さてさて、やっと本題です。やはり興味があるのはがっつり使っていけるのかという事だと思います。そこで、評価機をお借りしている間に実際にお仕事のメイン機として3枚ほど、着手から完了まで使ってみました。
まずは慣れた姿勢で使いたかったので、それまで使っていた液晶ペンタブレットにマウントします。マウンターはアクリル板を曲げた自作です。アクリル板カッターと曲げヒーターを持っていると、これ以外にもスマホスタンドやタブレットスタンドを好きなように作りまくれるので大変便利です。
描き味は滅茶苦茶に良いです。高解像度も相まって、相当に小さい表示サイズで指先をちょこちょこ動かすような、いわゆる「ノートにシャーペン」スタイルで描いても、粗さを気にせずに描くことができます。
また、ガラスの大変細かいアンチグレア処理が滑らかな摩擦にも寄与していて、従来機よりも止まった時から動き出しへの引っかかり、動静の摩擦係数の差が小さいように感じました。
細かいアンチグレア処理はスマホなどで試してギラツキで懲りた方もいるかと思いますが、これは画素と凹凸のサイズが近いことによって起こる干渉です。Cintiq Pro 16では、画素に対して十分に細かい凹凸にすることでこれを回避しています。正確には、のぞき込めば微妙に色がザラついているのは分かるけれども、印刷物の網点より細かいぐらいなので気にならないし、目が疲れる感じでもないです。一定の摩擦と目に優しい状態が両立されていて、とても丁寧な仕様だと思います。
Cintiq Proシリーズと、MobileStudio Proシリーズから、8192段階の筆圧を検知できる新仕様の「プロペン2」が導入されました。正直なところ、ワコム製品の筆圧レスポンスは元々完成度が高く、計測でもしない限り「滑らかになった!」などと分かりやすいものではないので、自然に感じるならそれでいいのだと思います。実感としては弱い筆圧を積極的に使いやすくなったと感じています。
ペンは普通に筆圧をかけているときの正確さだけでなく、筆圧ゼロに限りなく近いときに、いかに自然に描けるかも大事です。数千段階といった大きい数字でアピールすることはできませんが、ワコムのペンは少し前からその領域が主な強みになっているように感じます。ペンが紙に振れればインクがつく、鉛筆で紙を薄く撫でればごく薄い線がつく、こういう当たり前だったことが、取り戻されてきているんじゃないでしょうか。問題はそういう描き方を忘れたデジ絵師の自分なんですが……。
仕様表を見ると読取分解能や読取精度は旧機種から変わっていないように見えるのですが、実感としては高精度になったように感じられます。iPad ProとApple Pencilを使った時にも圧倒的な精度感を感じたのですが、もしかしたらこういった精度感は、画面解像度とデバイスの精度がそろった時に感じられるものなのかもしれませんね。
15.6型というサイズについては、21型からの移行ですがほとんど問題ありませんでした。まだ腕を振って描くクセが残っているので拡大して描いてしまって、なかなか高解像の部分を生かせませんでした。また、縦原稿が多いので画面の横幅には常に余裕を感じ、縦幅には余裕のなさを感じていました。実際に、12.9インチiPad Proを横置きしたときの画面高さと15.6型の本機の画面高さがほぼ同じですが、iPad Proは容易に縦置きができるので縦原稿では余裕があります。
横幅に対して縦が短いのは仕方ないですが、総合的に見て狭いのではないかという心配については杞憂(きゆう)でした。そもそもモバイルでない用途の、intuosのLargeの読取範囲よりも広いのです。これで足りないとはあまり思えませんでした。ただし、大型液晶ペンタブレットの伸び伸びと描ける感覚も気持ちの良いもので、これより大きいものが不要ということも全くないと思います。
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