映画『STAND BY ME ドラえもん』スタッフに聞く――CG制作のスゴイ現場「自然」にこだわるための配慮と機材(1/3 ページ)

» 2014年08月14日 09時30分 公開
[笹田仁,ITmedia]

 絶賛公開中の映画『STAND BY ME ドラえもん』。その見どころの1つにち密に作りこんだCG映像が挙げられる。『ドラえもん』シリーズでは初めての3D CG作品となったこの作品。制作を担当した「白組」のメンバーに、CG制作時のこだわりなどについて聞いた。話を聞かせてくれたのは映画監督を務めた八木竜一氏、アートディレクターの花房真氏、CGスーパーバイザーの鈴木健之氏だ。

監督の八木竜一氏

 「白組」は1974年創立の企業で、当初から特殊映像の制作を専門にしていた。コンピュータが映像制作の現場に入っていなかった時代は、プラモデルのジオラマのようなセットを作って、そのセットで物体を動かしながら映像を作るいわゆる「特撮」など、「普通の撮影ではできない映像づくり」(八木氏)を専門にしていた。

 その当時はコンピュータはまだまだ縁遠いものだったが、時代が進むにつれて現場にワークステーションやWindows、Macintoshが入ってくる。コンピュータが身近なものとなりつつあったが、それでも本格的にCGを作るというところにはなかなか進まなかった。

 花房氏は「コンピュータが進化し、性能が上がっていくと、作れる映像のクオリティがどんどん進化していく。当初は人間の3Dモデルを作ってみても継ぎ目ができてしまうなど不自然なところがあったが、ポリゴンにテクスチャを貼れるようになってから、私たちもCGを作るようになった」と語る。

アートディレクターの花房真氏

 CGを作るようになってしばらくはテレビCMなど短い作品を主に手がけていたが、「白組」の社内でも「いずれ映画を作りたい」という思いがあったという。何より、社長の島村達雄氏が「CGで映画を作ろう」と強い思いを抱いていたという。

 「白組」にとって初めての3D CG映画は2011年公開の『friends もののけ島のナキ』。『STAND BY ME ドラえもん』はそれに続く2作目だという。プロットを作って藤子・F・不二雄プロに提出したところ、「こんなに『ドラえもん』に対する愛のあるプロットはない、断る理由がない」という返答があり、企画がスタートしたという。

メモリ不足で苦労した経験から、最低でも32Gバイトを用意

 鈴木氏によると、機材は主にデルの「Precision T7600」を使ったという。「RAIDを外付けではなく内蔵で使いたかった。席替えやオフィスのレイアウト替えがあっても、RAIDが内蔵なら簡単に移動できる」とその理由を語る。

CGスーパーバイザーの鈴木健之氏

 さらに八木氏は「『friends もののけ島のナキ』のときはメモリーが6Gバイトほどで、苦労していた。今回は特にメモリーを大きくしてほしいと要望を出した」という。その結果、メモリーは32Gバイト以上としたそうだ。64Gバイトを積んだものもあるという。ほかの部分の仕様はおおよそ以下の通り、プロセッサはXeon E5-2665(8コア、2.6GHz、L3キャッシュ20Mバイト)。ハードディスクは500Gバイト、7200回転/分をRAIDで使った。OSはWindows 7 Professional 64ビット版。

 制作ソフトは「Autodesk 3ds Max」。八木氏はそのソフトについて、「長い間同じものを使っているので、スタッフも慣れている。その分、同じ時間でも以前より多くのことができるようになっている」と評する。

 以上で仕様を紹介したのは、デスクトップで画像の合成を担当するスタッフが使う機材。このほかにレンダリングサーバーとしてデルのOptiplexシリーズを250台前後使用したという。レンダリングサーバーのCPUを使ってレンダリングを処理したそうだ。

レンダリングに使ったサーバー群

 これだけの規模の機材が揃えば、大抵のことはすぐに処理できるようにも思えるが、実際に制作を始めてみると「スペックをギリギリまで使った。もっと高性能なものでも良かったと思う」(鈴木氏)というくらいだから、3D CGを作るという作業がどれほど大変なものか想像できる。

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