VAIO type Aのラインアップで上位製品のみに搭載されるのがフルHD表示をサポートする1920×1200ドット表示の液晶ディスプレイだ。映像の視聴を考慮したディスプレイで発色も鮮やかだが、今回連続でレビューした3製品の中では一番しっとりとした印象だった。ちょっと暗めの照明の中で映画を楽しむのには最も適しているのではと思われる。輝度がものすごく高いということではないが、室内利用であれば不満はまずなさそうだ。
ただし、PCディスプレイとして利用するときを考えると、表示される情報量は素晴らしいもののやはりドットピッチは狭い。試用機はアイコンやフォント設定などがWindows標準のままであったが、Webブラウザもフォントサイズが標準のままではちょっとつらい。もちろん設定次第ではあるのだが、メーカー側の初期設定でも多少の配慮は欲しい所だ。
BDのコンテンツパッケージがもまだ手元にないため、映像の視聴はBD-Rに保存されたHDVの撮影映像を中心に評価した。収録されている画像は横方向に関して残念ながらディスプレイ解像度を生かせないが、明るい屋外で撮影された映像も多く比較的画質が良い。なお再生ソフトは「Inter Video WinDVD BD for VAIO」を用いている。QosmioやBIBLOにHD DVDビデオディスク再生用に付属したソフトとコアコンポーネントは同じとなるようだ。
HD映像を見ても、最初の印象からは大きくは変わらない。Qosmioの「濃密でこってり」という味付けやBIBLOの「ひたすら鮮やか」といったインパクトのある画質ではなく、もちろんPCディスプレイにありがちな冷淡な発色でもない。沈んだ黒を下地にしっかりとした色表現がされているし輝度も十分に確保されている。フルHD解像度をカバーすることもあってQosmio G30/697HSと同様、ソース画像の良し悪しもはっきりと見えてしまう傾向にあるが、絵作りが派手でない分ノイズも押さえ込まれている印象だ。
店頭販売モデルは地上デジタル放送チューナーを内蔵せず地上アナログ放送のみ対応する。このためTV機能に関しては従来製品と変わらず、10フィートGUI機能も兼ねる「DO VAIO」からコントロールする。なおVAIOオーナーメイドモデルでは地上デジタルチューナー内蔵も選択可能で、BDドライブと合わせれば地上デジタル放送を劣化のない放送画質でBDメディアにムーブできる点は、競合製品にはない特徴となる。その反面、視聴と録画に用いるソフトはピクセラの「StationTV Digital for VAIO」で、BIBLO NX95S/Dが搭載しているものとほぼ同じ。「DO VAIO」に集約された従来のTV機能とは操作性も異なる。「VAIOらしくない」ところでもある。
もっとも本製品の場合、供給されるデジタルコンテンツを楽しむためだけにフルHD対応の液晶ディスプレイを搭載しているわけではない。ハイビジョン撮影が可能なHDVカメラを発売している同社らしく、標準で導入されている「DV Gate Plus」でHDV対応機器からi.LINK接続で1440×1080ドットのHDV映像の取り込み、記録媒体への書き出しまで対応できる。同じく導入されている「Adobe Premire Elements」もハイビジョン編集に対応したバージョンで、従来のDVから取り込んだ映像などと同じ感覚で本格的なビデオ編集が楽しめる。2台搭載したHDDがストライピング状態で出荷されるのは、容量を確保するとともにファイルの読み書き量が膨大になるハイビジョン編集をより快適に行えるようにという意図もあるだろう。
HDVから取込んだり編集したハイビジョン映像をハイビジョンクオリティのままHDVに書き込んだりするほかに、MPEG2-TSファイルとしてHDDに保存してフルHD対応ディスプレイでハイビジョン再生を満喫することも可能だ。BDメディアにBD-AVフォーマットでダビングすれば、画質はそのままに汎用フォーマットで光メディアに保存してハイビジョンで再生もできる。
ただし、BDメディアへの保存に関して正確にいうと、現状のBD-AVフォーマットは今後登場するBDビデオプレイヤーやBDレコーダーでの再生互換性が保証されていないという不安はある。そうはいっても、例えばPlaystation 3などではソニーが意地でも再生互換性を確保する可能性はないとはいえないだろう。
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