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» 2015年04月27日 15時30分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:店頭に現物を置かない「カード展示」は“諸刃の剣”か? (1/2)

家電量販店では、製品の現物を展示せず、型番や価格が書かれた「カード」だけを並べている風景をよく見かける。このカードによる展示はさまざまなメリットがある一方、自らの首を締めかねない諸刃(もろは)の剣でもあるのだ。

[牧ノブユキ,ITmedia]

中小規模クラスの家電量販店舗で増えるカード展示

 家電量販店の大型化というのは、ここ10年ほどのひとつのトレンドだ。飲食店やテナントを入れた売場面積1万平方メートルクラスの大型店がターミナル駅近郊を中心に続々とオープンしており、多くの店舗では書籍や玩具、旅行用品なども扱っていることから、家電量販店以外への影響も大きい。

 こうした店舗では、あまりにもフロア面積を広げすぎたことで、かえって展示スペースがスカスカになっている事例も少なくないが、それでもあらゆる製品を展示できるだけの余裕があり、ゆったりとした通路も手伝って、多くの客が気軽に立ち寄れる雰囲気を醸成している。中小規模クラスの店舗は限られたフロア面積の中でこれら大型店に対抗しなくてはならず、苦戦を強いられている状況だ。

 これらの動きに連動する形で中小規模クラスの店舗で顕著に見られるのが、製品の現物ではなく、型番や価格が書かれたカードを並べる売場が増えていることだ。はがき半分程度のサイズのこれらカードには、製品の型番やバーコードが書かれており、これをレジに持参すれば、バックヤードから製品を取り出してきてもらえるという仕組みである。カードはメーカーが用意している場合もあれば、店舗が独自に作ってラミネート加工を施したものまで、形状や様式はさまざまだ。

 このカード、PCラックやチェアなど、サイズが大きく売り場が確保しづらい商品や、容量違いとカラーバリエーションの多いUSBメモリやメモリカードなど小型の製品では以前からポピュラーだった。しかし、近年はそれまで現物が展示されていたような周辺機器でも見かける機会が増え、PC周辺のあらゆる製品に及びつつある。今回はこうしたカードによる陳列が増加する背景について見ていこう。

限られたスペースでの効率的な展示以外のメリットも

 これら展示カードを使う利点は、言うまでもなく、限られたスペースで多数の製品を陳列できることにある。フロアスペースが狭い店舗において、売り場が狭いからといって売れ筋の製品だけを並べているようでは、客に選ぶ楽しみを提供することはできず、冒頭で述べたような大型店には対抗できない。かといって物理的に置き場は限られているので、あらゆる製品を売り場に詰め込むのは不可能だ。

 ではどうするかというと、カードを並べることで、コンパクトなスペースで製品の「顔見せ」をしてやるわけである。製品そのものをズラリと並べる展示には劣るものの、限られたスペースの中では最大限の効果を発揮する。少なくとも、製品の取り扱いの有無を一切明示していない状態よりははるかにマシだ。サイズ違いやカラーバリエーションがあれば、それを明確に示すことで接客の手間を減らせるという利点もある。

 製品そのものを並べるのに比べて、客がレジに持って行きやすいのも利点だ。現物または空パッケージを手に抱えるのはかさばるが、カードならさっとつまんでレジに向かえる。購入にあたってのハードルを低下させるのにもってこいというわけだ。

 これが転じて、持って帰りにくい巨大なパッケージを隠す目的でも使われる。パッケージがあまりにも巨大であることを店頭で目撃したユーザーは、帰宅してからWebで注文したほうがよいと考えがちだ。その点、カードによる展示であれば、事前にパッケージサイズが確認できないため、バックヤードから店員が在庫を引っ張り出してきた際には、それがどれだけ巨大でも、断りにくい状況ができてしまっている。

 もうひとつ、万引き対策としても有効だ。USBメモリやメモリカードは、現物を店頭に並べておくと、そのパッケージの小ささゆえ、サッとポケットに入れられてしまいがちだ。単価が安い製品ならまだしも、これら製品の中には1万円を超える大容量の製品も珍しくないので、店にとってはダメージが大きい。カードによる展示であれば、こうした心配もなくなり、本来の目的である容量違いやカラーバリエーションごとの陳列にも効果的だ。

在庫があるか分からないことを逆手に取った利点とは?

 ここまで見てきたのとは別に、店にとってその意図が知られるとあまり都合のよくない理由もある。ひとつは在庫金額の削減だ。カードだけの展示なら、実際にはほんの1〜2台しかバックヤードに在庫がない場合でも、在庫が潤沢にあるように見せることができる。一般的には、カードの枚数イコール在庫数と考えられているので、その裏をつき、多くのカードを店頭にぶら下げておくことで、ボリューム感を出すわけである。

 この「共犯」として使われるのが空パッケージである。店頭で山積みをする際にボリュームを出す目的で使われる空パッケージを併用すれば、限られた在庫数で売場のボリュームを演出しつつ、客がレジに足を運ぶのを促すことができる。窓があって中身が見られるパッケージやブリスターパッケージではなく、HDDやルータ、ソフトウェアなど、中身の見えない箱のパッケージが山積みになっていれば、こうした目的で使われていることが多い。

 こうした場合に、在庫が完全にゼロになってしまうと客との間にトラブルが発生しそうなものだが、実際にはそうでもない。いったん客にアクションを起こさせてしまえば、ケースバイケースで同等製品を案内したり、上位モデルを値引きして提供したり、あるいは受注発注に切り替えたりと、いかようにでも対応できるからだ。

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