AMDは、Radeon HD 7000シリーズのフラグシップモデルとなる「Radeon HD 7990」を正式に発表した。同製品は、“New Zealand”(ニュージーランド)の開発コードネームで知られるSouthern Islandsシリーズのフラグシップモデルとして、昨年夏には市場投入される計画であった。
しかし、同一コンセプトの製品は台湾Power ColorやASUSTeK Computerから市場投入されたものの、AMD自らが、同製品をリリースすることはなかった。それが、ここにきて「Radeon HD 7990」には、新たに“Malta”(マルタ)の開発コードネームが与えられ、“Sea Islands”シリーズの一員として、市場投入された。一体、その背景には何があったのか。同社で高性能グラフィックスカードのプロダクトマーケティングを担当するデヴォン・ネケチャック氏(Devon Nekechuk, Product Manager, AMD Graphics)に話を聞いた。
Radeon HD 7990が目指したのは「シングルカード最強の座」。このため、カードの設計にあたっては、以下の3点に挙げられるこれまでの同社のデュアルGPUカードとは異なるアプローチが採られた。
1. Radeon HD 7970 GHz Editionに準じる動作クロックの実現
2. 2基あるGPUごとに独立した電源回路を搭載し、きめ細かな電力制御を実現
3. 3連ファンの採用による静音性の追求
Radeon HD 7970 GHz Edition(1.05GHz)に準じる動作クロックの実現には「GPUそのものはRadeon HD 7970と同じチップだが、製造技術の成熟により、より省電力で1GHz動作を実現できた」とネケチャック氏は説明。これにより「デフォルト設定時の消費電力は300〜320ワットに抑えることができた」(同氏)とアピールする。ただし、AMD OverDriveなどでGPUやメモリの動作クロックを引き上げれば「最大380ワットくらいにはなる」(同氏)が、それでも、「カードそのものの設計は、液体窒素などによるアグレッシブなオーバークロックにも対応できるように「電源設計は、最大500ワットまで供給できるように設計してある」(同氏)のだという。
Radeon HD 7990のオンボード電源は、2組のデジタルPWMで構成されており、それぞれのGPUやメモリに、独立した電力を供給できるようにしている。これにより、GPUの負荷に応じて、きめ細かな電力制御が可能になり、ムダな電力を消費せずに済む。また、同社が「3X Ultra-Quiet Axial Fan」(超静音3連ファン)と呼ぶ3つのファンは、PCI Express端子に近いメインGPU側に2基、カードエッジ側のサブGPUに1基がそれぞれ連動するようになっており、ベイパーチェンバーを採用したヒートシンクも、各GPUで独立した構成を取っているのも特徴だ。
ネケチャック氏によれば、「放熱メカニズムを各GPU独立にしたことで、3基のファンが連動して動作するよりも、ファンノイズを抑えることが可能になった」とし、「静かな図書館が40デシベルとされているが、Radeon HD 7990は、FurmarkでGPUに高い負荷をかけても、図書館よりも静かな動作音しかしない」と、その静粛性に絶対の自信を見せる。
また、同氏は「Graphics Core Nextアーキテクチャの特徴でもある、ZeroCore Power Technologyで、GPU負荷が低いときは一方のGPUを休止できるため、Windowsのアイドル時の消費電力は、わずか15、16ワット程度。常に、高いパワーを要求するわけではない」と、同製品の省電力機能の優秀さもアピールする。
そのパフォーマンスや、実際の消費電力などについては、別稿のとおりだが、AMDとしては「Radeon HD 7990は、4Kディスプレイでグラフィックス品質を最高レベルにしても、存分にプレイが楽しめる、新時代のハイエンドカード」(同氏)と位置づけており、PCゲームのクオリティをさらに向上させるきっかけにしたいという思いも伝わってくる。
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