「弘法筆を選ばず」ということわざがある一方、デジタル全盛の現代では、利用するPCによって1つの作品を仕上げる時間がかなり変わってくる。中でも3DCGは処理が重く、表示の精細さや光の当たり方などにこだわっていくと、マシンへの負荷もどんどん高くなっていく。
それでは最新の業務向けPCは、どこまで作り手の要求に応えてくれるのだろうか。今回は、サイコムのワークステーション「Lepton WS2450Z97-A」を用意。Shadeの達人として知られるIKEDA氏らクリエイターにお願いして実力を確かめてもらい、さらに3Dクリエイターを取り巻く現状について語ってもらった(聞き手:広田稔)。
―― IKEDAさん、前回のインタビューからお久しぶりです。そのときに趣味で作っていたフル3DCGアニメは完成しましたか?
IKEDA 実はまだ製作中で、5月中にネットに投稿できればと思ってます。CGだけでなく音楽も自分で作っていたのですが、いろいろなご縁があって音楽プロデューサーの田辺恵二さんにアレンジしていただけることになりました。AKBやw-indsなどの楽曲にアレンジャーとして参加していて、レコード大賞の金賞を編曲家として2回も受賞している方です。
―― 謎のすごい展開になってますね。
IKEDA さらに田辺さん経由で、フォルクスワーゲンやグーグルのCM曲を手掛けてるナカシマヤスヒロさんがオーケストレーション担当、ギターはギターマガジンチャンピオンシップにて2014審査員特別賞を受賞している西山昌一郎さんに関わっていただき、ものすごくブラッシュアップされました。その音に合わせて、映像もちょこちょこアップデートしています。
―― 完全に「プロたちの犯行」だ(笑)
IKEDA あとは2014年9月に設立した「3D PETSHOP」という企業に取締役、兼チーフデザイナーとして参加するようになりました。
―― おおっ。どんな業務内容なんですか?
IKEDA 業務用の3Dプリンタを使って、愛犬や愛猫などのペットをフィギュアとして出力するサービスです。写真1枚から3Dモデルを起こせるので、例えば、子供のころに飼っていたペットでもフィギュア化できるんです。
―― そういえば前回取材したときも、壇蜜さんのフィギュアを作ってましたね。しかし写真1枚からの3Dモデリングはかなり大変そうですが。
IKEDA ペットって、愛着がある「我が子」なので、ちょっとでも違うと「うちの子はこんなのじゃないんだけど」とお客様が不満を持ってしまう。だから突き詰めてやってくれるクリエイターでないとお願いできないのですが、ご縁があって制作チームに「ぽん」さんが加わってくれました。
ぽん よろしくお願いします。
IKEDA ぽんさんのことはShadeのクリエイターとして知っていたのですが、お会いしてよくよく聞いてみるとShadeやMetasequoia(3Dモデリングソフト)の書籍も執筆してる方でした。
―― なんと! 3Dプリンタでペットフィギュアというと、やっぱり画面で見るCGとは作り方が違ったりするんでしょうか?
ぽん そうなんです。例えば、同じアニメのキャラクターでも、映像用とフィギュア用ではモデリングの細部が変わってくるんですよ。目の位置や鼻の形とか、アニメにしたときにいい感じに見える“2Dならではの嘘”ってあるじゃないですか。それをそのままフィギュアにしようとしてキャラクターの資料を見ると、正面と横で目や鼻の位置が違ったりするんです。
―― 困りますね。
ぽん なので最終的なポーズをつけたときのイメージに寄せるように、こちらで解釈して目や鼻を微調整していきます。ほかにも画面上の見た目を重視するあまり、耳をペラペラにしてしまうと、立体になったときに折れやすくなってしまうんです。もとのデザインを崩さないようにしつつ、強度も意図して3Dモデルを作ります。
―― 3Dプリンタというと素材が樹脂で、そもそも弱そうなイメージがあります。
ぽん いろいろな種類があるんですよ。3D PETSHOPでは、樹脂より丈夫な粉末石膏の務用3Dプリンタを使っています。しかも単色ではなく、フルカラーで出力できるんです。この前、ワンフェス(ガレージキットのイベント)に出展したときは、アクリルの業務用3Dプリンタを利用しましたが、細くとがった部分もきれいに出力してくれました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.