“銘品”ブランドの上をいくiPod用スピーカー──ロジクール「AS-100」に満足する元麻布春男のWatchTower

» 2007年08月02日 08時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

 2007年6月末に発売されたAppleのiPhoneは、発売前の行列がニュースで取り上げられるなど、米国では社会現象にさえなった感がある。iPhoneが持つ1つの側面は、iPodと電話の融合だ。デジタル音楽プレイヤーとして圧倒的なシェアを持つiPodの機能を備えた携帯電話というのが、iPhoneの最も簡便で、かつ最も分かりやすい説明といえる。

 華々しいiPhoneのデビューの影で、忘れられている“もの”が1つある。それはビデオ再生機能に対応したHDD搭載フルスペックiPod(iPod Video)の更新だ。現在販売されているiPod Videoは、第5世代に相当する。現時点で動画再生をサポートしているのは、このiPod VideoとiPhoneしかない。

 このiPod Videoがリリースされたのは2005年秋のことだ。2006年秋には、価格改定と上位モデルのHDD容量が60Gバイトから80Gバイトへ引き上げるアップデートがあったものの、これはマイナーチェンジに過ぎない。2001年秋に初代がデビューして以来、基本的にiPodは毎年世代交代をしてきた(世代数と経過年が合わないのは、iPod Photoが第4.5世代といわれるため)。2006年はiPodのアップデートがなかった極めてイレギュラーな年であり、2007年もこのままいくと2年連続でアップデートがない事態になる。しかし、AppleがiPodをそこまで放置しておくとはちょっと考えにくい。

 おそらく2007年中に登場するiPodは、iPhoneのユーザーインタフェースを踏襲してくるだろう。インタフェースを踏襲するというより「OS X」を踏襲するというのが正しいかもしれない。iPhoneをつかさどるOS Xは、ARMコア上で動くGUIベースの組み込みOSとみることができる。Mac OS XとOS Xの関係は、WindowsとWindows CEの関係に似ている。iPhoneのリリースはAppleにとって、組み込み向け汎用OSが完成したという意味でもあり、これを次世代iPodに導入してくることは十分に考えられる。

次世代iPodに求められる条件とAS-100の使い勝手

 次世代のiPodがどのような製品になるにしても、Dockコネクタレベルの互換性を維持することはまず間違いないだろう。現在、Dockコネクタを利用する周辺機器が、Appleのみならずサードパーティからも数多くリリースされている。iPodが売れるからサードパーティも周辺機器を出荷し、その存在がさらにiPodの売り上げを支えるという、1つのエコシステムができあがっている。このエコシステムを壊すようなことは、サードパーティのみならず、Apple自身のメリットにもならない。

 このDockコネクタを利用した周辺機器の代表格が、“iPodスピーカー”と呼ばれる外付けスピーカーだ。最近は、ミニコンポなどでもiPodと直結できる製品が増えているが、数千円から数万円程度と比較的安価で、iPodのDockコネクタを備えてiPodに格納された音楽の再生をメインにした製品を指すことが多い。Dockコネクタのオーディオ出力は通常のアナログサウンドだから、DA変換など特別な仕組みは必要としない(デジタル出力だとDRMの問題も生じる)が、付加価値としてiPodの充電ができるようになっているものが少なからずある。

 筆者の“iPodスピーカー”はロジクールの「AudioStaton high-performance stereo system for iPod」(AS-100)だ。2006年9月に発表されながら、「資材調達の問題」から発売が延期され、ようやく2007年6月から販売が始まった製品だ。ロジクール(米国ではLogitech)というと、マウスやキーボードなどの入力デバイスがよく知られているが、1990年代からオーディオ関連事業をスタートさせており、とくに2001年の末にLabtecを買収してからはスピーカー事業を拡大している。Labtecは、ジェネラルオーディオ分野において、米国では比較的知られた会社で、PCスピーカーの分野では草分け的な存在だった。

