←・SOHO/中小企業に効く「プロジェクター」の選び方(第1回):今さら聞けない「プロジェクター」選びのポイント(その1)
前回は明るさや接続方法など、ビジネス用プロジェクターを選定する際に重要なポイントを紹介した。今回も引き続き、SOHO/中小企業向けにプロジェクター選びのポイントについて解説する。またプロジェクターという製品をよく知るため、各社の製品が持つユニークな付加機能についても合わせて見ていく。
投写時に台形にゆがんでしまった画面を正しい長方形になるよう補正する機能は、常設した場合を除き、プロジェクターを使うにあたって必ず利用する機能の1つであり、プロジェクターの使い勝手のよしあしに直結する。ローエンドの製品になってくると、途端に機能が貧弱になりがちなだけに、製品選びの際は入念にチェックしたいポイントだ。
台形補正機能は、一般的に「タテ方向の補正」と「ヨコ方向の補正」に分けられる。プロジェクターを設置する場合、その多くは下から投写先のスクリーンまたは壁面を見上げる形になるので、タテ方向の台形はほとんどの場合において発生する。そのため、タテ方向の台形補正機能はほぼすべてのプロジェクターに備わっており、また手動だけでなく自動補正に対応していることも多い。
一方、ヨコ方向の台形補正が必要になるのは、正面ではなく斜め方向から投写した場合に限られる。本体の位置を左右にずらして対応できることが多いため、ヨコ方向の台形補正は機能として必須というわけではない。それゆえヨコ方向の台形補正機能を省略した製品も多く、また備わっていても手動であることがほとんどだ。
こうしたことから優先順位としては「タテ方向の補正」の使いやすさ、次いで「ヨコ方向の補正」となる。特に設置場所が毎回変わるモバイルプロジェクターに関しては、タテ方向の補正機能は自動化されていたほうが、設置にまつわる所要時間を短縮できる。まずは自動補正機能で形状を合わせ、微妙なズレは手動で補正するというわけだ。
実際に各メーカーの製品の特徴を見てみると、上記の機能をミックスして使い勝手を向上させた独自の補正機能をアピールしている。例えばエプソンであれば、ボタン1つでタテ/ヨコのゆがみを自動補正してスクリーンの枠に画面を合わせる「フレームフィット」機能や、画面の角ごとにゆがみを補正する「クイックコーナー」機能などがあり、タテ/ヨコの台形補正とは別の機能として提供されている。一般的に、より多くの補正機能を備えていればそれだけ使い勝手が優れた製品と言えるが、それぞれの機能は排他利用となっている場合もあるので注意したい。
いずれにせよ、これら補正機能はローエンドの製品ではおそろしくシンプルで、かえって設置場所を制約するようなケースも少なくない。単に「補正機能:あり」とだけ書かれているような場合は、具体的にどのような補正機能を備えているのか、しっかり確認したほうがよいだろう。
もちろん、こうした補正機能が使いやすいかどうかは付属のリモコンや操作メニューの作りにも依存するので、機会があれば、実機で確認するのがベターだ。
プロジェクター本体から、画面を投写するスクリーンまたは壁面までの距離を表すのが「投写距離」だ。懐中電灯を思い浮かべると分かりやすいが、壁に近づけば光は強くピンポイントになり、壁から離れると光は広がってそのぶん弱くなる。プロジェクターの場合、どこからどこまでの距離がきちんとスクリーンにピントが合い、なおかつ実用的な明るさが得られるかを、この投写距離という項目で示している。
投写距離は「〜型の画面が、〜メートルの距離で投写可能か」で表す。例えば60型の画面を投写する場合、最低でも2メートル離れなくてはいけないのと、1メートルあれば十分というのでは、狭い会議室での使い勝手がまったく変わってくる。そのため、「60型投写時:2.0〜2.4メートル、100型投写時:2.9〜4.2メートル」といった具合に、表示したい画面サイズごとにどれだけの距離が必要かを明示するわけだ。
この場合、なるべく短い距離で、なるべく大きな画面を投写できる製品のほうが、より利便性が高く、こうした「短焦点モデル」は、昨今のトレンドの1つになっている。特に設置先が毎回変わるモバイルユースの製品では、設置先に合わせて調整の自由度が高いほうが望ましいので、これらの値にある程度の幅があるほうが使い勝手がよい。また最短投写距離はなるべく短いほうが、通された会議室が狭くプロジェクターを使おうにも壁面にピントが合わなかった……という失敗をなくせる。
ちなみに「60型投写時:2.0〜2.4メートル」といった具合に、投写距離にある程度の幅があるのは、光学ズーム機能を併用して距離が変更できることを表している。この例であれば、2メートルの距離から60型相当の投写をしている際に、プロジェクターが備える1.2倍の光学ズーム機能を使うことで、画面サイズを保ったままで距離を2.4メートルまで離せるという意味になる。製品によっては2倍もの光学ズームを備えた製品もあり、距離を2倍離せるので、設置の自由度が高まる。
画面の明暗差を表す「コントラスト比」は、その数値が大きくなるほど、明暗のメリハリが効いた画像になる。例えばコントラスト比「3000:1」と「1800:1」を比べれば、前者のほうが明暗がくっきりと分かれた鮮明な画像が得られるというわけだ。最近は映像の内容に応じて絞りを自動調整するオートアイリス機能などにより、1万:1を超えるような高コントラスト比をうたう製品も増えている。また構造上、DLP方式のプロジェクターは真っ黒を表現しやすく、コントラスト比が高い。
もっともビジネス用プロジェクターに関しては、映画鑑賞で高い画質や黒色の再現性が求められるホームシアター用とは異なり、コントラスト比はそれほど重要なポイントではない。どちらかというとクッキリ明るいほうが、プレゼンは見やすく、ストレスにもなりにくいだろうが、照明をつけたままの部屋で投写映像を見たい場合はコントラストが大きく下がることもあり、コントラスト比より明るさ(ルーメン)のほうが重要だ。
まったく考慮しなくていいわけではないが、色の再現性が重要な業種だったり、プロモーションの動画を再生する機会が多いといった場合を除き、コントラスト比の優先順位は低めでよいだろう。
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