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» 2014年12月24日 15時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:店頭の陳列面積で売れ筋製品が分かる……というわけでもない事情 (1/2)

量販店の棚を見ていると、1つの製品が1列だけ並んでいることもあれば、複数の列にまたがって陳列されている場合もある。複数列にまたがっている製品はイコール売れ筋と思いがちだが、実はケースバイケースだったりすることをご存じだろうか?

[牧ノブユキ,ITmedia]

店頭の棚をめぐる仁義なき争い

 Twitterでゴキブリ混入を指摘されたことから、カップ焼きそばの「ペヤングソースやきそば」が店頭から姿を消して久しい。かつてペヤングが陳列されていたスーパーやコンビニの棚は、今では他のカップ焼きそばに埋め尽くされて、パッと見ただけではペヤングという製品が売場からなくなっていることに気づかないほどだ。

 このペヤングの例を出すまでもなく、あらゆる量販店の店頭では、メーカーが仁義なき陳列場所の取り合いをしている。食品業界は言うに及ばず、生活用品、文房具、化粧品、そしてPC関連の機器まで、さまざまだ。陳列する棚を失うことは、イコール販売機会の損失にほかならず、メーカーにとってはまさに死活問題と言える。

 さて、量販店の棚を見ていると、1つの製品が1列だけ並んでいることもあれば、複数の列にまたがって陳列されている場合もあることに気づく。2倍ワイドに並べれば2倍売れるわけでもないだろうし、むしろ2倍の幅を占有することで売場から弾き出されてしまう製品が出ることも懸念される。

 そうした中、どうして1つの製品が複数の列にまたがって並べられるケースと、そうでないケースがあるのか? というのが、今回のお話だ。

定番商品の場合、複数列にまたがって陳列される製品はハズレなし

 さまざまなメーカーの製品を取り扱う量販店の立場からすると、1つでも多くの種類を店頭に並べたほうが、売れる確率が高くなる。

 例えばAという製品の隣にBという製品を並べておき、顧客が両者を比較して結果的にAを買うことになっても、Aの優位性を演出したという意味で、Bという製品を陳列しておく意味はあったわけである。顧客に選ばれなかったBのメーカーはお気の毒だが、量販店にとってはどちらにしても売上は立つので、痛くもかゆくもない。

 また、中には両者を比較検討した結果、Bのほうを選ぶ顧客も出てくることだろうし、Bが置いてある店を探して回っていて、在庫が置いてあるのを見つけて狂喜……というケースもあるかもしれない。

 こうしたさまざまな因果関係や相乗効果が積み重なって、量販店の売上は形成されている。中には年間通して1個も売れず、売れ行き不振の烙印(らくいん)を押されたCという製品が、実は当て馬として重要な役割を担っていて、売り場から姿を消した途端に製品AやBの売上まで下がったりするケースもあるので、世の中分からない。

 これがもし、棚一面に製品Aしか並んでいない売場であれば、顧客は売場で製品を比較検討することができなくなり、「もっといろんな製品を見比べられる別の量販店に行こう」となってしまう。

 取り扱う製品の種類を絞り込めば販売コストは下がるので、一概によしあしは決めつけられず、最近はむしろこうしたスタイルを基本とする量販店もあるのだが、一般的には多くの製品を並べたほうが客に対する訴求効果は高まり、売上にもつながりやすい。理想はあくまでも1製品あたりのスペースが最小となる陳列方法、つまり「1製品につき1列」である。

 しかし店頭を見ると、陳列できる種類をあえて減らしてまで、同じ製品を横に複数並べる場合がある。つまり「1製品につき複数列」といったケースだ。これは1列だけでは目立ちにくいため、面を増やして顧客の目に止まりやすくするといった事情もあるが、もう1つ、大きな理由がある。それは、棚から製品がなくなるのを防止するというものだ。1列だけでは売れるスピードが早すぎて売場の在庫がゼロになると、販売機会を損失してしまう。それを防ぐために、1日の販売数量から逆算して陳列スペースを決めているわけだ。

 業界や売場によっても異なるが、一般的に店舗の営業時間は来客への対応時間であり、店頭への製品補充などに時間を費やすのはNGとされるのが一般的だ(家電量販店で営業中に品出しを行っているスタッフを見かけることもあるが、あれは店員ではなくメーカーの営業マンかアルバイトであることがほとんどだ)。

 陳列スペースが1列だけだと営業時間中に売り切れて棚に穴が空いてしまう場合、複数の列にまたがって製品を並べることで、その営業時間中に品切れにならないようにするわけである。食品など回転率が高い製品では、この傾向は顕著だ。余談だが、営業時間中の品出しに比較的寛容なコンビニでは複数列にまたがる陳列があまり見られないのも、同じ理由によるものだ。

 言い替えると、定番商品の陳列棚において、複数の列に渡って1つの製品が陳列されているのなら、その製品は売れ筋の製品だとみなして間違いない。現在はPOSデータによる在庫管理が当たり前になっており、売場の担当者もしくはメーカーの営業マンの裁量で、売れない製品を複数の列に並べるといったことは、よほどの事情がない限りはあり得ない。押し出された他製品の販売機会が減少し、トータルでの売上を減らしかねないからだ。

 このことを知っておくと、店頭で製品選びに迷った際に役立てることができる。つまり、複数の列にまたがって陳列されている製品のほうが、それだけ多くの人に支持されており、当たりである可能性が高いというわけだ。似たような2つの製品のどちらにするか迷った際、陳列スペースが広いほうの製品を選んでおけばハズレを回避しやすいという意味で、この法則は役に立つ。

 もっとも、店頭陳列で目立つ製品を手に取りやすいのは当たり前であり、これまでも習慣でなんとなくそうしていた人はいるだろうが、このような裏付けを知っておくと、納得して選べるはずだ。もちろん、それを知ったうえで、あえてレアなほうにチャレンジするというのも、それはそれで1つの生き方ではある。

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