携帯電話オープン化時代、新たなキャリアの在り方とは――KDDI 高橋氏に聞く(1/3 ページ)

» 2010年07月12日 01時48分 公開
[神尾寿,ITmedia]
Photo KDDI 代表取締役執行役員専務 グループ戦略統括本部長の高橋誠氏

 1999年のiモード登場以降、携帯電話はメールや携帯サイト閲覧、アプリ、メール、画像や音楽などのコンテンツビジネスやeコマースなどを取り込んで、独自の進化を遂げてきた。携帯電話業界の規模もそれに伴って拡大し、ユーザーの裾野はコンシューマー層を中心に隅々にまで広がった。総計約数1億1300万。その9割方は個人ユーザーの手のひらに収まる、“ケータイ”である。

 しかし、日本の人口は1億2000万人。すでにコンシューマー向けのケータイ市場は飽和しており、この10年間の急成長で、コンテンツ/サービス分野の新市場も多くが開拓された。個々のケータイユーザーを増やし、ARPUを大幅に向上させることは年々難しくなっている。

 そのような中で、携帯電話キャリアは新たな成長領域をどのように創りだしていくのか。また、過去10年で構築されたコンテンツ/サービスの仕組みはどのように変化するのか。KDDI 代表取締役執行役員専務 グループ戦略統括本部長の高橋誠氏に聞いた。

iPhoneが象徴した「1つの時代」の終わり

ITmedia(聞き手:神尾寿) 2009年から2010年にかけて、市場環境やモバイル業界の変化が激しくなってきています。この状況をどのように見ていますか。

高橋誠氏 2009年から2010年にかけては、モバイルインターネットの1つの時代が総決算されて、一区切りついた時期と言えるでしょう。そうした環境変化の中で、かなり(Appleの)iPhoneに市場がかき回された(苦笑)。それがこの1年だったのかなあ、と思いますね。

 では、このiPhoneのどこが日本のモバイル業界にとって注目かというと、UIデザインが優れているとか、そういったところだけではない。通信キャリアがいちから(端末やサービスを垂直統合で)作りあげていくという仕組みが、見直される時期にきたという部分なんです。

ITmedia 日本ではキャリアを頂点として、メーカーはOEMのサプライヤーに徹するというモデルでこれまで発展してきました。すなわち、キャリア主導による総力戦で競争してきたわけですけれども、iPhoneはあくまでAppleの製品であり、戦略が第一になっていますね。

高橋氏 そう。ソフトバンクモバイルがすごいんじゃなくて、Appleがすごいんですよ(笑) iPhoneはキャリアにコントロールされていない。これはいい意味も悪い意味もあるのだけれど、キャリアの意思に沿わない端末が日本市場で存在感を増しているということが、とても衝撃的なことなのです。

ITmedia キャリアとメーカーが対等になる。その成功例をiPhoneは作った、と?

高橋氏 対等どころか(ソフトバンクモバイルより)もっと上ですよ、Appleの立ち位置は(笑) 流通・販売にまで口出しするし、コンテンツアグリゲーション、課金プラットフォームの機能まで全部持っている。キャリアからすると、(これらのプラットフォームを)Appleに全部もっていかれるわけです。これは衝撃的であるし、今の時代を表す象徴的な出来事とも言えます。

ITmedia キャリアがすべてをコントロールする。背負い込む時代ではなくなったということでしょうか。

高橋氏 『ユーザーとの接点』という見方をすると分かりやすいのですが、これまではその接点を持っているのは我々キャリアだけでした。しかし、それが変わってきて、新しいプレーヤーが現れてきたということでしょうね。その象徴的な例がApple。こうした動きが、今後はさらに加速していくと予測しています。

「Link→au」を推進する狙い

ITmedia キャリアと、メーカーやコンテンツ/サービスプロバイダーなどステークホルダーとの関係性が変わる。これが次の10年を考える上で、重要になってきていますね。

高橋氏 そのとおりです。我々が「Link→au」を推進する狙いもそこにあって、今後はユーザーとの接点は必ずしもキャリアだけである必要はないのです。Link→auの第1弾は「CAR NAVITIME」なわけですけれど、これはユーザーとの接点が(auではなく)ナビタイムでいい、という考え方に基づいています。

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