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» 2017年09月23日 07時30分 公開

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:購入者が知らない、店頭サンプル品をめぐる醜い争い (1/2)

量販店店頭における製品のサンプル展示は、通販サイトへの対抗策という意味もあり注力する店が増えつつある。そこで用いられるサンプル製品は基本的にメーカーが負担するわけだが、現場ではその伝票処理を巡ってさまざまなせめぎ合いがある。

[牧ノブユキ,ITmedia]
work around

 量販店でよく目にするのが、製品の実機サンプルだ。製品の使い勝手や重量を客に体験してもらうための実機サンプルは、通販サイトに対抗するための差異化要因の1つであり、多くの量販店が注力するようになりつつある。また最近ではスマートフォン用ケースのように、実機に装着して試せるようにサンプルをぶら下げるなど、アクセサリー類についてもサンプル展示を行う例が増えている。

 こうした店頭展示用の実機サンプル(以下展示サンプル)は、ほとんどの場合、本物の製品がそのまま使われる。さすがに高額なハードウェアについては内部が空になった、いわゆるモックの展示で代替する場合もあるが、それだとサイズを把握してもらうことはできても、実際に使い勝手を確認してもらったり、重量を体感してもらったりはできない。それゆえ、本物の製品を1つ開封して、盗難防止の対策を施したうえで、展示サンプルとして店頭に陳列するわけである。

 ところでこの場合、展示サンプルの費用はメーカーが持つのか、店が持つのか、興味を持ったことはないだろうか。結論から言うとメーカー負担が原則なのだが、こうした展示サンプルをめぐり、現場ではさまざまなせめぎ合いがある。

 今回はこうした展示サンプルの裏側と、それに関連する話題として、メーカー関係者を経由して製品を安価に購入するための裏ワザについても見ていこう。

実はややこしい展示サンプルの伝票処理

 展示サンプルはあらゆる製品に必要となるわけではなく、実機を陳列することで売り上げの向上が見込める製品に限られる。そもそも展示サンプルを陳列するとなると、製品の陳列スペースとは別に、棚に置き場所が必要になるわけで、それらの取捨選択の決定権は販売店の担当者にある。メーカーから提案する場合もあるが、高額すぎるなどの理由でメーカーが断る場合を除けば、最終的に判断するのは販売店側だ。

 メーカーはこうした販売店の意向を受けて社内でサンプル稟議(りんぎ)を起こし、展示サンプル用の製品を販売店に出荷するわけだが、このことは販売店側から見ると少々ややこしい。というのも、全く同じ製品でありながら、伝票に単価が入った販売用の在庫品と、伝票でゼロ円となっている展示サンプルが、まとめて届くことになるからだ。

 量販店にもよるが、メーカーから届いた梱包(こんぽう)を解いて荷受け場から売り場に届ける作業を、売り場とは無関係な荷受け担当者が行っていたり、あるいは売り場の担当者につくアルバイトやパートが行っていたりする場合もある。

 それゆえ、展示サンプルとして届いた品を誤って在庫に混ぜてしまうこともよくある。棚卸し時にどうしても在庫数が合わず、調べた結果サンプルが含まれていることが発覚した……というケースは後を絶たない。

 こうしたトラブルを防ぐため、展示サンプル品を新規に出荷するのではなく、店頭に並んでいる在庫品の1つを開封して展示サンプルに転用し、後で値引き伝票を切って相殺する方法もよく用いられる。展示サンプルを新規に手配すると到着まで何日かかかるが、この方法であれば話が出た時点で即対応できるし、また在庫がやや過剰で棚からあふれている場合などは、在庫数を1つ減らせるという利点がある。

 といった具合なのだが、中にはこの複雑な仕組みを悪用しようとする販売店の店員もいる。具体的には、展示サンプルが届いているにもかかわらず届いていないと言い張り、メーカーからもう1個展示サンプルをせしめ、先に到着した1個は原価0円ながら値札を付けて販売することで、そのぶん多くの利益を得るという手口だ。

 数百円のアクセサリー程度であれば、メーカー側も行方不明になった1つや2つの行方を徹底調査するより、不問にして新規にサンプルを1つ手配しましょうとなるので、このワザは意外と有効である。

 また、製品が定番から外れてメーカー返品になる際に、展示サンプルを在庫品に混ぜて返品してくる担当者もいる。つまり原価0円で手配しておきながら、在庫の1つとして返品することで、1個ぶんの原価をバックしてもらおうとするわけである。

 メーカーの担当者が途中で交代して、展示サンプル手配の経緯を現担当者が把握していない場合、店頭に並んでいる展示サンプルはまるで在庫の1つだったようなフリをして、このような行為に及ぶ店員もいる。

 一方、ずる賢いメーカー側の営業マンもいる。具体的には、サンプルぶんの値引きを行わずにうやむやにしようとする。あるいは定番から外れて返品する際に初めて値引き伝票を切るので、当面はそのままにしてほしいと売り場の担当者に泣きつき、いざその段になってみると別の担当者に交代していて、次の担当者が値引き処理をさせられる(当然、その担当者の売り上げからマイナスされる)というケースだ。

 実際のところ、サンプルとして値引き処理をしないまま万引きに遭うと、店にとっては損失にしかならないので、在庫からサンプルに転用する場合、なるべく早めにメーカーに伝票を切らせなくてはいけない。しかし中にはずる賢いメーカーの営業マンもいて、伝票を切らないまま、粘りに粘る人もいたりするのだ。

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