「コンピュータとの会話が日常になる未来」を示したMicrosoft本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2016年04月03日 07時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Botの活用で適用範囲を広げるCortana

 そのCortanaが、前述したAnniversary Updateと呼ばれるWindows 10の大幅なアップデートで大きく進化する。

 例えば「昨日、本田さんから届いたPowerPointファイルはどこ?」と尋ねると、メールクライアントのOutlookで該当するファイルを探し、添付されているファイルをサッと提示してくれるようになるのだ。

 日本語で利用する場合、「本田さん」が差出人名に漢字ではなく「Honda」といったアルファベットを使っている場合にも正しく動くようにするなど、さまざまな工夫が必要になるだろう。連動するサービスも地域ごとに使われているものとの調整が必要だ。言語ごと、地域ごとの機能強化は必要となるが、Microsoftはさらに踏み込んでコンピュータとの対話の「意思疎通」をスムースにしようとしている、というところがポイントだ。

 Cortanaが認知し、アドバイスに応用するのは、あくまでも自分のコンピュータに集まってくる情報のみだ。われわれがネットを調べて知ることが可能な範囲ならば、Cortanaも情報を認知し、アドバイスの質を高めることもできるが、そこから踏み込んでネット上で提供されている情報以上に踏み込んだアドバイスはもらえない。

 しかし、これをMicrosoftは「Conversations as a Platform」というコンセプトを掲げることで解決しようとしている。Conversations as a PlatformをMicrosoftは「プラットフォームとしての会話」と呼んでいる。

 Microsoftは長年、自然言語と機械知能(人工知能というよりも、膨大な情報を認知し、その中から適切な情報を会話で絞り込んでいくコグニティブコンビューティングに近い)の組み合わせを研究してきた。

 その成果をプラットフォームとしてまとめ上げ、Microsoft Azure(クラウド)、Office 365(生産性アプリ)、Windowsプラットフォーム(コンピュータ動作基盤)上で自由に使えるようにしたうえで、サードパーティーがそれらの基盤を活用し、拡張できる環境を提供しようとしているのだ。

 一連の新機能群の中には、SkypeやLINE、電子メールやSMSを用いた対話を、Windowsプラットフォームに対して提供するというものもある。例えば、SkypeやLINEの中にCortanaとの会話スレッドが作れるようになり、そこを起点にさまざまなBot(ボット:対話型の自動応答問題解決システム)と連動するようなアプリケーションを構築できる。

Skype内のCortana Skypeに作られたCortanaとの会話スレッド。Cortanaとの会話とBotを結び付け、高度な提案や操作に対応するようになる

 Cortana対応版Skypeの中でCortanaに「来月、第2金曜日の夜から3日間、京都駅前に泊まりたい」と依頼したとしよう。すると、Cortanaは京都駅近くのホテルを「いかがですか?」とオススメしてくる。ここまではよくある話だ。

 そこでCortanaに、「じゃあ、オススメのホテルを予約したい」と返答すると、予約をホテルに伝えたうえで、ホテルが提供しているBotにバトンタッチする。そのまま同じスレッドで、ホテルが提供する(すなわち、ホテルに関してエキスパートの)Botが、部屋のタイプや宿泊人数などをユーザーに確認し、幾つかのリクエストを受け付けて部屋の予約を終えるところまでをサポート。その後、Cortanaにバトンが戻る。

 するとCortanaは「京都には友人が住んでいますが、連絡しますか?」と尋ねてくる。もちろん、ここで断ってもいいが、そのままSkypeで友人に連絡を取って予定を合わせたとしよう。すると、今度はSkype上のスレッドでCortanaが「レストランを予約しましょうか?」と尋ねてくれる。気に入ったレストランを提案してくれたなら、「じゃあ、予約してね」とCortanaにお願いすれば、オンラインでの予約が完了する。

ホテルのBot例 Skypeのアプリ内でCortanaとの会話からWestinホテルのBotにバトンタッチ。ホテル側のBotがより細かなリクエストを受け付けて、部屋の予約を終えるまでサポートする

 SkypeによるBotについては、既にプレビュー版が用意されている。上記はあくまでコンセプトだが、「まるで人工知能のようだ」と感じた人もいるだろう。

 しかし、対話の向こう側にあるものが人工知能か、それともIBMの「Watson」のような認知型の知識ベースなのかは、ここではあまり関係ない。Microsoftが注目したのは、自然言語を基礎にした対話を用いたコンピュータアプリケーション、サービスの使い方、ユーザーインタフェースをプラットフォームとして提供し、Windowsの上に構築しようとしているということだ。

 なお、上記のホテル予約のBotを構築するためのツールとして「Microsoft Bot Framework」がWindows Azureで用意される。あくまでも人工知能ではなく、相手の質問を認識したうえで、認識したキーワードを拾って不足する情報を尋ねたり、情報がそろったら条件に合うオファーを出すといったものだ。

Microsoft Bot Framework MicrosoftはこうしたBotを構築するツールとして、「Microsoft Bot Framework」をWindows Azureに用意する

 デモではドミノピザ向けのBot構築を見せたが、「認識できない質問」に対する対応は興味深い。うまく認識できない質問をされた場合、Botが「よく分からないので人を呼びます」と応じた後、実際に人が対応するのかと思いきや、サポート担当者がうまく認識していないキーワードを手動で指定し、Botが次のステップに進めるよう手助けをし、それを学習するように作られている。

ドミノピザ向けのBot構築例 Microsoft Bot Frameworkを利用したドミノピザ向けのBot構築例

 Botを簡単に構築できるようにしたうえで、SkyeやLINEを通じた対話型のネットワークサービス利用を進めようというわけだ。このようにSkypeやLINEを対話のインタフェースとすることを「Conversation Canvas」とMicrosoftは呼び、Canvasはプラグインを追加することで増やすことができる。

 なお、MicrosoftはAndroidやiOSにも、アプリという形でCortanaを提供しているため、iPhoneやAndroidスマートフォンからも利用可能になるだろう。

Conversation Canvas Botを簡単に構築できるようにしたうえで、SkypeやLINEを対話のインタフェースとすることを「Conversation Canvas」とMicrosoftは呼ぶ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月18日 更新
  1. ついに8K対応した「Insta360 X4」の画質をX3と1インチ360度版で比較 今買うべき全天球カメラだと確信した (2024年04月16日)
  2. バッファロー製Wi-Fiルーターに脆弱性 対象機種は今すぐファームウェア更新を (2024年04月17日)
  3. 「JBL GO 4」でBluetoothスピーカーデビュー! 累計出荷台数5700万台を突破した人気製品の最新モデルを試す (2024年04月17日)
  4. AI対応でCore Ultraよりも高いパフォーマンスをアピール! 企業PC向け「Ryzen PRO 8000シリーズ」登場 (2024年04月16日)
  5. SwitchBotのミニプラグに不具合 「断続的にオン/オフを繰り返す、異音」などで該当製品の交換を呼びかけ (2024年04月17日)
  6. Synology「BeeStation」はNASより便利な一面も 家族の“秘密”も守れるストレージ、共有リンクや写真管理もある (2024年04月16日)
  7. 「ASUS ZenScreen MB16QHG」は従来モデルの弱点を解消した高評価の16型モバイルディスプレイだ (2024年04月16日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. 無線LANルーター「Aterm」シリーズの一部に複数の脆弱性 設定変更や買い替えをアナウンス (2024年04月11日)
  10. NVIDIA、Ampereアーキテクチャを採用したシングルスロット設計のデスクトップ向けGPU「NVIDIA RTX A400/A1000」を発表 (2024年04月17日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー