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» 2014年04月07日 20時15分 UPDATE

鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8.1」:OS無料化だけじゃない――Windowsタブレットが今後大きな勢力になる要因 (1/2)

米Microsoftの開発者会議「Build 2014」では、9型未満のタブレットとスマートフォンに搭載するWindowsの無料化や、スマートデバイスからPC、ゲーム機まで同じアプリケーションを横展開しやすくする「Universal Windows Apps」が発表された。そうしたMicrosoftの戦略以外にも、Windowsタブレットが今後シェア争いで大きな勢力になると考える理由がある。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

iOS、Androidの2強にWindowsはどう入り込むか?

 一昨年の2012年時点でタブレット製品のシェアトップだったiPadが、翌2013年にはAndroidを搭載した製品群にダブルスコアで抜かれてトップを譲り渡した――3月初旬に米Gartnerが出したリポートだ(Gartner Says Worldwide Tablet Sales Grew 68 Percent in 2013, With Android Capturing 62 Percent of the Market)。

 このリポートを受け、筆者の周辺でいろいろなことが話題となった。「自分のまわりではiPad以外のタブレットを見たことがない」といった感想や、「Microsoftは本気でAndroid対策を考えないとまずいのではないか?」といった既存ベンダーらの将来戦略について心配する声など、その内容はさまざまだ。

 さて、今回はこうしたタブレット市場のシェア争いにおいて、Windowsタブレットの存在がもしかしたらダークホースになるのかもしれない……といった予測を、ビジネス方面から少し考察してみた。

 仮にもデスクトップOSシェアで9割超を獲得しているWindowsがダークホースというのは失礼な言い方かもしれないが、ひょっとすると既存のこのシェアが今後の市場拡大で大きな武器になるのかもしれないのだ。

tm_1408win_01.jpg 2014年2月時点のデスクトップOSシェア(出典:Net Applications)

Windowsタブレットブームは日本だけ?

 日本だけで「Windowsタブレット」が異様に売れているといった報告は、直近の年末年始で何度か耳に入ってきている。

 これを実際にデータの形で紹介したのが、3月9日に東洋経済オンラインが掲載した記事だ(「艦これ」が火付け役!タブレット市場に異変)。世界的なWindowsタブレットの市場シェアは2%程度の水準に過ぎないのに対し、日本での2014年2月のWindowsタブレットのシェアは15%に達すると報告している(BCN調査)。しかも、これは「Surface」を抜いた数字なので、実際のシェアはより高いと予想される。

 Windowsタブレットで一番の売れ筋はレノボ・ジャパンの8型モデル「Miix 2 8」だ。話によれば日本の在庫が完全に枯渇し、本来であれば日本国外向けに出荷される予定だった大量のロットを優先的に日本市場に流して需要に対応していたという。

 ここまでWindowsタブレットに需要が集まった大きな理由の1つは、ブラウザゲームの「艦隊これくしょん」(艦これ)をプレイするためだ。艦これはFlash Player上で動作し、日本国内でのみサイトにアクセス可能というリージョン制限を受けている。Android向けFlash Playerの開発が終了した今、同ゲームを手軽で快適にプレイできるのは、Windowsタブレットを使う日本のプレイヤーだけというわけだ。

 実際、2月にバルセロナの「Mobile World Congress」で同業ライターがそろって食事をしたとき、会食の席にわざわざSurfaceを持ち込み、VPN接続で艦これを遊んでいる姿が見られたほど、人気を集めている。

艦これ以外でも小型Windows端末の関心が高まる

 さて、艦これの盛り上がりとは別に、3月初旬に東京で開催されたあるイベントでWindowsタブレットに関する新しい潮流を感じることができた。これは日本経済新聞社主催で3月4〜7日にかけて東京ビッグサイトで開催された「リテールテックJAPAN」でのことだ。毎年ここでは、POSシステムからデジタルサイネージまで、小売店舗で利用される技術や製品展示が行われている。

 数年前であれば、スーパーでよく見かけるPOSレジやバックエンドでの集客管理システムなどが主要な展示だったが、近年では市場に普通に出回っているタブレットやスマートフォンをそのままPOSに流用する「mPOS」がブームとなっており、こうした展示が増える傾向にある。

 mPOSブームの火付け役は米Squareで、iPhoneやiPadに専用のドングルを挿してすぐにクレジットカードリーダー兼POSレジに流用できるシステムが話題を呼び、Starbucks Coffeeでの大規模導入事例から主に中小の小売店をターゲットにした営業戦略が功を奏し、少しずつ導入事例が増えつつある。

tm_1408win_02.jpgtm_1408win_03.jpg 3月初旬に東京ビッグサイトで開催された「リテールテックJAPAN」(写真=左)。mPOSで代表的なものが米Squareのレジシステムで、これは米サンフランシスコ市内のBlue Bottle Coffee店舗に設置された第2世代iPad向けの専用シャシーだ(写真=右)

 mPOSのメリットは、設置スペースが小さく、簡単にPOSやクレジットカード決済システムを導入できる点にある。例えば大手チェーン系店舗ならばともかく、中小の個人経営の小売店が本格的なPOSを導入しようと考えた場合、機器導入と関連アプリケーション開発だけで1カ月の利益が軽く吹き飛ぶような費用が発生したりする。

 クレジットカード決済を行う場合、別途カード処理のための加盟申請を行い、契約に応じたカード読み取り用の専用端末が設置されることになる。店舗で会計のとき、レジまわりにカード処理のために大量の端末が設置されている風景を見かけることがあるが、契約だけでなく、設置スペースも考えれば悩ましい問題だ。

 しかしmPOSであれば、市販の数万円程度のタブレットをそのままPOSレジに流用でき、さらに面倒なカード処理の契約も一括して行える。POSに必要な管理アプリケーションもクラウド経由でベースになるものが安価に提供されるため、必要最低限の設定を行うだけでいい。そのため、既存のPOSを置き換えるものというよりも、これまでPOSの導入に二の足を踏んでいたような中小の小売店での導入ケースが増えているというわけだ。

 先行した米Squareの例から、mPOSといえばiPhone/iPadといったiOSデバイスの印象があるが、最近ではAndroid対応もうたうPayPal Hereが登場したり、日本ではコイニーや楽天スマートペイといったソリューションもあり、iOSまたはAndroidというモバイルOSを利用することが多いようだ。

 世界的なシェアでみれば、先ほどの米Gartnerのタブレット市場報告でiPadが36.0%、Androidが61.9%であり、Androidをサポートするのは当然の流れといえる。一方でこの調査でのWindowsタブレットのシェアはわずか2.1%で、一昨年の2012年からは3.5倍近い台数増加を見せているものの、2強のシェアには遠く及ばない。だが、今年のリテールテックJAPANでは「Windowsタブレットに強い関心が増えつつある」という話を何度か聞くことができた。

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