改善に向かって進み始めた「iOSの地図」ひっそりと

» 2013年03月12日 19時44分 公開
[林信行,ITmedia]

iOSの「地図」がアップデート

 改善点は以下。

  • ナビゲーション中の道路名の発音の改善
  • 広い道路のルートと狭い道路のルートがある場合、広い道路ルートを優先的に案内
  • 有料道路があるときはルート案内中に通知
  • 交通機関の駅ビル、地下鉄線を追加
  • 高速道路の色をグリーンに変更
  • 消防署、病院、郵便局などのアイコンを変更
  • 東京駅、皇居、東京タワーを含む3D画像を追加

 ただ、これはアップルがニュースリリースを出してうたっているものではなく、2012年に同社ティム・クックCEOが「私たちはマップが極めて高い水準に達するまで、絶えず努力を続けていきます」と約束して始まった改善の一端が、ようやく見える形になった程度、という理解でいいだろう(関連記事:Apple、iOS 6の地図アプリデータを大幅改善 「パチンコガンダム駅」消滅)。

 地図サービスは一朝一夕に作れるものではない。少しはマシになったこの地図も、アップルやテクノロジーが好きな人には勧められるものの、そうでない一般の人々には、まだそれほど強くお勧めできるものとは言えない。むしろ、iPhoneやiPadには、ほかにも素晴らしい地図アプリやナビゲーションアプリがたくさんあることを知ってほしいと思う。

 具体的には、ただ地図を見るのであれば、航空写真やストリートビューも備え、歩行ナビ機能もかなり充実したグーグルの「Google Maps」。有料ではあるが、ある場所から別の場所まで、歩き、タクシー、電車といったあらゆる移動手段の中で「最も速い」方法、「最も安い方法」、「最もエコな方法」、さらには「最も雨に濡れない方法」まで分かるナビタイムの「NAVITIME」、またARの技術をうまく融合した「Map Fan eye」といったアプリがお勧めだ。

 だが、iOS 6の地図も、ほかのアプリが何らかの理由で使えないとき、緊急時の代用として現在地を確認するといった使い方なら十分間に合うレベルになった、というのが今日、iOS 6の地図で話題になっている変更の本質だろう。

 標準地図に残された問題はまだいくつかある。NAVITIMEなどの国内サービスと比べると、まだまだSiriの音声にも進化をしてほしいし、有料道路の値段が高い日本では、そもそも有料道路を使うか使わないかはナビ検索をかける前に指定が必要だ。

 検索にしても「新宿」で検索した場合、日本人だと新宿駅が出てくるのを期待するが、新宿区の真ん中辺ということなのか、新宿7丁目あたりが自動的に選択される(Googleでは日本のエンジニアが、米国本社のエンジニアを日本に何度も呼んで生活をさせ、東京人は地名で検索した場合、駅が中心に表示されることを期待しているとさんざん刷り込んで、そういう仕様にした。これがGoogle Maps前身のGoogle Localが出てから数年後のことだった)。

3Dモデルが改善されている。なお、「新宿」で検索すると新宿7丁目周辺が選択されてしまう……

 駅などの扱いにしても「恵比寿駅」が2つあり、検索すると真ん中辺りに検索結果のピンが立つ。駅が2つあるのは、実際にJRの恵比寿駅と日比谷線の恵比寿駅と、2つの恵比寿駅があるためだ。それぞれが離れているので正解と言えば正解なのだが、一方で「東京駅」を検索すると、検索結果として出てくるのはJR東京駅ど真ん中あたりの1個だけ(ただ、京葉線や丸ノ内線の東京駅も実は印としては記されている)。「武蔵小杉駅」で検索すると、かなり離れた東急の武蔵小杉駅とJRの武蔵小杉駅の真ん中辺りのショッピングセンターにピンが表示される。京急蒲田駅は「蒲田駅」で検索しても出てこず、「京急蒲田」と入力して検索しないと見つからない。どういう基準でまとめたり、バラしたりしているかのルールも確立されていないようだ。

「恵比寿駅」と「東京駅」で検索してみた。iOS 6の地図には、問題を報告する機能もあるので、表示がおかしなカ所を発見した人はアップルに教えてあげよう

 3Dモデルも、東京タワーやスカイツリーの3Dデータがリアルになったのはうれしいが、iOS 6の地図で一番の売りだったはずのフライオーバー(ヘリコプターから撮影した写真を重ねる)に対応したわけではない。こうした日本固有の問題に加えて、iOS 6の地図アプリそのものの使い勝手にも不満は多い。

 筆者が一番気になるのは、自動車のナビ中に地図のズームアウトやスクロールができないこと。車を運転していると、赤信号などで止まった際に、次の道を曲がってからどれくらいの距離をまっすぐ走るのか確認したり、周囲に立ち寄れるコンビニがないかを探したりと、ナビを継続させながらも、それとは非連動で周囲の地図が見たくなることがある。しかし、残念なことに今のiOS 6の地図アプリでは、地図表示モードとナビモードを完全に別モードとして切り分けてしまっており、そうした使い勝手が実現できていない。かつてのアップルに、モード切り替え操作の撤廃を訴えてきたラリー・テスラー氏がいたことを考えると、これは残念なことだ(ちなみにテスラー氏のTwitterのIDは @nomodes)。


 人の使いやすさを真っ先に考えるアップルの地図サービスということで、ユーザーのほうも当然(NAVITIMEのような)歩き/自動車/バス/電車などを含めたトータルナビでの案内を求めるだろう。アップルがこの先、地図サービスで行わなければならない改善点は多い。

 不運にもアップルの地図がインターネットで話題になったのは、改善途上の地図の変更が、ユーザーに見つかってしまったから。もちろん、そうした熱心なユーザーが地図を使ってくれれば、さらにどんなところに改善が必要かの情報も集まりやすくなるので、細かくアップデートするのは悪いことではない。

 今のところGoogle Maps以外に、世界全体を網羅した地図サービスがないことを考えれば、アップルがあえて自社で地図サービスに乗り出す、というのは非常に意義があることだ。とはいえ、応援したい気持ちはある半面、一般的なiPhone/iPadユーザーは、地図が“使える状態”になるまで、しばらくは冒頭で触れたようなほかのアプリも併用してもらえればと思う。

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