2026年の日本におけるPC市場動向において、最も注目を集めるトレンドが「AI PC」だろう。その中核的な役割を担うのがインテルだ。Intel 18Aプロセス技術による最新CPUである「Panther Lake」(開発コード名/Core Ultra シリーズ3)を搭載したPCは、AI PCのけん引役でもあり、インテルでは2026年の国内PC出荷全体の過半数をAI PCが占めると予測する。
インテルの大野誠社長は、「AI PCがスタンダードといわれる状況を早く作りたい。そして、AI PCのメリットを訴求する活動を地道に進めたい」と語る。インテル・大野社長へのインタビュー前編では、変革に取り組むインテルの現在の状況と、日本におけるAI PCへの取り組みについて聞いた。
―― 2025年はインテルにとって、大きな転換の1年でした。今のインテルの立ち位置を、大野社長はどう見ていますか。
大野 2025年3月に、CEOに就任したリップ・ブー・タンによるIntelの経営改革が進んでおり、それに伴い、経営陣の顔ぶれも大きく変化しています。社内外から、新たな人材を重要なポジションに登用し、Intelの新たな時代の経営体制が整いつつあると感じています。
リップ・ブー・タンは、半導体設計支援ソフトの米ケイデンス・デザイン・システムズのCEOを務めた経験に加え、ベンチャーキャピタルであるWalden Catalyst Venturesの創設者でもあり、さまざまな企業と広く、深く接点を持ってきた人物です。
さらに、上場企業の取締役としての経験も豊富であり、IT産業にとどまらない視点で、物事を判断する経営者だといえます。そして、技術面でも造詣があるという点でも、新たなIntelの経営トップとして、最もふさわしいといえます。
一方、Intelの業績の回復については出足はスローでしたが、2025年後半から変化し、2025年度(2025年1〜12月)通期業績ではGAAPベースの純損失が改善し、Non-GAAPベース純利益は黒字化しました。もちろん、これに満足しているわけではなく、今抱えている課題の解決をさらに進め、お客さまやパートナーの期待に応えるべく改革を続けていくことになります。
Intelの事業構成は製品事業とファウンドリー事業に大別できますが、製品事業では利益を出しており、PC(クライアント・コンピューティング・グループ)およびデータセンター(データセンター&AI)のいずれも黒字化しています。
その一方で、改善の余地があるのがファウンドリー事業です。かなりの赤字を抱えている事業であり、まずは、これをフラットな状態に持っていく必要があります。そしてプラスに持っていくためには、製品事業でIntel 18Aプロセス技術をしっかりと成功させ、この成果をファウンドリー事業に展開していかなくてはなりません。
Intel 18Aの成功は、ファウンドリー事業の拡大にとっても重要なピースの1つになりますが、その点では確実な一歩を踏み出せていると感じています。業績全体という点では、保有株式の一部売却益のプラス影響もありますが、製品事業の成長には手応えを感じています。
明るい材料の1つが、米国政府およびNVIDIA、ソフトバンクグループからの出資により、財務基盤が安定方向にあることです。これは、次の投資を図っていくための重要な基盤になります。
―― しかし、Intelは「元気である」と表現できる状況にはなっていません。
大野 確かに、胸を張って、それを言える状況ではありません。Intelは新たなものを創出し、市場に投入して産業全体を活性化する役割を担ってきました。その点からいえば、物足りなさを感じる部分があるかもしれません。
しかし、それほど遠くない時期に「Intelは元気になった」と言ってもらえるはずです。先にも触れたように、Intelはこの1年で劇的に変化をしています。そして、Intelを取り巻く市場環境も大きく変化しています。その変化の波は、インテルにとってはプラスだと思っています。
リップ・ブー・タンは、CEOに就任してからの約9カ月間は、社内改革を中心にした働き方をしてきましたが、12月以降はアジア地域を始めとして世界各国を訪問するなど、対外的な活動も増えてきました
―― CEOに就任以降、来日していない点が気になりますが。日本の優先順位が落ちていませんか。
大野 リップ・ブー・タンは、ソフトバンクグループで社外取締役を務めていたこともありますし、CEO就任前は何度も日本を訪れており、日本市場を理解しています。マレーシア出身でシンガポールで育ち、アジアや日本に対するリスペクトを持っている人物です。私も直接話をしましたが、チャンスがあれば日本には行きたいと言ってくれています。
―― 2026年は、Intel 18Aプロセス技術の確立と、それを基盤とした初のクライアント向け製品、サーバ向け製品の出荷が始まりますね。
大野 米アリゾナの工場でIntel 18Aプロセス技術の量産を開始し、2026年からはPC向けの「Core Ultra(シリーズ3)」や、サーバ向けの「Clearwater Forest」(開発コード名)を本格的に投入しています。
新たなプロセス技術による半導体には、市場全体からとても大きな関心が集まっています。特にCore Ultra(シリーズ3)を搭載したAI PCはデザイン数が圧倒的に多く、2026年には多くのAI PCが投入されることになります。ラインアップの拡大に伴い、Core Ultra(シリーズ3)を選んでいただけるお客さまが増加すると期待しています。
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