携帯電話オープン化時代、新たなキャリアの在り方とは――KDDI 高橋氏に聞く(2/3 ページ)

» 2010年07月12日 01時48分 公開
[神尾寿,ITmedia]

ITmedia 高橋さんは3〜4年前から、キャリアの提供するコンテンツポータルの“入り口”は1つである必要はない。お客様のニーズや利用スタイルにあわせて、入り口は多様化していった方がいい――と主張されていました。その考え方もあって、auは他社に先駆けて公式サイトや端末の待受画面にGoogle検索の機能を盛り込みましたし、グリーなどSNS事業者との資本提携にも積極的に動いた。Link→auの考え方も、文脈的にはこれらと通じるものがありますね。

高橋氏 それ(多様化)は自然なことですからね。これはケータイに限らないのだけれど、若者を中心にして生活価値観が多様化する時代に入ってきている。我々はそうした多様化をプラットフォームとしてどう支えるかを考えなければなりません。

 例えば、コンテンツの世界では最近はSNSの成長が注目されてますが、これもユーザーの接点が多様化し、変わってきただけなのです。一部のマスコミから『GREEやmixiの台頭でキャリアの存在感が希薄になった』と言われることもあるのだけれど、これは間違っていて、我々はSNSの台頭によって(データ通信の)接続や課金プラットフォームが成長している。コンテンツ流通という観点では、SNSの台頭によって(コンテンツ流通量・トラフィックは)増えているわけです。それによってキャリアである我々のプラットフォーム収益も伸びています。

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 このようにユーザーとの接点が多様化し、増えている中でキャリアが重要なのは、こうした多様化の動きをいち早くキャッチし、双方にメリットのある形で関わっていくことなのです。

ITmedia 今後、多様化する接点と、キャリアはどう向き合い関わりを持つか。そこが重要ということですね。

高橋氏 ええ。どちらかが主導権を握るというのではなく、協業していくという考え方がとても大切ですね。その上でキャリアは、パートナーに対して有意義なソリューションを提供してくという姿勢になります。そのための重要な取り組みが、Link→auと言えます。

ITmedia 有意義なソリューションと言いますと?

高橋氏 例えば、CAR NAVITIMEのようなケースですと、これまでだったら通信モジュールを提供して通信回線を売れば(キャリアの関与は)終わりでした。一方、Link→auのスキームは回線を提供するだけでなく、その上でのビジネスモデルを一緒に考えて、そこで必要な機能やスキームを我々が提供していくというものです。

ITmedia 通信回線だけではない、と。

高橋氏 ええ。キャリアが得意とする認証や課金スキーム、広告展開のためのプラットフォーム、商品企画や流通販売の支援など、我々が提供するものは多岐にわたります。

ITmedia それはパッケージ化されているのですか? それともパートナーが利用したい機能・スキームだけを選べるようにモジュール化されているのでしょうか。

高橋氏 基本的な考えは、パートナーに必要な機能・スキームを選んでいただくというものです。そういう意味ではモジュール化されていますね。お互いに協議をして、パートナー企業が自らのリソースを用いる部分と、我々のソリューションを利用する部分を組み合わせていくような感じになります。

ITmedia なるほど。通信を用いた端末・サービスを自ら構築するには、通信回線の部分以外にもさまざまな機能・スキームが必要で、それを用意することが“キャリア以外”の企業には難しかった。それをモジュールとして提供することで、モバイル通信を効果的に使った商品の開発をしやすくするわけですね。

高橋氏 Link→auでは、メーカーとKDDIは対等なアライアンスパートナーであり、お互いの強みを生かして新商品を作っていくという関係になります。今までのケータイのようにキャリアが主導権を握って商品開発をしていただくというものではありませんし、モジュールビジネスのようにキャリアが裏方のサプライヤーに徹するというわけでもない。

ITmedia 世の中には『キャリアは(通信回線だけ売る)土管屋に徹するべきだ』という声もありますが、この10年、キャリアが培ってきたモバイル通信を用いた製品・サービス作りのノウハウは貴重だと考えています。キャリア主導・垂直統合の時代は見直される時期になりましたが、キャリアが単なる土管屋になってしまうのももったいない。その点でLink→auの仕組みは、キャリアがこれまで作りあげた「モバイルビジネスに必要な機能・スキーム」や「ノウハウ」を選んで使えることが大きなメリットですね。

高橋氏 キャリアが単なる土管屋になってしまったら、(料金値下げの)ダンピング競争になってしまいますからね。あと、Link→auの仕組みはスマートフォンでも有効で、こういったオープンOS搭載の端末が主流になっていったら、そこでの差別化要因はアプリケーションになってくる。その時に(メーカーに)うまくLink→auの仕組みを活用してもらってもいいと思う。

ITmedia 将来的には、ケータイやスマートフォンの開発でもLink→auを使うという可能性があるということでしょうか。

高橋氏 それはメーカーの考え方次第ですけれど、私はそれはあるかもしれないと思っていますよ。メーカー主導で端末・サービスを作り、独自のプラットフォームを作りたいけれど、キャリアの持つ(認証・課金やコンテンツの)スキームやプラットフォームも使いたい。そのようなニーズがあるのでしたら、Link→auのモデルで、我々とメーカーがアライアンスを組むことも可能性としては十分に考えられます。

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