 その最新作でもあるAS-100は、センター部にDockコネクタを備えた2ウェイスピーカーシステムで、高音部(ツイーター)と低音部(ウーファー)がバイアンプ駆動なのが特徴だ。バイアンプ駆動というのは、高音部と低音部で独立した2組のパワーアンプで駆動する方式をいう。通常のパッシブクロスオーバーネットワークにより1系統のパワーで駆動する場合に比べ、パワーアンプを高音部、低音部それぞれの特性に合わせて最適化できるのがメリットといえる。

センターにユニバーサルDockコネクタを備えるAS-100。スピーカーネットは取り外し可能
25ミリのソフトドームツィーターに102ミリのウーファーを組み合わせた2wayスピーカーシステムを採用。102ミリのウーファーはこのクラスとしてはかなり大型といえる

 AS-100にはDockコネクタのほかに、通常のアナログライン入力もあり、iPod以外のオーディオ機器も接続できるが、筐体の真ん中がぽっかりと空いてしまうため、この状態ではデザイン的にあまりよろしくない。やはり、iPodで利用することを前提とするスタイルだ。また、iPodを接続した場合、充電に加えてiPodのビデオ出力を本機のビデオ端子からパススルーして取り出すことも可能になっている。

付属の簡易アンテナ。AS-100にはFM用とAM用ループアンテナが標準で用意されているが、筆者の環境で使ったときの受信感度は「とりあえず」の域を超えるものではなかった

 このiPodの再生機能に加えて、AS-100はFM/AMラジオと時計を内蔵する。残念ながら、せっかく時計を内蔵するのにタイマー機能と連動していない。iPodに保存されている音楽やAS-100自身のラジオを目覚まし代わりにできないのは残念だ(オフタイマーはあるが、これも時計機能とは独立している)。ラジオ(アナログ放送)の音質はアンテナや機材を設置している建物などの外的要因に大きく依存するため評価が難しいが、筆者の自宅においては、付属の簡易アンテナをつないだ音は“オマケ”の域を出ないように思われた。

 ラジオも含めて、本体で行うすべての操作はタッチセンサー式のコンソールを利用する。なかなかスタイリッシュなデザインだ。ただ、ラジオのプリセットも含め、マニュアルの記述はそれほど親切ではないため、このたぐいの製品に不慣れなユーザーは戸惑うかもしれない。リモコンも付属するが、こちらはタッチセンサーではなく、通常のボタン式だ。

 iPodスピーカーとして最も重要なAS-100の音質は、同社のほかの製品と同様に、高音と低音のバランスがまとまっている印象を受ける。音楽ソースによっては、低音が若干明るく響く傾向があるようにも思うが、価格(同社オンラインストア価格で3万4800円)を考えれば、筆者としては納得がいく範囲だ。サラウンドの音場を仮想的に広げてくれる機能が過剰に効き過ぎないところも好感が持てる。

 同社の製品ラインアップ的には、ベストセラーとなった一連の「mm50」シリーズの上位クラスということになるが、mm50シリーズに比べればはるかにパワー(音量)がとれるし、楽器の数が増えても破綻しにくくなっている。一方、mm50で可能だったバッテリー駆動ができなくなったほかACアダプタも大型化した。本体のサイズも大きめのラジカセという感じなので、AS-100のデザインは持ち運びを意識していないように思われる。これも、スピーカーのサイズやバイアンプ駆動を考えれば、やむを得ないところだ。

背面のコネクタパネル。“video out”はiPod Videoからの動画データをパススルーで出力可能。電源ケーブルは直出し式で取り外すことはできない
付属のACアダプタはかなり大型だ。バッテリー駆動ができないため、AS-100を使う場所に必ず持っていかなければならないが、そのサイズは持ち運びに向いていない

 3万4800円という価格でみた場合、BOSE、JBL、クリプシュといった高級オーディオブランドのiPodスピーカーと競合することになる。ただ、これら有名ブランドによる同価格帯の製品と比べると、大口径のスピーカーユニットを採用するAS-100は、低音再生や音量の点で有利だ。最終的には利用形態や部屋の広さを考慮する必要があるが、総じて、コストパフォーマンスは悪くない。

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