「肉の隣にタレ」商法はPC売り場でも通用するのか牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2018年03月01日 13時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
work around

 家電量販店のPC売り場に足を運ぶと、陳列されているデモ機の横に、そのPCと組み合わせて使うアクセサリーが陳列されていることがある。PCであればケーブルやキャリングケース、タブレットであれば保護フィルムやカバーといった具合に、それぞれの製品に対応する製品が、小さな什器(じゅうき)に展示されたり、あるいは背後のフックに掛けられる形で売られている。

 こうした関連アイテムを本体となる製品と並べる販売手法は、もともと食品売り場などでよく行われていたものだが(食肉の近くに焼肉のタレなどの調味料が置かれた光景は誰もが見たことがあるだろう)、PC売り場でもいつしか取り入れられるようになり、最近ではすっかり見慣れた光景となった。

 しかし、こうした陳列方法を採っている店舗で、実際にそれらアクセサリーを手に取ってレジに向かう客を目にしたことがある人は、ほとんどいないのではないだろうか。事実、これらの製品は、決して売れているとは言い難い。そのため在庫の定数もほんの少しで、ともすれば見逃してしまうこともしばしばだ。

 しかしながら、こうした陳列スタイルは、ほとんどの家電量販店で採用されていることからも分かるように、売り場からは支持されており、またアクセサリーメーカーも協力的な姿勢を見せている。どのような裏事情があるのかを見ていこう。

本体の横に並べることで広告的な効果が見込める

 そもそもPCなどで使うアクセサリーを購入する場合、多くの人はPC本体の売り場を素通りして、その隣にあるアクセサリーの売り場に直行するのが一般的だ。そちらの方が品ぞろえが充実しており、複数の製品を比較できるのだから当然である。そうした意味からも、PC本体の横で売られているアクセサリーは、在庫が全く動かなくとも不思議ではない。

 では、こうした関連アイテムを販売しているアクセサリーメーカーは、一体何のためにPC本体の近くにこれら製品を陳列しているのだろうか。大きく分けて、3つの理由が存在する。

 まず1つは、広告的な効果だ。PC本体の隣に自社の製品を並べておけば、それはさも公式なオプションパーツか、そうでなくてもその家電量販店のお墨付きアイテムのように見える。その場では購入してもらえなくとも、サブリミナル的に脳裏に残るようになれば、長期的な視点で売り上げにつながるというわけだ。

 PCを買いに訪れた客本人だけでなく、その家族や友人に対するアピールとしても効果的だ。PCのような高額製品を家電量販店に買いに訪れるユーザーは、大抵が2人連れ以上である。購入者本人が店員にあれやこれやと質問をしたり、価格交渉をしたりしている間、同行者は手持ち無沙汰になる。

 こうしたときに、PCの隣に並ぶこれら関連アイテムの存在を知ってもらえれば、早ければその当日に売り場を離れる際、そうでなくても購入後しばらくたってから「こんなアクセサリーが使えるみたいだけど、買ってみたら?」といった具合に助言してもらえる可能性が生まれる。

 アクセサリー売り場にだけ陳列していては、こうしたきっかけは作れない。わざわざPC売場に“出張”してきてまで、陳列しておく意味は十分にあるというわけだ。

アクセサリーメーカーにはおいしい初回の売り上げ

 以上のように広告的な側面もあるのだが、もちろん売り上げ面の貢献もないわけではない。導入後に在庫が全く動かなかったとしても、アクセサリーメーカーにとっては店舗に納入した時点で売り上げが立つわけで、つまり関連アイテムコーナーを作れば作るほど、売り上げが上がることになる。

 どのくらいの売り上げになるのか、実際に試算してみよう。例えば、とあるPC本体の横に、2種類のケーブルを在庫定数3個で陳列したとする。仕入値が500円として6本で3000円。規模の大きな家電量販店チェーンであれば、全国店舗に同様のコーナーが設けられるので、その全てに導入すれば、仮に100店舗とすると3000円×100で30万円となる。

 これはあくまで1つのPCの場合なので、それぞれのPCごとにこうした関連アイテムの陳列を行うとなると、この金額が5倍、10倍と増えていく。PCごとにではなく島ごとに設置したとしても、そこそこのボリュームだ。それぞれに専用什器を用意したとしても、十分な売上額が見込めるというわけだ。特にケーブルなどであれば利幅も大きいので、利益の額もそこそこ出る。

 もちろん、在庫の回転があまり見込めない製品を大量に店頭に突っ込むと、将来的に返品になるリスクもある。とはいえ、仮にそれをしなければ、競合他社が同じように導入を図ろうとするのは明らかであり、他社の参入をブロックする意味でも、ある程度の在庫は突っ込んでおかなくてはいけない。売り場の店員に「これを売らなくてはいけない」という意識付けをするという点でも有益だ。

 また、やむを得ず返品になったとしても、1〜2年サイクルで担当が入れ替わることの多いアクセサリーメーカーの営業担当からすると、その返品を引き取るのは自分ではなく、後任の担当者ということになる。つまり初回の売り上げの数字だけは自分の手柄としていただいて、返品のマイナスは後任担当者が被るので、痛くもかゆくもない。

 こうして、ともすれば過剰と思えるような在庫がドサッと家電量販店に送りつけられ、PCの横に陳列されるというわけだ。

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