もはや電力会社を頼れる時代ではなくなってきた。電力の安定供給が危ぶまれる一方で、電気料金を値上げする動きが2012年に入って相次いだ。利用者側の対抗策のひとつは自家発電設備の導入である。7月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まったことも追い風になっている。
これまでも大手の製造業をはじめ、自家発電設備を導入して停電対策などに取り組む企業は少なからずあった。それが2012年に入ってからは、流通業を含む幅広い業種に広がり始めている。特に夏の節電シーズンが終わった10月以降の導入事例が目立つ。
工場のように大量の電力を必要とする場所ではガスコージェネレーションによる発電設備が増える一方、店舗や物流施設などに太陽光発電システムを設置する動きが急速に拡大している。7月から固定価格買取制度が開始されたことにより、発電した電力の一部を売ってコスト削減につなげる狙いもある。
2012年の「自家発電」:スマートジャパン関連記事
節電対策で自家発電を拡大、キリンビールが全国8工場でフル稼働へ(4月27日掲載)
キリンビールは関西地域の電力不足に備えて、滋賀工場に約7億円をかけて自家発電設備を導入し、7月から稼働させる予定だ。同工場が必要とする電力の約6割を自社でカバーする。
全国2000店舗に太陽光発電システムを設置、10月から売電開始(7月2日掲載)
7月から固定価格買い取り制度が始まった。この制度を利用して電力会社に売電しようという動きを見せる企業は少なくない。コンビニエンスストアチェーンを経営するローソンは全国2000店舗に太陽光発電システムを設置し、売電を始める。
使用済み食用油で電力を、外食企業が運用開始(10月11日掲載)
外食チェーン店などを経営するプレナスは、店舗から回収した使用済み食用油を改質し、バイオマス燃料の一種「バイオディーゼル燃料」として発電などに利用する。
太陽光・風力・燃料電池など、エネルギー技術を結集した新工場(10月16日掲載)
日清紡グループが繊維や化学製品を生産する徳島県の工場をスマートファクトリに改良した。太陽光と風力による発電システムを設置したほか、燃料電池や蓄電池も導入して、工場内に新しい電力供給とエネルギー管理の体制を構築した。敷地内で1.75MWのメガソーラーも建設する予定だ。
コンビニで太陽光発電、2014年には900店舗で合計10MWに(10月17日掲載)
ミニストップは全国の店舗に、太陽光発電システムを設置していくことを明らかにした。システムの一部は店舗内で使用する電力を作るために使い、店舗にかかる電力コストの削減も狙う。
燃料電池をドコモが基地局に導入、停電時でも40時間以上の電力供給(10月26日掲載)
NTTドコモは基地局の非常用電源として燃料電池を導入する。災害などによる長期の停電時でも40時間以上の電力供給が可能になる。2013年3月から関東・甲信越地域の一部の基地局に導入して、その後に他の地域にも展開していく。さらにバイオ燃料の利用も検討する。
来夏以降の電力不足に備えて、工場にコージェネを導入(10月31日掲載)
今夏は電力需要に対する供給量に常に不安がつきまとっていた。特に関西電力管内では大飯原子力発電所の2基が再稼働するまで、かなり厳しい節電目標を設定していた。三菱樹脂は来年以降に電力供給体制が不安定になっても工場を問題なく稼働させるためにコージェネレーションシステムを導入する。
狙いは売電収入とエネルギーの自前調達、メガソーラーにバイオ燃料精製所を併設(11月21日掲載)
滋賀県の総合物流企業である甲西陸運は、滋賀県湖南市の工業団地内にメガソーラーを建設することを明らかにした。さらにバイオ・ディーゼル燃料精製施設も建設する。生成した燃料は自社で利用のトラックやフォークリフトの燃料とする予定。
非常時は自動車工場を発電所に、宮城県で検討開始(12月18日掲載)
トヨタ自動車と、その関連会社であるトヨタ自動車東日本は、災害時に工場が立地する地域に協力するという協定を宮城県と大衡村(おおひらむら)と締結した。人命救助や一時避難場所の確保などのほかに、工場の自家発電システムで発電した電力を近隣地域に提供することも検討する。
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