Ericssonに聞く、ネットワークの複雑化で注目されるOSS/BSSとは何か:インフラ大手が相次いで買収

» 2012年08月06日 23時59分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Ericssonの戦略開発担当バイスプレジデント、レイ・バリソ(Ray Bariso)氏

 モバイルネットワークの重要性が高まる中、注目されるのがOSS/BSS関連の技術だ。ネットワーク運用を支援するOSS(Operation Support Systems)と顧客管理などのビジネス面を支援するBSS(Business Support Systems)については、通信キャリアが何らかの形でシステムを導入している。

 これまであまり表だって語られることがなかったが、ネットワークやサービスが複雑化する中、通信事業者にとっての重要性が高まっており、Ericssonが専業ベンダーのTelcordiaを買収したのに続き、NECも米ConvergysからBSS事業を買収すると発表している。

 Ericssonの戦略開発担当バイスプレジデント、レイ・バリソ(Ray Bariso)氏に、今、なぜOSS/BSSが注目されているのか、その重要性について聞いた。

――(聞き手 : 末岡洋子)Ericssonは現在、OSS/BSSを強化しています。まずはOSS/BSSについて教えてください。

レイ・バリソ氏(以下バリソ氏) 定義としては、OSS/BSSは通信キャリアの事業全体を支援するものです。ネットワークの提供によりどのぐらい収益を得ているのかを認識したり、ネットワークやサービスの運用状態を把握することができます。

 通信キャリアの事業は銅線、ISDN、DSL、W-CDMA、LTEとさまざまなテレコム技術とビジネスプロセスで支えられており、これらの技術の運用管理と自動化による効率化により、収益を改善できます。ネットワークシステムの運用、システムにあるデータの活用、関与するスタッフの管理と包括的な現状把握を行うためのソリューションがOSS/BSSです。

 具体的には、顧客が新しいサービスを申し込んだときにすぐにアクティベーションしたり、サービス障害が発生したときにすぐに修復したり――といったところを支援します。これにより、顧客満足の改善や収益チャンスの拡大が図れます。中でも、OSS/BSSの重要な要素である「運用管理の自動化」は、手動によるミスを防ぎ、作業の高速化も実現することから大きなメリットをもたらします。

 OSS/BSSは通信キャリアが単純に音声サービスを提供していた時代から、機器のアクティベーション、サービスの配分、課金などのプロセスで利用されており、あらゆる通信キャリアがすでにOSS/BSSを導入しています。

 土台として導入されるシステムなので、表だって語られることは少ないのですが、このところOSS/BSSが注目されている背景としては、テレコム分野で進んでいる無線と有線ネットワークの融合、スマートフォンやタブレットが主役となるモバイルブロードバンドなどが挙げられます。

 無線と有線の融合では、システム運用の簡素化と効率化なくして収益を生むことはできません。モバイルブロードバンドでは、競合や価格のプレッシャーとネットワークへの投資のバランスをとることがこれまでになく重要です。適切なタイミングで新しいサービスを導入しなければ、GoogleなどのOTTプレイヤーが安価なサービスを導入し、事業チャンスと顧客を失う可能性もあります。

―― モバイルネットワークに限定してOSS/BSSで何ができるのか、詳しく教えてください。

バリソ氏 モバイルブロードバンドでは、端末の機種数が増えておりOSもさまざまです。3GとLTEをサポートする端末も増えており、スマートフォン、タブレット、USBドングルなど多様なデバイスがさまざまな帯域レベルを利用しています。つまり、システムは極めて複雑になっており、これまでの自動化では不十分です。

 通信キャリアは北米を中心に、データ利用量を階層化したデータ料金プランの導入をはじめており、ここでは課金管理、サービスのプロビジョニングが重要になっています。また、バックエンドではデータトラフィック増加の対策としてキャパシティを増やすため、有線ネットワークを光ファイバベースにアップグレードする動きが進んでいます。ユーザーが集中する都市などの高密度なエリアでさまざまな情報を収集・分析して効果的にサービスを配信したり、ネットワークのプランニングをすることで、データ利用の需要に対応できます。今現在、これらの多くはさまざまな組織間で電子メールやFAXなどマニュアルでやりとりされており、バックエンド側の自動化も改善の余地がたくさんあります。

―― EricssonのOSS/BSSソリューションの優位性は何でしょうか?

