ウイリアムズのスポンサードを開始し6年め、基幹スーパーコンピュータは、2000年のAplha PWS、2001年のHPC160、次いでHPC320、ProLiant Cluster、HP Cluster Platform 4000と進化し、コンポーネント部分の精密なモデリングに必要な日数が約3日から半日に短縮された。流体力学モデルの規模は35倍にもなっていることから、結果、処理能力は約200倍にも拡大したことになる。
2005年は昨年と比較しシミュレーション能力を3倍にも強化させた。結果、昨年と同予算で大量の設計モデルをテストできるようになり、かつ対象となる設計の選択肢も増えたため、風洞実験における精度も向上した。
ウイリアムズ テクニカルディレクター サム・マイケル氏は「CFD利用による予測機能が、2005年シーズンでの新たなFIAルールの意味を評価し、広範囲な仕様を検討するためになくてはならないものだった」と述べる。
ウイリアムズFW27は7月に行われたフランスGPで、サイドポッド、ガイドベーン(ボディ上部にあるダクトのような導入羽)といった車体表面の7割にもおよぶ、大きな空力学的リニューアルを行った。これは2つのCFDシミュレーションを実行し、設計、モノコック開発を構想からテストも含めて2か月で完了させたものという。
なおCFDだけでなく、F1はFIAレギュレーションにより厳しいクラッシュ・構造テスト審査に合格し、その基準を満たしておかなければならない。衝突状態で各種部品・材料がどのように反応するかといった予測や、もっとも復旧力のある・安全性のある設計をより高速に、低コストで行えるかといったシミュレーションも行われている。
またFW27は、今回の日本GPで新たなデザインのフロントウイングが採用されていたことに気がついた人も多いかもしれない。これも9月に構想され開発を開始、まったく新たにCFD解析し3台分を製造、この7日からの日本GPに投入されたものなのだという。レース実戦に投入できるほど完成されたものがこれだけの短期間で行えることに驚かされるところだ。
世界で最も技術力が問われるスポーツ:F1は、自動車メーカーによるエンジンや車体制御技術など自家用車へのフィードバックはよく知られているところだ。F1マシン開発そのものはもちろん、それらにもコンピュータ・ネットワークソリューションといったIT分野のテクノロジーが深く関わっているし、コンシューマPC分野にもそれはフィードバックされることだろう。
それは逆に、かつてのフェラーリのようにそのユーザーはF1を支える1人となるのではと思うと、総合ソリューションはもちろんコンシューマPCまで含めて、今まで考えなかった新たな選ぶ基準にもなるのではと言えそうだ。
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