月額10ドル(約930円)で容量無制限のオンラインストレージサービス「Bitcasa」が正式にリリースされた。
容量無制限のオンラインサービスは今までにもあったが、そのほとんどは「バックアップ」としての用途が主で、「手元に置いてあるデータを無制限にバックアップできる」というものだった。そのため実際の利用量上限はローカルのHDD容量となり、純粋な意味での「無制限」ではなかった。
2008年4月にはHPが「HP Upline」という、用途を限定しないオンラインストレージサービスを始めたものの、パフォーマンスが目に見えて落ちていき、同月中にサービスを停止している。はっきり言えば「大失敗」のプロダクトだった(“タダ”で幸せになるソフトウェアパラサイト 第8回:無限のオンラインストレージで幸せにな……りたいな)。
しかし、今やオンラインストレージを取り巻く環境は大きく変化した。50ギガバイト程度までなら無料のサービスも複数あるし、HDDの約1/6程度の単価で利用できる超低価格のものもある。だが、それでも従量制と定額制の間には、需要を読み切れるか、それに応えるための設備投資をし続けながら利益を上げられるか、という大きなハードルがあるはずだ。
そこに挑戦すべく登場したのがBitcasa社の「Bitcasa」とCloud Engines社の「Pogoplug Cloud」である。どちらも若いベンチャー企業によるサービスだ。5年前と比較するとインフラ、ストレージが充実したことで単価は下がっているものの、その分個人のデータ利用量も増加している。果たしてこれらは、「無尽蔵にストレージを使いたい」「今録り貯めている動画コンテンツをすべて閲覧するだけでも百年以上かかる」というユーザーに耐えうるサービスなのだろうか。
今回はBitcasaとPogoplug Cloud、2つのサービスを比較しながら、容量無制限・定額オンラインストレージサービスの活用方法を考えていくことにしよう。
定額制とはいえ、毎月、あるいは毎年のランニングコストが発生する以上、支払いが発生する前に実際に使えるかどうか、自分の環境で試してみたいと考えるのが普通だろう。その点、Bitcasa、Pogoplug Cloudともに無料プランがあるので、まずはアカウントを作成し、使用感をみてみるとよい。利用できる容量はBitcasaが10Gバイト、Pogoplugは5Gバイトだ。Bitcasaは容量無制限でも14日間のフリートライアルが可能となっている。
申し込みは各サービスのサイトから行うが、Bitcasaは日本語ページが用意されていないので以下で詳しく説明しよう。
アカウントを作成したらBitcasa、Pogoplugとも専用アプリケーションをインストールしておく。そうすることでどちらのオンラインストレージも一般的なWindowsアプリケーションから利用できるドライブとして認識される。
Bitcasaは容量7.99Eバイト(エクサバイト=100万テラバイト)のリムーバブルディスクとして認識される。ファイルシステムは独自形式のBitcasaだ。一方、Pogoplug Cloudはローカルディスクとして認識される。ファイルシステムはFAT32となっているが、そもそも容量が100Tバイトだったり、4Gバイト以上のファイルが書き込めたりするなどFAT32の制限はないようだ。
両者とも通常のローカルディスク、リムーバブルディスクとは異なる仕組みのために制限がある。Bitcasaはコマンドプロンプトからはディレクトリが見えない(移動、作成、削除はできる)。Pogoplug Cloudはルート直下にファイルを置いたり、フォルダを作ったりすることはできず、あらかじめ作成されている「\Pogoplug Cloud」というフォルダ以下にファイルを作成するようになっている。そのためにルートディレクトリ、もしくはそこにテンポラリディレクトリを作成する通常のベンチマークソフトは軒並み利用できなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.