バリソ氏 Telcordia買収により、われわれはナンバー1の通信業界向けOSS/BSSベンダーとなりました。ネットワーク運用管理のコンサルティングからシステム構築、統合まで幅広い技術、知識、コンサルティングを提供します。

 分野としては、次の4つを強化します。

 1つ目はサービス遂行の支援です。顧客からの発注、ネットワークのアクティベーション、自動デバイス設定、遠隔からのデバイス管理など、顧客にサービスを提供するのに必要なビジネスプロセス全体をサポートするもので、Telcordiaはこの分野でナンバー1です。

 2つ目はサービス保証で、顧客の体験に関する分野となります。ネットワークトラブルや顧客が感じているトラブルに対し、ネットワークの状態がどうなっているのか、顧客サービスのオペレーション情報などをモニタリング、収集します。障害発生や顧客がトラブルを報告してから修復までにかかった時間やコストを測定し、短縮を図ります。この分野でわれわれはトップ5に入っています。

 3つ目はリアルタイム課金と売上げ管理です。課金システム、ポリシー管理などで、Ericssonが得意としてきた分野をTelcordiaのソリューションでさらに補完します。

 4つ目はネットワークのプランニング、調整、最適化などとなります。ネットワークの現状を把握して、効率化できるところを探したり、今後のネットワークの運用や拡大に関する計画のコンサルティングを行います。Ericssonはすでに無線ネットワークでこのサービスを提供しており、Telcordia取得によりサポートするビジネスプロセスが増えることになります。

 このように、ソリューションから見るとTelcordiaとの重複は少なく、買収は補完的といえます。また地理的にも、強い地域が異なっており、ブラジルやインドなどの成長市場を強化できます。

―― スマートフォンの普及でデータトラフィックが急増していますが、ネットワーク障害への対応は今後どう変わるのでしょう?

バリソ氏 OSSでEricssonは、ネットワークの状態を包括的に記録するシステムを提供しています。端末がどこでどのように接続されているのか、キャパシティはどこにあり、利用はどうなっているのかなどの情報をネットワーク全体から収集し、すぐに把握できるようにします。これを分析してビジネスプロセスを自動化すれば、ネットワーク障害が起こる前に対応できます。

 通信キャリアは“スマートフォン時代に備え、ネットワーク拡大計画をどうするのか”という点に強い関心を持っており、OSS/BSSの活用や利用の拡大を検討しています。コストとキャパシティの最大活用とタイミングのよいサービスの開始が、これまで以上に重要になっています。

―― 今後どのような強化を図っていくのか、計画を教えてください。

バリソ氏 今後のフォーカスとしては、モバイルブロードバンドのサポート、無線と有線ネットワークの融合、新しいエンタープライズ向けサービスの支援、クラウド、M2Mなどのエリアを強化します。

 Ericssonは数万台規模の基地局のマイグレーションを手がけてきました。システムへの投資と投資回収、オペレーションの合理化、ベストプラクティスの開発、最適化などの点で大手顧客と協業しており、今後も継続します。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月01日 更新
  1. 免許証画像が漏れると何が“ヤバい”のか タイムズカーで最大約660万件の個人情報漏えいで考えられる「3つのリスク」 (2026年09月29日)
  2. 「iPhoneのアプリが起動しない」報告相次ぐ 端末再起動やアプリ削除で解決しない理由 (2026年09月29日)
  3. KDDI、楽天モバイルへのローミング状況を公開 9月末から大幅減 10月から新たな枠組み (2026年09月30日)
  4. 「iOS 27.0.1」配信開始、iPhone 18 ProのFace IDやカメラの不具合を解消 「iOS 26.7.1」も (2026年09月29日)
  5. Nothingは経営危機なのか 黒住氏は日本撤退を否定、値上げは「モデルチェンジのタイミング」で (2026年09月29日)
  6. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  7. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」どちらが買いか? 2機種を使い込んで分かった“スペック表にない違い” (2026年04月29日)
  8. ドコモが「iPhone 17e」「iPhone 16」を値上げ 17e(256GB)と16(128GB)は残価も増額 (2026年09月30日)
  9. 20万円超のXperiaを「買い」に変えた3週間 ソニーが「モニタープログラム」を実施した理由 (2026年09月26日)
  10. 「ドコモミリ波イニシアチブ」始動、ミリ波の活用促進やユースケース創出を目指す (2026年09月29日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー