←・デスクからデータセンターへ:「ワークステーションの仮想化」を推進するDell
前回に続き、米Dellが開催したワークステーション事業の報道陣向けイベント「Dell Precision Media Day」についてリポートする。
同社ワークステーション事業のトップであるアンディ・ローズ(Andy Rhodes)氏は、ワークステーションのメガトレンドとして仮想化に続き、「デモクラタイゼーション(Democratization)」に言及した。直訳すれば「民主化」ということになるが、その後の内容からすると「(束縛、制約からの)解放」というような解釈が適当だろうか。ここでローズ氏は3つのポイントを挙げた。
1つめは「コストの制約に対するデモクラタイズ」だ。市場調査の結果、「本来ワークステーションを使うべきにもかかわらず、使用していないユーザー」が多くいることが分かったという。つまり、予算などの問題で高価なワークステーションを購入できない、あるいは使うべきハードウェアの知識がないなどの理由で、CG/CADアプリケーションをスタンダードなPCで使っている中小企業のエンジニアやクリエイター、学生などがそれに当てはまる。
ローズ氏は彼らの境遇を「外科医がキッチンナイフで手術をしているようなもの」と表現。「汎用(はんよう)のPCではCPUパワーもGPUパワーも不十分であり、ソフトウェアベンダーの認証もなければ、アプリケーションへの最適化もされていない。きちんとしたツールを使うべきだ」と主張した。このマーケットにはまだ適切な製品が供給されていないとしつつ、我々ならば「適切な製品を適切な価格で提供できる」とした。
2つめは「妥協に対するデモクラタイズ」だ。ワークステーションのモバイル化という製品トレンドがある一方、従来のモバイルワークステーションでは、パフォーマンスかモビリティ、どちらかを妥協しなければならなかった。
それに対して、2013年にDellが発表した「Precision M3800」は、これまでにない薄型軽量のフォームファクターであるにもかかわらず、ハイパフォーマンス、耐ミッションクリティカルな信頼性、いずれも妥協することなく備えているとアピール。「これまでデスクに縛られていたエンジニアをデスクから解放することができる」とその利点を語る。
3つめのポイントとしては、「エンジニアリングの参入障壁が下がっていること」を紹介した。3Dプリンタの登場により、それまで莫大(ばくだい)な資金を使って作っていたような試作モデルの製作が低コストで迅速に、しかも繰り返しできるようになり、製品開発のプロセスが大幅に短縮され、資金のある大企業でしかできなかったような製品開発を中小企業でもできるようになったという。
この部分、具体的にどうデモクラタイズに結びつくのかまでははっきりと言及されなかったのだが、モデリングツール、およびそれを稼働させるワークステーションの新規導入需要がかつてないほどに高まっており、Dellはそこに適切な製品を提供できるという意図と思われる。
Dellはこのイベントで、エントリー向けの新しいモバイルワークステーション「Precision M2800」を2014年春に投入すると発表した。
これはローズ氏がデモクラタイズの対象として述べた「本来ワークステーションを使うべきにもかかわらず、使用していないユーザー」、例えば、高価なワークステーションが買えないため、汎用PCでCADツールなどを使っているユーザーに向けた製品だ。
ハードウェアのスペックは、CPUにクアッドコアのCore i7、GPUにFire Pro(グラフィックスメモリ2Gバイト)を採用し、最大16Gバイトのメモリ、HDまたはフルHD解像度の15型ワイド液晶ディスプレイを搭載する。重量は約2.56キロだ。販売価格は1199ドルからと、モバイルワークステーションとしては破格の安さで、2014年春からワールドワイドで販売を開始する。
製品をお披露目したローズ氏は、「エンジニア、クリエイターは企業にとって重要な資産であり、適切なツールを与えるべき」と改めて主張した。
続いて登壇した同社のカール・パッツェル(Karl Paetzel)氏は、「エンジニアやクリエイターは必ずしもハードウェアを熟知しているわけではない」と前置きし、プロフェッショナル向けサポートが受けられること、各ソフトウェアベンダーの認証を受けており、互換性などの心配がないこと、デザインツール/クリエイティブツールに対してパフォーマンスの最適なチューニングが行なえることなど、低価格にもかかわらず、Precisionシリーズならではの付加価値がきっちりと上乗せされていることをアドバンテージとして強調した。
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