System 7で幕をあけた激動の1990年代(後編)林信行の「Leopard」に続く道 第5回(2/4 ページ)

» 2007年10月29日 11時45分 公開
[林信行,ITmedia]

GomTalkとWorldScript

 数々の先進機能を備え、外観も大きく違うSystem 7は、Macユーザーにわくわくとした夢を与えるOSだった。ただし、多くのユーザーが利用したいと考えていたが、最初のバージョンSystem 7.0は、英語でしか提供されなかった。というのも、後にSystem 7.1というアップデートで、世界各国語に対応させる「WorldScript」という機能の搭載が予定されていたからだ。

五明正史氏のサイト「Gom Software」。いまでも「GomTalk7 v1.3」がアップロードされている

 しかし、それを待てないユーザーも大勢いた。そんな中、五明正史氏が開発した「GomTalk」と呼ばれる伝説のフリーウェアが登場する。

 System 7の一部を改造し、System 6に付属の日本語フォントを組み合わせることで、英語版System 7上で無理矢理日本語を使ってしまうというものだったが、当時、熱狂的なMacユーザーの間では、このソフトが大流行した。

 もっとも、アップルが翌1992年8月のMacWorld Expo/BostonでSystem 7.1をリリースすると、このGomTalkも無用の長物となってしまう。System 7.1では、アラビア語やヘブライ語、ロシア語などの入力ができるWorldScript Iと日本語、中国語などの入力ができるWorldScript IIの機能が搭載されたのだ。

 この機能が搭載されるまで、Mac OSは、まずは英語版が作られ、それを日本語用にローカライズしていた。このため日本語版が出てくるのはいつも数カ月遅れで、しかも場合によっては互換性で問題が生じることもあった。しかし、WorldScriptが搭載されたことで、Mac OSは世界中どこで発売されているOSでも、OSの基本部分は同じ、ということになったのだ。

 後にアップルは海外仕様のMac OSに日本語機能を追加する「Japanese Language Kit」、中国語を追加する「Chinese Language Kit」、アラビア語の「Arabic Language Kit」、ロシア語などを扱えるようにする「Cyrillic Language Kit」などの別売を開始する。

 1つのOSで、これだけいろいろな言語を扱えることは、大きな強みだ。世界70カ国以上で展開する雑誌「Readers Digest」などはこの点を評価してMacを大量導入した。

 ちなみに現在のMac OS Xは、これをさらに押し進めて、たった1種類のパッケージで全世界をカバーしているのはご存じの通りだ(フランスで買ったMac OS Xも韓国で買ったMac OS Xも、パッケージが違うだけで、中身も発売日も同じだ)。

Mac OS関連用語

GomTalk、WorldScript、Japanese Language Kit


漢字Talk 7.1――ディスク26枚構成のヒミツ

 System 7.1の日本語版は「漢字Talk 7.1」と名付けられた。同OSを買ってパッケージを開いた人は、まずフロッピーディスク26枚組という構成に驚かされた。

 今日のMac OS Xは、ヒラギノという美しい書体の標準添付が特徴となっているが、漢字Talk 7.1は、標準環境だけで、日本語の文書を美しい文字で書き表せるOSで、7種類の日本語アウトラインフォントが付属していた。

 System 6まで、Mac OSにはビットマップフォントを表示する機能しかなかった。ビットマップというのは、あらかじめ決まったサイズでしか表示できないフォントのことだ(無理矢理大きなサイズで表示しようとすると、ひどいギザギザになる)。

 Adobe Systemsが開発したPostScriptという技術に対応するプリンタを持っていれば、印刷した時だけきれいに文字が表示される。アップルはこのPostscript技術を提供するAdobeや、「PageMaker」というレイアウトソフトを作るAldusと組んで、Desktop Publishing(DTP)という巨大な市場を築いた。

 DTP市場では、PC用フォントが非常に高い資産価値を持つようになっていったが、この市場はAdobeがほぼ独占しており、PostscriptのライセンスもAdobeが押さえていた。

 こうした状況に危機感を感じたアップルは、マイクロソフトと手を組み、Adobeの技術に対抗する「TrueType」というフォント技術や、Postscript対抗の「TrueImage」という技術を開発する。

 TrueImageは結局ほとんど陽の目を見なかったが、一方のTrueTypeはSystem 7から採用され、7種類のTrueTypeフォントが標準添付となった。

 これにあわせるように漢字Talk 7.1では、リョービの提供する本明朝、丸ゴシック、平成明朝、平成ゴシック、モリサワ提供の細明朝(リュウミンライト)と中ゴシック(中ゴシックBBB)、そしてアップルのOSAKAフォントの計7種類の日本語TrueTypeが付属することになり、これがフロッピーディスク26枚組という驚きのパッケージ構成を生み出したのだ。

Mac OS関連用語

関連キーワード:TrueType、TrueImage、Type 1、ATM(Adobe Type Manager)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月14日 更新
  1. きょう発売の「MacBook Neo」、もうAmazonで割安に (2026年03月11日)
  2. 新品は絶滅、中古は高騰──「令和にMDを聞きたい」と願った筆者が、理想の再生環境を整えるまでの一部始終 (2026年03月13日)
  3. M5 Max搭載「14インチMacBook Pro」がワークステーションを過去にする 80万円超の“最強”モバイル AI PCを試す (2026年03月13日)
  4. セールで買った日本HPの約990gノートPC「Pavilion Aero 13-bg」が想像以上に良かったので紹介したい (2026年03月11日)
  5. 12機能を凝縮したモニタースタンド型の「Anker 675 USB-C ドッキングステーション」が27%オフの2万3990円に (2026年03月11日)
  6. 3万円超でも納得の完成度 VIA対応の薄型メカニカルキーボード「AirOne Pro」を試す キータッチと携帯性を妥協したくない人向け (2026年03月12日)
  7. ワコム上位機に肉薄? 10万円で18.4型4K! 高コスパ液タブ「GAOMON Pro 19」の長所と弱点 (2026年03月13日)
  8. 「MacBook Neo」を試して分かった10万円切りの衝撃! ただの“安いMac”ではなく絶妙な引き算で生まれた1台 (2026年03月10日)
  9. 高音質・良好な装着感・バッテリー交換式――JBLのフラッグシップ「Quantum 950 WIRELESS」は妥協なきヘッドセットか (2026年03月12日)
  10. 10万円切りMacが17年ぶりに復活! 実機を試して分かったAppleが仕掛ける「MacBook Neo」の実力 (2026年03月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年