Microsoftがアプリ戦略をアップデート 新形式「MSIX」でモダン化は進むか鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2018年06月07日 16時30分 公開

 Microsoftが新しいアプリのパッケージング形式「MSIX」を提案している。米ワシントン州シアトルで5月上旬に開催されたMicrosoftの開発者会議「Build 2018」ではさまざまな発表が行われたが、このMSIXも注目すべきポイントの1つだ。

 近年の同社は、Microsoftストアならびに、そこでのアプリ配信形式である「UWP(Universal Windows Platform)」を推進してきたが、MSIXは従来のデスクトップアプリ配信形式であるWindows Installer「MSI(.msi)」の後継となるだけでなく、このUWPのベースとなる「APPX(.appx)」の特徴も含んだスーパーセットとして機能する。

 今回はこのMSIXの最新情報についてまとめる。

従来のデスクトップアプリを“モダン”化する仕組み

 MSIXは2018年3月初旬に開催された「Windows Developer Day」で初めて紹介されたもので、Win32からWPF、Windows Forms、UWPまで、あらゆる形式のアプリを包含する統合型パッケージング形式だ。仕様そのものは発表時点でオープンソースとして公開されており、GitHubで関連ドキュメントやSDKを確認できる。

 一般に、今日企業ユーザーで利用されている標準的なデスクトップアプリはMSIのインストーラ、またはApp-Vのコンテナ形式で展開されていることが多い。この他、Microsoftはビジネス向けMicrosoftストアも用意しており、企業用にカスタマイズされたプライベートストアを使って従業員のデバイスにUWPアプリ(APPX)の配布が可能だ。既存のデスクトップアプリをUWPに変換する「Desktop Bridge」もこの範囲に含まれる。

 MSIXは、こうした異なる3つの配信形式を包含するスーパーセットとして機能する。Win32を含む従来型アプリをサポートしつつ、UWPの特徴を備えてビジネス向けMicrosoftストアのような“モダン”な配信プラットフォームも利用できるのだ。

MSIX MSIやApp-Vを使った従来型のアプリ配信
MSIX MSIX形式を利用することで、最新のアプリ配信・管理の仕組みを利用できる

 なぜMSIXのような仕組みが必要なのか、その一番の理由はアプリのライフサイクル管理にある。企業内で展開されるアプリは不定期にアップデートが実施され、その度にクライアントPCへの再配布が発生する。この作業はOSアップデートが行われる度に検証を交えて発生するため、実質的にOSとアプリのいずれかでアップデートがあったときには配信作業が必要になるわけだ。

 Windows 10では「Semi-Annual Channel(SAC)」という仕組みの導入により、春と秋の年2回のアップデートが定められている。Microsoftによれば、このSACの導入に伴い、配信におけるトラブルの回避と管理の容易化を図るべく、MSIXを含む“モダン”な形式への移行が重要になるという。

 マッチポンプ的な印象を受ける部分もあるが、OSが“モダン”化していく中、Windows 7以前の仕組みを維持するのは将来性もなく、2020年の同OS延長サポート終了を見込んだ移行策の1つともいえる。

 MSIXはUWPの特徴も備えているため、関連ファイルは1つにパッケージされており、導入からクリーンアンインストールまでが簡単に行える。差分アップデートにも対応し、アプリのアップデートごとにフルインストール作業が発生することもない。

 また「APPX with Bundle」の形式にもあるように、アプリに必要なリソースファイルを切り出しておき、対応する言語や異なるサイズのアイコンをデバイスの解像度に合わせてパッケージに含めることで、特定のデバイスをターゲットにしたパッケージを構成することが可能だ。これにより、配信のパッケージサイズを縮小することもできる。

MSIX MSIXを利用するメリットは幾つかあるが、UWP的な特徴の他、ブロック単位の差分アップデートなど、配信に関する負荷を低減するものが多い
MSIX アプリに必要なリソースを切り出してパッケージにバンドルしておくことで、インストール時にOSが適切なリソースを選択する
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