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今さら聞けない「プロジェクター」選びのポイント(その1)SOHO/中小企業に効く「プロジェクター」の選び方(第1回)(1/2 ページ)

» 2014年05月23日 16時30分 公開
[山口真弘,ITmedia]

ビジネスシーンでより身近になったプロジェクター

ビジネス用プロジェクターを選ぶポイントとは?

 会議や取引先へのプレゼンテーションに欠かせないプロジェクター。かつては高価だったこともあり、少ない台数を社内でシェアするという使い方も多かったが、機器本体の低価格化に加えて、会議などの活性化および参加者の意識共有に効果的であることが広く認知されたことで、昨今では各会議室ごとに導入している企業も珍しくない。

 また小型軽量化が進んだことで、営業マンが外出先でプレゼンを行う際に持ち出し、取引先で利用するケースも増えている。すでに幅広いビジネスシーンで「当たり前の機器」になりつつある状況だ。

 オフィスに1台、あるいは会議室に1台という単位で導入されるビジネス用プロジェクターは、PCのように個人単位で導入される機器と違い、じっくり使い込んで機器のクセや特性を知る機会はそれほど多くないだろう。それゆえ新規に製品を選ぶ際も、何を基準にすればよいのか分かりにくい。

 たとえ「明るさ」が重要なポイントであることは知っていても、いきなり具体的な値、例えば「3000lm(ルーメン)」という数値を出されて、それが適切な明るさなのかをどうか判断できる人はどれだけいるだろうか。

 今回は連載の第1回ということで、まずビジネス用プロジェクターをよく知るためのキーワードを1つずつ挙げ、個々の意味合いをチェックするとともに、それらを考慮せずに製品をチョイスした場合、どのようなマイナスがあるかを含めて見ていこう。単なる用語集とは異なり、ある項目を軽視するとどこに影響が出るのかを知っておけば、メーカーサイトやカタログで製品の仕様を読み解くうえでの指針となるはずだ。

 なお本連載はSOHO/中小企業をターゲットとしているため、同じプロジェクターでも家庭向けのホームシアター用途や、またビジネスユースの中でも学校の視聴覚ルームといった文教用途や多目的ホール、講堂、ミニシアターなどに常設する大規模な構築には触れない。トレンドの1つである3Dや4Kのほか、投写映像のタッチ操作を可能にするインタラクティブ機能や電子黒板機能についても同様だ。あらかじめご了承いただきたい。

明るさ

ビジネス用プロジェクター選びでは、投写映像とその内容をはっきり伝えるため、「明るさ」が重要となる

 プロジェクターを選ぶ際、第一に挙げられる指標が「明るさ」だ。本体のコンパクトさや価格の安さを打ち出した製品は明るさが足りず、会議室をよほど暗くしなければ投写映像が見づらいこともよくあり、プロジェクターの性能を如実に示す指標となる。

 プロジェクターの明るさ(光束)は「ルーメン(lm)」という値で表す。数値が大きければ大きいほど、室内を暗くしなくとも視認しやすい、鮮明な映像が投写できる。一般的には、3000lmよりも上ならば部屋の照明を消さなくても鮮明な映像が得られ、それを下回っていれば部屋の照明を消す必要があると考えればよい。4000lmを超えると、投写するスクリーンの背後にある窓から日光が差し込んでいても、十分視認できるレベルになる。

 もっとも、大きな光量を得るためにはそれだけ高性能なランプを搭載しなくてはならず、そうなると消費電力も高くなるほか、本体のサイズも大きくなり持ち運びに不便になる。また発熱量も増すのでファンが必須になり、騒音も大きくなる……といった具合に、欲張りすぎるとデメリットが増え、コストも上昇する。それゆえ、最低限必要な光量を備えつつ、その他の条件がどれだけ許容範囲内に収まっているかが、大きなポイントになる。

 こうしたことからよく用いられるのが、部屋の広さ別に必要な明るさを算出する方法だ。具体的には、数人で利用する小会議室レベルであれば2000lm程度、20〜30人くらいは入れる中会議室レベルでは3000lm程度、といった具合だ。照明を消さずに鮮明な投写映像を見たいという場合は、これらの値にいくらか余裕をもたせればよい。

