メーカーがWeb直販に舵を切りつつあるワケ牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2020年03月31日 16時00分 公開
[牧ノブユキITmedia]
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ポイントは「カテゴリー丸ごとメーカー直販」

 そもそもメーカー直販サイトにしても、2000年代に登場し始めた直後は販売店からの反発が強く、価格は販売店のそれよりも上、かつ在庫も販売店を優先するという建前で、ようやく受け入れられた経緯がある。いまもこれを愚直に守り、定価販売のみを行っているメーカーは少なくない。

 しかし最近は、メーカーの直販サイトはもはや存在して当たり前という風潮が強くなり始め、価格に関しても横並びまでは許容されるようになってきた。そもそもAmazon.co.jpなど大手通販サイトの台頭により、販売店はメーカー直販サイトにだけ目くじらを立てている余裕はなくなってきたのも一因だ。

 そこに来て、今回冒頭で紹介したように、メーカー直販「のみ」という製品が増えつつあるわけだが、各社の状況を観察していると、これまでの経緯を踏まえて、既存販売店の反発を食わないよう、メーカー側が工夫していることがよく分かる。

 その代表例が、シリーズの一部、例えば最上位モデルだけがメーカー直販というスタイルではなく、シリーズもしくはカテゴリー丸ごと、直販にしてしまうことだ。これならば販売店にとって分かりやすく「あのシリーズはメーカー直販だけだから仕入れられない」と諦めもつく。

 もしその上で「やっぱり納得できない。うちにも卸せ」と反発してくる販売店がいれば、「これはテスト販売です」「供給が安定してくれば一般販売の可能性もあります」と言っておけばよい。さらに粘ってくる販売店がいれば、オリジナルのタイアップモデルを作るという話にして一定数を返品不可で買い取らせる話にすり替えれば、販売店の方から音沙汰がなくなる。

考え方のアップデートが必要

 いずれにせよいえることは、メーカーの地位が決して強くなったわけではなく、時代の流れでこうなりつつあるということだ。冒頭のBOSEのニュースが報じられたときは、「リアル店舗の閉鎖=会社がヤバイかも?」という反応がネットのあちこちでみられたが、もはやその考え方自体が古い、というわけである。

 確かにきっかけはリアル店舗でモノが売れなくなったことにあるはずだが、それに合った売り方を模索した結果がオンライン通販へと軸足を移すことであり、イコール会社ヤバイと見なすのは、短絡的過ぎる。そう思ってしまった人は、そろそろ考え方をアップデートする必要があるだろう。

 ところで、こうしたメーカー直販にはもう一つ、Amazonなど既存のオンラインストアを用いていないという特徴がある。これには上記とは全く別の理由があるのだが、次回あらためて紹介したい。

著者:牧ノブユキ(Nobuyuki Maki)

IT機器メーカー、販売店勤務を経てコンサルへ。Googleトレンドを眺めていると1日が終わるのがもっぱらの悩み。無類のチョコミント好き。HPはこちら


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