このように順を追っていくと、今後、伸びていくメーカーやブランドは、「ユーザーインタフェース技術に長けたところ」、あるいは「最終製品でエンドユーザーとの関係構築に長けたところ」になってくる。
そもそもAppleが長期的に伸びてきたのは、ユーザー体験の演出、インタフェース設計の良さが理由だった。その後、ものづくりの面でも他社にないアプローチで品質面でも他社を突き放したが、Appleの品質が改善したのはMacで言えばアルミ削り出し筐体のユニボディーを始めてから、iPhoneで言えば「iPhone 4」の世代からだった。
一方でソニーは戦略の喪失とユーザー体験追求の甘さ、コストダウンによる影響でガラクタを量産していたが、現在の平井社長体制になってからは「ラストワンインチ」をキーワードに、手に触れる商品の質感やデザイン、ユーザーインタフェースに力を入れるようになり業績を急回復させている。
商品が単純に良くなったというだけでなく、パーソナルコンピューティング、デジタル製品などの市場全体がクラウドシフトになじんできた結果、クラウドと利用者の間をつなぐ製品の体験へと、消費者の求める価値観が変化したと考えるべきだと思う。
以前ならば、細かな実装の良しあしよりも、少しでも多くの性能を、機能を求めていたが、アプリケーションのコアがクラウドにあるならば、ユーザーが直接触れる製品に求めるのは体験の質である。
PCの場合、元よりコンピュータとしてのハードウェアはプラットフォーム、フレームワークがしっかりしているため、プロセッサのパフォーマンスなどの要素では差異化がしにくくなる。「コスト対パフォーマンス」の関係性がプラットフォームに依存しているからだ。
その上で差異化できるとしたら、ユーザーインタフェースやモノとしての質感など、よりエンドユーザーに近い部分だ。以前、Intelのプラットフォーム、プロセッサなどのブランド化が進んだことがあったが、現在はそのブランドシールの意味も希薄化してきていないだろうか。
どんなプラットフォームを選択しているかよりも、その製品自身の作り、位置付け、狙いなどの方がずっと製品を選ぶ上で重要になってきているからだと思う。そうした観点からすると、あるいは2018年は「新しいPCを買いたい」と思える、新コンセプトの商品が登場することに期待が持てるのかもしれない。
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