 ちなみに小会議室であれば、低価格である程度画面が大きいテレビやディスプレイで代用する手もあり、高輝度表示で手軽に取り扱えるメリットもある。ただし、低予算でテレビ以上の大画面が得られる点、持ち運びがしやすい点(複数の会議室で共用できる点)など、プロジェクターの優位性も見逃せない。

色の明るさ測定では、光の3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーパターン3種類をスクリーンに投写して9カ所の明るさを測定し、3回の測定結果を合計する

 1つ覚えておきたいのは、各社が公表している明るさの測定条件は2種類が存在することだ。具体的には「白の明るさ(全白)」と「色の明るさ(カラー)」で、前者は単に真っ白な光を投写しただけの測定値、後者は光の三原色(赤、緑、青)をそれぞれ決まったパターンで投写した測定値を合計して得られた値となる。

 当然「カラー」のほうがより実際の使われ方に即しているため、例えば白/カラーともに3000lmの製品と、白が3000lmでカラーは非公表という製品を比較すると、後者は暗く感じることもしばしばだ。標準的なビジネス用プロジェクターで使われることが多い投写方式でいうと、「3LCD(液晶3板)」方式は白とカラーの明るさが変わらず、「1チップDLP(単板DLP)」方式は白に比べてカラーが暗くなる。

 色の明るさという指標は、3LCD方式を推進するエプソンが提案し、2012年に情報ディスプレイ学会(SID)がIDMS 15.4規格として測定基準を定めたものだ。色の明るさについて具体例を知りたい場合は、情報サイト「Color Brightness & White Brightness for Projectors」を利用するとよいだろう。基本的に海外モデルの測定値となるが、製品別に明るさが白とカラーに分けて表示されるので、目安として分かりやすい。

接続方法

ノートPCと接続する場合、インタフェースはD-Sub 15ピン(アナログRGB)もしくはHDMIを使うのが一般的だ。USBディスプレイ機能に対応した製品もある

 ビジネス用プロジェクターは多くの場合、ノートPCと組み合わせて使用する。接続方法の多くはディスプレイケーブルだが、ノートPCの外部映像出力端子がD-Sub 15ピンからHDMIに移り変わるのに合わせて、これらの接続に対応した製品が多くなりつつある。後述する高解像度化の恩恵を受けるためにも、HDMIは搭載しているほうがよいだろう。もっとも現行の製品であれば、ロングセラーの製品を除いてほとんどの製品がHDMI端子を搭載している。また、DisplayPortを搭載した製品もある。

 これ以外の接続方法もある。1つはUSB接続で、マルチディスプレイの構築に使われるUSBディスプレイアダプタと同等の機能を内蔵し、USBケーブル1本で接続ができるというものだ。USBであれば実質どのPCにも装備されているうえ、HDMIやDisplayPortと同様、映像だけでなく音声も同時に送信できるので便利だ。ただし初回接続時はドライバのインストールが必要になるので、セミナーなどで複数の登壇者がPCを取り替えながらプレゼンするような場合は、先にいったん接続してドライバのインストールを済ませておかないと、進行が滞る原因になる。

iOS/Androidの専用アプリから対応プロジェクターへのワイヤレス映像出力を可能にする「Epson iProjection」

 本体にLANコネクタを備え、同一LAN上のPCからデータを読み込める製品もある。無線LANで社内ネットワークに接続しているPCと組み合わせて、ワイヤレスでプレゼンが行えるというわけだ。またエプソンの「Epson iProjection」のように、スマホやタブレットからワイヤレスでプレゼンを行うためのアプリを用意しているメーカーもある。

 このほか、メモリカードやUSBメモリを接続してデータを読み込む機能もある。完全にPCなしで利用できるのが利点だが、内蔵のビュワーを使うため、対応するファイル形式に制限があり、万能というわけではない。PDFではバージョンが違うと読み込めない場合もあるので、事前のテストを行ったうえで必要に応じてバージョンを下げて再出力することが必要になる。

 と、さまざまな接続方法があるが、何も1つの接続方法に決めてかかる必要はまったくない。後から接続方法や端子を増やすことは(外部アダプタで変換する方法を除けば)原則としてできないので、なるべく多くの接続方法に対応している製品を選んだほうが、うまく接続できない場合もつぶしがきく、くらいに考えておくとよいだろう。

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