今からでも遅くない! オフィスの節電対策 −サーバ編−エネルギー管理

オフィスにある機器の中でも節電対策が面倒なのがサーバだ。サーバが動作しないと成り立たない業務も少なくないため、むやみに電源を切るわけにもいかない。本稿では、最近のサーバが搭載している基本的な節電対策機能を紹介する。

» 2012年08月10日 09時20分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 サーバは基本的に常時運転させているものだ。言い換えればサーバが動作している限り、一定以上の電力を常時消費していることになる。サーバの消費電力はサーバにかかる負荷によって変わる。サーバの規模にもよるが、負荷がかかっていないときに比べると、かかっているときに消費する電力がかなり大きくなることもある。

 数年前から、各社のサーバは節電対策のためにさまざまな機能を備えるようになった。そのうちの1つが、サーバが消費する電力の上限を決めてしまう機能だ。この機能は一般に「パワーキャッピング」とか「パワーリミティング」と呼ぶ。電力の上限を決めてしまうので、サーバに負荷がかかったとしても、決めた値以上は電力を消費しない。ただし、サーバは最高の性能を発揮できなくなる。パワーキャッピングは、最高の性能と引き換えに、消費電力低減という成果を得る機能といえる。

まずはサーバが消費する電力を把握する

 パワーキャッピングを利用するにしても、何の判断材料もないまま、適当に消費電力の上限を決めてしまっては業務を混乱させるだけだ。まずは、サーバが電力を消費するパターンをつかむところから始めるとよい。パワーキャッピングを利用できるサーバのほとんどは、サーバの消費電力を記録する機能も備えている(図1)。

図1 富士通のサーバに付属する管理ソフトで、サーバの消費電力データを表示させたところ。1カ月単位の表示になっているが、1日単位、半日単位など細かい単位で表示させることも可能

 サーバのメーカーによって形式は異なるが、図1のようなデータはサーバ付属の管理ソフトを利用すれば入手できることがほとんどだ。1日単位や1週間単位の消費電力の推移を調べれば、負荷がかかって大きな電力を消費している時間帯と、ほとんどサーバが働いていない時間帯のパターンが見えてくるはずだ。

業務内容を振り返る

 続いて、日々の業務内容を振り返ってみよう。特に、サーバを利用する業務がどのようなパターンで進んでいるかを思い出して、サーバに特に働いてもらいたい時間帯を特定しよう。

 例えば、日中のデータ入力時にサーバが電力を消費しているとしよう。入力作業時にサーバからの反応が早く返ってくることを優先するなら、この時間帯はサーバに特に働いてもらいたいということになる。大きな企業で、何人もの従業員があちこちからデータを入力してくるような場合は、サーバが早く反応を返すということが大切になる。

 ほかの考え方もある。日中のデータ入力は散発的にしか発生せず、入力を受け付けている一瞬だけサーバにかかる負荷が高くなっているような場合だ。このような場合は、日中にサーバの能力を多少落としても大きな問題にはならない。

 そして、忘れてはいけないのが夜間のデータ集計処理(バッチ処理)だ。バッチ処理が発生するサーバは一部だが、この処理が決まった時間までに完了しないと、次の日に業務を始めることができない。

 サーバの能力にあまり余裕がない場合は、夜間のバッチ処理のためにフル性能を発揮してもらうことになるだろう。サーバの能力に余裕があるなら、バッチ処理に多少長い時間がかかったとしても、次の日の業務開始に影響しないという場合も考えられる。

 このように考えていけば、サーバの消費電力を抑える時間帯が決まる。大体の場合、昼のピーク時に抑えてピークカットに貢献させるか、ほとんど働いていない夜間に抑えて、待機電力を削減するかのどちらかに決まる。

時間帯を決めてパワーキャッピングで消費電力を抑える

 サーバに高い能力を求めない時間帯が決まったら、パワーキャッピング機能を利用してその時間帯にサーバが消費する電力の上限を決めてしまおう。パワーキャッピング機能を利用するときは、サーバを指定して、そのサーバの消費電力の上限値を入力し、パワーキャッピング機能を有効にすれば良い(図2)。

図2 富士通のサーバに付属する管理ソフトで、パワーキャッピング機能の設定をする画面。消費電力の上限を入力し、「動的な電力制御を有効にする」というチェックボックスにチェックを入れればよい

 ただし、サーバによってはパワーキャッピング機能で消費電力の上限を決めたら、常時その設定で動作させることしかできないものもある。そのような場合は、サーバの種類を見て、高い性能を求めないサーバにパワーキャッピング機能の設定をすると良い。例えば、ファイルサーバには高い性能を求めないという割り切りができれば、常時低消費電力で動作させるサーバも決められるだろう。

 業務を振り返った結果、サーバがまったく働かなくてもよい時間帯があるようならば、サーバが備えるスケジュール運転機能を利用して、その時間帯だけサーバを完全に止めてしまうということもできる。例えば土曜日は休業日で、一部のサーバはまったく使うことがないという場合は、止めてしまったほうが良いだろう。

複数台のサーバの消費電力合計値で考える機能もある

 一般に、パワーキャッピング機能を利用するには、サーバ1台1台の設定を変更しなければならない。この面倒を嫌ってパワーキャッピング機能を利用しない人も多い。

 NECが7月末に発売したサーバは、「グループパワーキャッピング」という機能を備えている。この機能は複数のサーバで構成したグループの合計消費電力を抑える機能だ。重要でないサーバの消費電力を抑えて、重要なサーバに電力を消費させて性能を発揮させるということが可能になる。

 複数台のサーバでグループを構成し、グループに所属するそれぞれのサーバに優先順位を付け、グループ全体の消費電力の上限値を設定すると、グループパワーキャッピングを利用できる(図3)。こうすると、グループ全体の消費電力の合計値を守るように、優先順位が低いサーバから性能を落として、消費電力を抑える。重要な処理を担っているサーバの優先順位を高くしておけば、性能が下がることが少なくなる。サーバ1台1台に消費電力の上限を設定する必要もないので、設定の手間も減る。

図3 NECのサーバに付属する管理ソフトで、グループパワーキャッピングの設定をしているところ。サーバの優先順位を決めて、グループに割り当てる電力を決める

古いサーバは思い切って入れ替え

 本稿で紹介したパワーキャッピングの機能は、数年前から各社が取り入れるようになったものだ。古いサーバでは、利用できないということもあるかもしれない。ここで「そんな機能は使えないから、現状維持で良い」と考える人もいるかもしれないが、電力にかかるコストが上昇している昨今、企業で消費する電力は少しでも抑えたいものだ。

 ここで1つ、興味深いデータを紹介しよう。富士通が3年前のサーバと最新のサーバの消費電力と性能を比較したデータだ。価格帯を考えていくつかのパターンで比較したが、どのパターンでも最新のサーバは3年前に比べて消費電力が下がり、性能が上がっているという。消費電力が約3割下がり、性能が約3倍という結果になったものもあるという。

 サーバは5年で減価償却するものだが、性能が3倍になれば、仮想化の技術を活用して3台のサーバを1台に集約できる可能性もある。こうなれば、サーバの台数が減るので、消費電力削減効果はさらに高くなる。減価償却が完了していないサーバでも、処理性能や消費電力に大きな問題があるようならば思い切って入れ替えてみるのもよいだろう。

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