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» 2010年10月25日 08時00分 UPDATE

「スキャン代行サービス」大研究:スキャン代行サービスの現状と内容比較 (1/3)

電子書籍の普及に伴って台頭してきた「スキャン代行サービス」。この代行サービスを取り扱う短期連載の第1回は、サービスの現状をまとめつつ、各社サービスの内容を比較する。

[eBook USER特別取材班,ITmedia]

スキャン代行サービスがなぜ今話題なのか?

 今年2010年にネット上で話題になった新しいビジネスの一つに「スキャン代行サービス」がある。手持ちの書籍をダンボールに詰めて宅配便で代行業者に送付すると、のり付けされた部分を裁断し、スキャナでPDFまたはJPEGなどのデジタルデータに変換、電子書籍端末で読める形にして届けてくれるというサービスだ。

 これまでもオフィス文書を対象にした電子化サービスは存在していたが、2010年に台頭してきたこれらスキャン代行サービスの特徴は、ターゲットが主に個人ユーザーであり、また対象となるのが「書籍」である点が、従来とは大きく異なっている。裁断機とスキャナを用いた書籍の電子化作業は一般に「自炊」と呼ばれるが、これらのサービスは自炊の作業をまるごと代行してくれるというものである。

iPad Appleの「iPad」。電子書籍を読むこともできるが、日本語の電子書籍タイトルは潤沢に用意されているとは言い難い

 スキャン代行サービスが登場する直接のきっかけとなったのは、米Appleから発売されたタブレット端末「iPad」だろう。iPadは電子書籍リーダーアプリの「iBooks」や配信ストアの「iBookstore」を武器に電子書籍端末としての利用もうたっているものの、日本の出版社がこうした海外の配信プラットフォームに対して慎重な姿勢を崩していないこともあり、ユーザーが読みたい書籍を自由に選んで読めるという状況からはほど遠い。そこで既製の電子書籍に頼ることなく、自分で書籍をPDFに変換してiPadに転送し、読む動きが広まったというわけである。

 マクロミルが6月に発表したiPadの利用動向調査では、iPadの用途で最も多いのは「Web閲覧」、次いで「電子書籍の閲覧」とされており、iPad所有者の約2割が“自炊”をしたことがあるという結果も出た。

 自炊のメリットは単純に「iPadで書籍が読める」という以外にも、書籍の置き場所が不要になる、OCR処理することで全文検索が可能になる、持ち運びが容易、などさまざまだ。こうした自炊作業を行ってくれるスキャン代行業者は、現在では数十社を数えるまでになっており、著名な業者では納品まで数カ月待ちという状況も発生している。

 本稿では、こうしたスキャン代行サービスの現状を紹介しつつ、サービス内容の比較分析を数回に分けて実施していく。

サービス内容はほぼ横並び 最近は業者ごとの独自色も

 スキャン代行サービスの先陣を切ったのは、合同会社大和印刷が提供する「BOOKSCAN」だ。2010年4月に発表されたこのサービスの反響を受けて類似のサービスが次々と発表されたことが、現在の競争過多の状況につながっている。興味深いのは、多くのスキャン代行業者がBOOKSCANとほぼ同様のサービス内容、価格を掲げており、注意事項の文章までそっくりという例も数多く見られる点だ。

tnfig2.giftnfig3.gif BOOKSCANのホームページ。作業の様子が写真で紹介されているページも

 以下の表は、ランダムに抽出したスキャン代行業社4社、およびBOOKSCANの計5社について、サービス内容を比較したものだ。細かな違いはあるが、価格を決定する要因やオプション項目が非常に似通っていることがお分かりいただけるだろう。

tnfig4.gif スキャン代行業者のサービス内容を比較したもの(10月18日現在。納品方法の有償・無償の種別など、一部付帯条件については省略している場合がある)

 各社のサービスが似通っているのは、先行するBOOKSCANを手本とした、ということもあるだろうが、各社が用いている裁断機およびドキュメントスキャナなどの機材がほぼ同一であることも大きな理由だと推測される。業者によっては100万円クラスの業務用スキャナや、書籍を90度開いた状態で読み取れる特殊なスキャナを導入している場合もあるが、多くはコンシューマーレベルでも入手可能なPFUのドキュメントスキャナ「ScanSnap」を用いているようだ。つまり、競合他社と技術的な差別化は難しく、価格を下げるか、もしくは他業者が敬遠する読み取り困難な書籍にまで守備範囲を広げるしかないというわけだ。

 実際、後発の業者の幾つかは、BOOKSCANをはじめ初期に登場した業者が非対応の「表紙カバーのスキャン」や「雑誌のスキャン」に対応している。これは、手間が掛かるなどのリスク要因から先行業者がサービスメニューに盛り込まなかった作業のうち、ユーザーニーズを見出した後発の業者が、差別化という意味も含めて手間を掛けて対応していると推測される。

 ちなみにこれらのスキャン代行業者は、個人が営んでいる場合も多い。今回の取材に当たってリストアップした約30社のうち、最も多かったのは「個人事業主」で13社、次いで「株式会社」が11社だった。このほか、有限会社の中にも実質個人と思われるケースが多く、個人が内職に近い形で請け負っている場合もあるようだ。なお、株式会社の形態で行っている業者には、ホームページ制作業者が別事業として行っているケースが多く見られるのが面白い。

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