能なこのパネルには、直径センチの冷却ファンが取り付けられていて、このファンでCPUを冷却する。なお、反対の側面は同じように二重構造になっているものの、こちらの内側パネルは簡単に外せない。
ALCADIA X-1へ取り込まれる空気の動きは、おおまかにいってサイドから吸引されてCPUを直接冷やす流れと、2つのパネルの隙間を通って前面から吸い込まれる流れに分けられる。
一方、外へ排出される空気の動きは、拡張スロットを通って外へ出て行く流れと、電源ユニットを通って外へ出て行く流れの2つ。側面後方のスリットから前面を通り、再び背面に排出される構造を、同社では「リアインテーク・リアエキゾースト機構」と呼んでいるが、この機構には、アルミでできた側面パネルの間を通過することで、ケース全体を冷却する効果もあるらしい。
内部から排出される空気は、背面の冷却ファン、あるいは電源ユニットのファンを通って外へ出る。この排出部分もダクトを使った凝った作りになっている。
電源ファンなどの静音化に、背面ダクトが効果を発揮することは以前より知られているので、ALCADIA X-1にもダクトを付けたのは当然のことと思う。ALCADIA X-1は背面に排出のためのファンもあるので、電源ユニットと一緒にこれを覆うのも妥当な措置であろう。
しかし、このダクトの内側を見るとびっくりする。まるでフォーミュラカーのウィングである。じっくり観察すると、さほどエアフローに効果的とも思えない構造だし、PCから排出する空気に「剥離」や「乱流」の影響などあるのかどうかわからないが、そんなこと関係なく「気合い」を感じる。もちろん、実利的な面でも内部に張ってあるので、それなりの効果はあるだろう。
このように、空気を吸入する部分も排出する部分も直接外部には暴露されていないので、内部で発生する騒音の伝播が弱められるような構造になっている。過剰と思えるほどに念入りに作られたこのPCケース。はたしてどれほどの効果があるのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.