連載
» 2015年03月10日 14時00分 UPDATE

本田雅一のクロスオーバーデジタル:「新しいMacBook」は過去を捨て、どのように変わったか? (1/3)

新世代MacBook Airとうわさされた12型の薄型軽量ノートは、予想外の「MacBook」だった。その大胆な仕様は万人に受け入れられるまで少し時間がかかるかもしれないが、今後のノートブックコンピュータを変えていく可能性も秘めている。

[本田雅一,ITmedia]

ふたを開けてみれば「新しいMacBook」だった

 最初にうわさが出始めたのは2014年夏だから、すでに半年以上の時間が経過している。「MacBook Air」の新世代モデルと言われた製品は、何の修飾もない、ただの「MacBook」として発表された。

 しかし、この「新しいMacBook」は、かつて存在したベーシックグレードのMacBookとは異なる。新しいMacBookは、互換性という呪縛から解き放たれたまったく新しい、過去にとらわれることのないノートブックコンピュータとして企画されていたのだ。

tm_1503_macbook_01.jpg MacBook史上で最も薄型軽量のボディを実現した「新しいMacBook」

 キートップ以外にプラスチックパーツを持たない、金属外装とガラスだけで覆われた新しいMacBookは、確かに何らかの工芸品のように美しく、シンプルな外観に包まれているが、デザインがこの製品の本質ではない。MacBookは「ノートブックコンピュータ」という枠組みから想像する製品を変えていく可能性も持っている。

 しかし、あまりにラディカルな仕様は、パーソナルコンピュータとして万人に受け入れられるに至るまでに、少しの時間を必要とするかもしれない。

かつてのベーシック路線ではなく、新しい提案を行うMacBook

 新型MacBookは、MacBook Airの後継になるものと目されていた。なぜなら画面サイズが12型になることがサプライヤーなどの動向から判明していたからだ。超薄型の12型MacBookならば、11.6型と13.3型のMacBook Airはラインアップから不要になる。

 ところが、MacBook Airシリーズは11.6型、13.3型ともに最新の第5世代インテルCoreプロセッサ搭載の最新モデルに衣替えされ、本日付けでリニューアル発売されている。「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」の15.4型モデルは対応する第5世代Coreプロセッサが存在しないため新モデルはお預けとなっているが、こちらの13.3型も新モデルが発売となった。

 すなわち12型のMacBookとは、既存ラインアップの系譜には沿っていない「新しいMacBook」だったわけだ。しかし新しいMacBookは、かつて存在したMacBookとは異なり、「最も購入しやすいベーシックなMacBook」ではなくなっている。クラムシェル(貝殻のように開くメカ構造)型のノートブックコンピュータとして、これまでにない新しい提案を行う製品として位置付けられたのだ。

 製品発表を担当したワールドワイドマーケティング担当のフィリップ・シラー上席副社長は、新しいMacBookをハードウェア設計のすばらしさという観点から訴求した。

 重さは約920グラムで、厚みは13.1ミリ。MacBook Airの11.6型モデルが17.3ミリと言えば、その薄さの具合を想像できるだろうか。どの角度から見ても美しく高い質感とデザインを感じることができる。

og_macbook_017.jpg MacBook Airの11.6型モデルと比較して24%ほども薄い、13.1ミリ厚のボディを採用
tm_1503_macbook_02.jpg 新設計の薄型軽量ボディとともに、スペースグレイ、ゴールド、シルバーのカラーバリエーションを用意した

 アップルはこのMacBookで、新しい試みをいくつか試している。新設計のキーボードは、キートップの面が崩れず正確に上下動するため、タイプフィーリングが向上しているという。これは一般的なパンタグラフ構造のメカではなく、左右にチョウの羽根のように広がるバタフライ型のキートップ支持メカニズムが生み出している。

og_macbook_003.jpg 新たにバタフライ構造のキートップ支持メカニズム(右)を採用し、従来のシザー構造(左)よりキートップのぐらつきを抑えた

 12型で2304×1440ピクセルのディスプレイは、Retina式に読み替えると1152×720ピクセル相当と考えがちだが、アップルのWebページによると、サポートされるスケーリング解像度は1440×900、1280×800、1024×640ピクセルの3パターンだそうだ。

og_macbook_002.jpg 12型のRetinaディスプレイは2304×1440ピクセル表示(226ppi/アスペクト比16:10)だ

 Retinaディスプレイ……すなわち高精細液晶ディスプレイを採用する利点は、何より印刷物のような表示の精細感、美しさだが、一方で高精細ディスプレイはバックライトの効率を下げ、消費電力を増大させる。もともと、MacBook AirがRetina対応になるとうわさされたときは、この点が問題になると考えられてきた。

 アップルはRetinaディスプレイ採用による消費電力増大に対して、2つのアプローチから立ち向かっている。

 1つは液晶パネルの開口率を向上させたことだ。配線パターンを移動させるなどの工夫で、従来技術で作られる液晶パネルに比べて30%もの電力を節約できるという。

 新しいMacBookにはMacBook Airの11.6型モデルとほぼ同じ容量のバッテリー(39.7ワットアワー)が搭載されており、どちらもバッテリー駆動時間は最大9時間(ワイヤレスインターネット閲覧時)だ。液晶パネルの工夫だけで従来製品と同じ効率ならば、これで「めでたし」なのだが、残念ながらこれでもRetina化の影響は避けられない。

tm_1503_macbook_03.jpg 液晶パネルの開口率を向上させることで、LEDバックライトの効率を高め、省電力化した

 新しいMacBookがバッテリーで9時間使える理由は、液晶パネルの省電力化とともにインテルのCore Mプロセッサを採用したことが挙げられる。このプロセッサは本来、高性能タブレット/2in1デバイスを開発するためのもので、以前はCore Yプロセッサと呼ばれていたものである。動作周波数は瞬間的にパフォーマンスを引き出すTurbo Boost時を除くと1.1〜1.3GHzだ(同世代のMacBook Airは1.6〜2.2GHzで動作するCore Uプロセッサが使われている)。

 果たして、かつてCore Yプロセッサと言われていた省電力なCore Mで、どこまでパフォーマンスが出るのか。今後のベンチマークテストなどで明らかになると思うが、少なくともアップル自身はCore Mプロセッサで、十分なパフォーマンスを引き出せると考えたのだろう。

 TDP(熱設計電力)が4.5ワットというCore Mプロセッサを前提に設計したことで、冷却ファンを省略し、実装基板も小さくすることができた(Core UプロセッサのTDPは15〜28ワット)。もともとタブレット用として位置付けられているのだから、ファンレスで薄型、長時間バッテリー駆動といった特徴は当然とも言える。

 言い換えれば、新しいMacBookの本質は、タブレット的な軽快かつシンプルな使いやすさなのかもしれない。

og_macbook_010.jpg 省電力なCore Mプロセッサの採用により、ロジックボードのサイズはMacBook Airの11.6型モデルに比べて67%小型化。ファンレス設計を実現しつつ、空いたスペースには段状に作ったリチウムポリマーバッテリーを隙間なく敷き詰め、13.1ミリ厚、約920グラムのボディで最大9時間(ワイヤレスインターネット閲覧時)のバッテリー駆動時間を確保した
       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

-PR-