これまでWindowsやLinuxの開発を行なっていた開発者たちは、“Leopard”のリリース延期によってMacデビューを果たすための猶予を得た。アップルはたびたび開発者向けのイベントを行っているが、その参加者の実に3分の1は、こうしたほかのプラットフォームの開発者だという。iPod効果でMacへ「スイッチ」するコンシューマーが増えていく中、アップルの次なる目標は開発者たちの「スイッチ」かもしれない。
Worldwide Developers Relationのトップ、ロン・オカモト副社長は、6月開催の開発者会議では、iPhoneやApple TVに興味がある人を含む、アップル市場に新規参入する開発者たちも重要なターゲットだと語る。
ITmediaによるロン・オカモト氏への独占インタビューが行なわれたのは今月前半のこと。実はアップルがMac OS X “Leopard”延期を発表するより前のことだ。6月に開催される世界開発者会議「Worldwide Developers Conference」のプロモーション用として、突如、電話インタビューのオファーがあった。
しかし、インタビュー時すでにオカモト氏の口ぶりには、Leopardのリリース延期を思わせるところがあった。WWDCでは、常に市場に出ている製品よりも1歩先のアップル技術を紹介するのが常だが、オカモト氏はこの時点で、今年のWWDCの焦点は(Leopardの次のOSではなく)Leopardそのものだと語っていた。
オカモト 今日は6月11日から開催されるWorldwide Devlopers Conference(以下、WWDC)について質問をお受けしたいと思います。ただ、質問に入る前に今年のWWDCについて全体的な話をさせてください。2007年のWWDCには、3つ、キーとなるポイントがあります。
まず1つめはMacの次期OS「Leopard」です。Leopardについては、昨年のWWDCでも紹介しました。今年のWWDCはそれに続き、Leopardのさらに詳細な部分まで立ち入り、開発者たちがこのOSの真価を発揮した製品づくりができるようにお手伝いをしたいと思います。
我々のエバンジェリズムチームは、昨年のWWDC以来、世界各地で開発者向けに「Tech Talk」というイベントを開催してきました。この流れを受け、すでにLeopard向けのアプリケーションの準備を着々と進めている開発者の方々も大勢います。
WWDCではそうした開発者の方々の製品に、最後の仕上げをしてもらう、あるいはすでに製品が完成している場合は、Leopardにより最適化し、一段高いレベルの製品に仕上げてもらう場にしたいと思っています。
――Leopard時代のMacプラットフォームで競争力をつけたい開発者にとって、WWDCは無視できないイベントになりそうですね。
オカモト その通りです。2番めのポイントは、これと少し関係しています。実は最近、Macのプラットフォームに新たに参入する開発者の数が年々増えています。
先程「TechTalk」の話をしました。ここ数カ月のTechTalkには数千人の開発者が参加しましたが、実にその3分の1が、「Macは初めて」という方々でした。Linux系開発者もいれば、オープンソース系開発者もいれば、なんとWindows系開発者もかなり大勢います。こうした方々が、いま新たにMacの開発に乗り出そうとしているのです。これは非常に重要なトレンドだと思います。
これに関連したトレンドがもう1つあります。最近、大きな企業では、TechTalkなどのイベントに来て優れたMacのプログラマーを見つけては、その人を自社に雇い、すでにいるWindowsの開発者たちにMac向け開発のスキルを教える、といったことをやっています。
そこで我々は、こうしたトレンドを反映し、月曜日にMacに新規参入する人たちのための特別プログラムを用意することにしました。あなたのバックグラウンドがLinuxであろうと、オープンソースであろうと、Windowsであろうと、このプログラムに参加すれば、Macでのプログラミングが、ほかのプラットフォームでのプログラミングとどう違うのか、どうすればとりあえず軌道に乗ることができるのかを紹介します。
――なるほど、火曜日以降はどうなのでしょう?
オカモト このプログラムに参加してもらう開発の方々は、火曜日以降はMac OSのプログラミングに必要不可欠な技術が学べる「Mac OS Essentials」というトラック(一連のセッション)に出てもらうことを勧めています。
このトラックは、すでにMac開発を始めている人たちも出るセッションですが、基本的な内容を中心に紹介します。まだMacのプログラミング経験がないという方でも、これまでにプログラミングの経験がある方なら、月曜日のセッションとMac OS Essentialsのセッションに出てもらえば、わずか1週間という短期間でMac向けの開発をするうえでの自信をつけてもらえることになるでしょう。
そこで今年のWWDCでは、特にMacの開発者だけに関わらず、ほかのプラットフォームの開発者の方々にも積極的に参加を呼びかけていきたいと思っています。
――それは楽しみですね。
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