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» 2012年09月19日 10時00分 UPDATE

それは刷新という名の飛躍――iPhone 5が、“iPhoneの創りだした世界”を塗り替える (1/4)

2年ぶりの前面刷新となった「iPhone 5」は、iPhone 4からデザインが大きく変わっただけでなく、機能面でも飛躍的な進化を遂げている。iPhone 5がどれだけ新たな価値を作りだしたのか、じっくりと紹介しよう。

[神尾寿,ITmedia]

 Appleはどれだけ“新記録”を打ち立てれば気が済むのだろうか。

 9月12日(現地時間)に発表された「iPhone 5」が、米国では24時間で200万台の予約を獲得した。先の「iPhone 4S」の時の米国での予約数は、24時間で100万台。iPhone 5の予約獲得は史上最速の滑り出しであり、Appleは新記録をもって、これまでどのAndroidスマートフォンでも上回れなかったiPhone 4Sの記録を塗り替えた。

 iPhone 5への期待が高まるのは当然だ。

 既報のとおり、今回のiPhone 5はデザインからすべてが一新されたフルモデルチェンジであり、ハードウェアとソフトウェアの両面においてドラスティックなまでに進化している。その飛躍のレベルで言ったら、「iPhone 3GS」から「iPhone 4」へのモデルチェンジを超えるものになっているのだ。

 筆者は今回、このiPhone 5の日本発売に先立ち、じっくりと利用し、試す機会を得た。iPhone 5がどれだけ新たな価値を作りだしたのか。それを見ていきたい。

PhotoPhoto iPhone 5 ホワイト&シルバー

精緻で美しく実用的 iPhone 5が作ったデザインの新基準

 パッと見は“紛れもないiPhoneのシルエット”でありながら、iPhone 5を手に取ると、めまいにも似た驚きを感じる。ガラスと金属による高精度で精緻な造形が、目で見て、手で触れた時に、その高品位さを控えめに、しかし確実な存在感を持って主張するからだ。

 iPhone 5では前面がガラスであることは従来通りだが、背面に酸化皮膜処理を施したアルミニウム6000を採用。全体的には金属部分の反射を押さえて、とても高級な見た目と質感を実現している。iPhone 4/4Sの時にも側面のアンテナ部分が金属だったが、iPhone 5ではアンテナ部分も含めて金属面はマットになっており、上品かつ上質な感じだ。金属面が合わさる部分は丁寧に磨き上げられ、面取りされている。さらに本体下部のマイク / スピーカー部分やイヤフォンジャック部分、側面のボタン類も、まるで金属加工の工芸品ような美しさだ。iPhone 5がApple Storeではなく、MoMA(ニューヨーク近代美術館)に飾られていたとしても、誰も疑うことなくうっとりと見入ることになるだろう。

PhotoPhoto 前面はガラス、背面は酸化皮膜処理を施したアルミニウム6000を採用したボディ

 そして、美しいだけでなく、スマートフォンとして実用的なデザインでもある。

 周知のとおり、iPhone 5では新たに4インチのRetinaディスプレイを搭載し、デザインを大幅に刷新した。しかし、それを実際に手にして感じるのは、「今までよりもよりコンパクトに、より自然に手になじむようになった」という感覚なのだ。筆者はもちろん、手の小さな妻でもiPhone 5を無理なく使うことができた。

 この“コンパクトさ”の要因としては、横幅を58.6ミリと60ミリ以下に抑えた上で、厚さをiPhone 4Sの9.3ミリから7.6ミリに薄型化し、重量を112グラム(iPhone 4Sは140グラム)と大幅に軽量化していることが大きい。スリム化と軽量化で、手の中での収まりがよくなったのだ。これにより片手操作時のホールド位置を今までよりやや上にずらせば、左上のボタンにも無理なく指が届く。ディスプレイを大型化しながらも、持ちやすさや使いやすさを犠牲にしなかったiPhone 5のデザインは特筆すべきものだろう。

PhotoPhoto Lightningコネクタやイヤフォンジャック周りの処理、金属面とガラス面の継ぎ目などの加工も美しい
PhotoPhoto 左がiPhone 5、右がiPhone 4S。イヤフォンジャックは本体上部から下部に移動。側面の印象もよく見るとだいぶ変わっている
PhotoPhoto 左がiPhone 5、右がiPhone 4S。左の写真が左側面、右の写真が右側面。縦に伸びて、薄型化している様子がよく分かる
PhotoPhoto ちなみにSIMは従来のMicro SIMではなく、さらに小さいNano SIMを採用する

 iPhone 5のデザインを子細に眺め、そして触れていると、“スマートフォンのデザイン基準”が再び大きく引き上げられたことが分かる。金属加工の精度と質感の高さ、歪みや継ぎ目のまったく見られない精緻さと美しさ、持ちやすさ・使いやすさのさらなる向上。iPhone 5のデザインは他のスマートフォンを大きく引き離し、新たな基準を作ったのだ。

新Retinaディスプレイは大型化より見やすさ向上に注目

Photo 4インチに大型化したRetinaディスプレイにも注目

 そして、今回のiPhone 5で注目の的になっているのが、新たに採用された4インチのRetinaディスプレイだろう。周知のとおりiPhoneは、初代からiPhone 4Sまでかたくななまでに3.5インチのディスプレイサイズを貫いていた。これは主に“片手での持ちやすさ”を優先したためであり、サイズは変えない一方で、iPhone 4では視認性を重視して高解像度のRetina(網膜)ディスプレイを採用している。しかし、今回は多くの技術革新により、横幅を変えず、スリム化・軽量化を実現できる目処が立ったことで初めてディスプレイサイズが4インチに大型化されたのだ。

 この4インチディスプレイの解像度は640×1136ピクセルであり、先代と比較すると縦に176ピクセル分長くなった。より分かりやすく言えば、ホーム画面のアイコンが縦一段分増えている。Safariやメールなど、すでにiPhone 5対応したアプリでは、4インチディスプレイに合わせて縦の情報量が増えており、確かに今までよりは見やすい。また詳しくは後述するが、地図やナビゲーションでも4インチで画面サイズが増えた恩恵は確かにある。

 だが、筆者がこの4インチディスプレイで大型化よりもさらにメリットが大きいと感じたのは、明るさ・鮮やかさ向上の方だ。

 iPhone 5ではタッチパネルセンサーを液晶パネルと一体化させる「インセル型ディスプレイ」技術を用いることで、ディスプレイユニットを大幅に薄型化している。また、この技術の副産物としてディスプレイを構成する層が1つなくなることで、従来のディスプレイよりも明るく・くっきりと画面が表示されるようになったのだ。その違いは目を見張るほどだ。なにしろ、これまでスマートフォンの中でも最も美しいと感じていたiPhone 4/4Sのディスプレイが、iPhone 5を見た後では「なんか、ぼんやりとしている」と感じてしまうほどなのだ。

 もちろん今後、4インチの画面サイズを生かしたアプリが増えることで、大型化という面でもユーザー体験の向上が進むとは思う。だが現時点で、iPhone 5の新ディスプレイで魅力的なのは、くっきりと見やすいという点の方である。これはぜひ、実機で確認してほしいポイントの1つだ。

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