中国ネットカフェの“デンジャラス”な宿泊事情山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/3 ページ)

» 2007年09月10日 08時30分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 中国では、インターネットユーザーの多くが家庭ではなくネットカフェからアクセスする。そんな、日本以上に「生活に密接した場所」であるが(もっとも、日本でも“生活そのものの場所”とする人たちが増えてきている)、その実態に関する情報は意外とない。そこで筆者は、ごく普通の庶民が利用する、中国地方都市のネットカフェに“滞在”して、その実態を店とユーザーの両者に文字通り「肉薄」してきた。

 中国に存在するネットカフェは星の数ほどあり、統計によれば、ネットカフェの利用者も数千万人という単位であるため、筆者が利用したネットカフェの内容や接したユーザーの姿が、中国のネットカフェ事情をすべてであるとは言い切れない。学術的に意味のある調査、もしくは中国社会の深層にメスを入れる社会派リポートではなく、あくまで、筆者が取材した地域におけるある1日の体験談である。

ワレ、市街地中心部のネットカフェに白昼潜入セリ

これはネットカフェに違いない!

 高層オフィスビルが並ぶ地方都市の中心部で、建物の2階に書かれた「網バ」(バは口へんに巴。中国ではネットカフェの意味になる)と「網絡会所」(NETWORK CLUB)の文字を発見した。入店したのは11時50分。営業中とは思えないほど店内の照明は暗い。しかし、設置されているPCの3分の1に人がいるようだ。彼らは黙々とPC端末に向かい、ゲームやストリーミングコンテンツを楽しんでいる。

 PCがずらりと並ぶ店内の一角に、お菓子やジュースを販売するカウンターらしきものがあって、そこに2人の女性店員がいた。利用者が店を出るときには、そこで料金の清算を行っている。どうやら、そこは受付も兼ねているようだ。早速、筆者もそこにいる店員に「我要上網」(ウォーヤオシャンワン:インターネットを利用したいのですが)と聞いてみた。店員は、利用者リストと思しきノートを提示して、そこに「個人情報」を書けとうながしてくる。うながされるまま、名前と身分証明書番号(外国人ならパスポート番号)を書いた。書き終わると店員は「押金10元」(ヤージン、シークワイチェン:デポジット10元を払ってください)というので10元を支払うと、「随便座」(スイビェンツゥオ:すきなところに座ってください)の言葉とともに、ユーザー名とパスワードが書かれた紙切れを渡される。これで受け付けの手続きは完了する。

 日本のマンガ喫茶のように「どんな席がいいですか?」「何番の席です」というプロセスはなく、「金を払ったら、適当に席についてください」という利用方法なのである。筆者は周囲が見渡しやすい場所に陣取り、PCを立ち上げ、手渡された紙切れに書いてあるユーザー名とパスワードを入力して、ログインした。

使えるかもしれない中国語:受け付け編

日本文:インターネットを使いたいのですが?

中文 :我要上網

発音 :「うぉー、やお、しゃんわん」

日本文:デポジット10元を払ってください

中文 :押金10元

発音 :「やーじん、くわいちぇん」

日本文:すきなところに座ってください

中文 :随便座

発音 :「すいびぇん、つぅお」

(ちなみに、中国語の発音を日本語で表記するのは非常に困難。正確には、ピン音や声調符号を組み合わせて表記されるが、これも習得が難しいとされている。というわけで、この記事では、読みやすいが“ひょっとすると使えないこともない”ひらがなで発音を表記しておく)


 席と席の間に仕切りはなく、日本のネットカフェに比べて1人あたりのスペースが狭い。お互いの距離感を大事にする日本人には、仕切りもない狭いスペースでPCを延々と使うのは厳しいのではないだろうか。日中に入店したおかげで、利用者が比較的少なかったのは幸いだった。

受付の周りを多数のPCが取り囲んでいる
昼の時間なので利用者はまだ少ない

 ただ、店内に人が少なければ心地よく滞在できるかというとそうでもない。まず、喫煙席と禁煙席という区分けがないため、運が悪ければ禁煙者と喫煙者が隣り合わせになって昼間から利用者が騒いでいることがある。また、店員が“ある一定のエリア”を巡回していたりして、これまた、慣れないとどうにも落ち着かない。

 筆者も店内をぐるりと巡ってみたが、その店内の広さにただただ驚いた。オフィスビルの1フロアが丸ごとネットカフェとなっており、通路を歩いても歩いても途切れることなくPCが設置されているのだ。筆者が利用したのは「一般席」だったが、広大な店内には「カップル席」や「個室」など、多種多様な席が用意されていた。受付で確認すると、利用する席によって値段が違うという。先ほど紹介した利用手続きでは、利用する席について何も聞かれていないのだが、どうやら、ログインしたPCで場所を判断しているようだ。

 筆者が見た「カップル席」には「男女」もいるにはいるが、その多くは「男男」で映画を見ていた。カップル席には、日本の寂れたスナックを想像させる古びたソファがおいてある。どうもPC以外にはお金をかけていないようだ。ネットカフェ利用者の男女比は、全般的に女性利用者が少ない。とくに廉価な一般席において男性客が圧倒的だ。

 12時10分。巡回していたスタッフが、食事を盛り付けた皿を一部の利用者に配っている。ネットカフェの食事はどんなものかと、筆者も巡回スタッフを呼びとめ「我要吃飯」(ウォーヤオチーファン:食事したい)」とお願いしてみた。そのランチプレートの価格は6元(100円弱)で、メニューは1種類だけ。一緒に飲み物も受付で購入した。筆者が選んだのは、中国でどこでも手に入る「統一」というメーカーの「鮮橙多」オレンジジュースだ。なお、中国で作られているソフトドリンクの多くはとても甘いので注意されたし。食べ終わった食器は、そのまま机に置いておけばいい。巡回するスタッフが回収してくれる。

料金の高いソファ席は少数の「男女」と多数の「男男」が利用していた
6元の食事と3元のオレンジジュース

使えるかもしれない中国語:お食事編

日本文:食事をしたいのですが

中文 :我要吃飯

発音 :「うぉー、やお、ちーふぁん」


 昼の時間だからだろうか、利用者には、中国株を専用ソフトで取引するデイトレーダーや、地図サイトを確認するビジネスマン、携帯電話代わりにチャットソフトで連絡をとる女性などが散見された。筆者がその店に滞在している間、ゲームをしていた利用者は、そのほとんどが長時間PCにかじりついていたが、これらのビジネス目的と思われる利用者は数十分から1時間程度で店を出ていた。

 「午後のひととき」が過ぎて間もなく夕方になるあたりで、筆者も店を出ることにした。利用料金は1時間当たり2元(30円強)。3時間いたので7元(100円強)かかっているが、受付で支払っているデポジットの10元から利用料金の7元をひいた3元が手元に戻ってきた。

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